サイゾーpremium  > 特集2  > ニュートンの論文は論文じゃない? 深すぎる【論文】の歴史

――理化学研究所所属(今のところ)の細胞生物学者・小保方晴子氏の「論文捏造騒動」が日本中を騒がせている。しかしそこでちょっと考えてみたい。そもそも、その「論文」ってなんですか? 論文の書き方に決まりはある? 学問史の中で論文はどのように発展してきた? 研究者にとって論文が“評価”されるとはどういうこと? というわけで、小保方センセイの不思議ちゃんぶりや巨乳問題はおいといて、「論文とは何か?」という素朴な疑問を考える!

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『小保方晴子さん守護霊インタビュー それでも「STAP細胞」は存在する』(幸福の科学出版)

 埼玉県和光市に本部を置く独立行政法人・理化学研究所(以下、理研)。かの渋沢栄一を設立者総代として1917年に創設された、世界的にも知られたこの由緒正しい研究所を襲ったスキャンダル“小保方騒動”がいま、世間を騒がせている。騒動の中心に鎮座するは、同研究所の”神戸支部”である発生・再生科学総合研究センター・細胞リプログラミング研究ユニットのユニットリーダーであった弱冠30歳の女性研究者・小保方晴子氏。世界的な総合学術雑誌「Nature」2014年1月30日号において彼女が発表した「STAP細胞」に関する2本の論文に“捏造”があったとされているのだ。

 その後現在にいたるまでの顛末──論文発表後、この論文に基づく追試試験に失敗の報告が相次ぎ、掲載写真に対する疑義も噴出、3月14日には誤った画像を使用したことを小保方氏自らが認めるも、4月9日には独自に記者会見を敢行、理研側との対決姿勢を鮮明にしている──といった状況については、いまさら詳説するまでもあるまい。この間、テレビ・雑誌などの一般メディアでは、論文そのものの真偽を分析するよりも、小保方氏の“不思議ちゃん”ぶりを追跡するものから、前述の発生・再生科学総合研究センター副センター長である笹井芳樹氏との”不適切な関係”を匂わせるものまで、百花繚乱の様相を呈しているのだ。

 しかしここでは、あえてそこには立ち入らない。代わりに問いたいのはこの疑問である。すなわち、「そもそも“論文”とはなんなのか?」。「小保方氏の論文に捏造があった」というとき、そこで問題とされているその「論文」とは、特に理系学問においていかなる存在であるのか? どのような歴史を経ていまにいたり、どのようにして科学者とされる人々の間で流通し、その価値を担保されているのか? 本特集では、そのような根本的な疑問に立ち返って、“小保方騒動”を考えてみたい。

引用率がすべてを決める研究者たちの厳しい世界

 まず、研究者が発表する論文といえば通常「学術論文(アカデミック・エッセイ)」を指す。プロの研究者への入り口となる博士論文はまだしも、大学学部の卒業論文、修士課程修了の際の修士論文などは、いわば研究者未満の者による”習作”であり、プロの論文とは見なされないようだ。

「私の修士論文も、習字でいえばお手本をもとに書いた、といった程度のもの。もちろんきちんと実験して英語で書きましたが、典型的な言い回しをコピペして、それを自分の研究内容に沿って直していって、なんとか仕上げた感じです。博士論文で冒頭部をまるごとコピペしてた小保方さんとは全然違いますけどね(笑)」(国立大の物理系修士課程修了者)

 ここで「典型的な言い回し」といわれているように、論文には厳格な形式がある。表紙部分にタイトル、著者名と所属機関名などが列挙され、続いて要旨(日本人研究者でもAbstractと横文字で呼ぶことが多い)、そのあとにやっと本文へ入っていくという流れだ。ここで研究者にとって重要なのが、「著者名」。小保方騒動でも「共同研究者」という言葉が報道されたが、これは単に「一緒に研究した」ということを指すのではなく、その論文の著者欄に執筆者のひとりとして名前が掲載されたことを意味する。そしてここで重要なのが、名前がどこに載るかである。

「小保方さんと同じ生物・医学系分野の場合、メインでその研究に携わった者は最初に名前が載り、“ファーストオーサー”と呼ばれます。対して欄の最後に載るのが“ラストオーサー”で、その研究者が所属する研究室のボスの名前が載ることが多い。また、その論文の掲載誌との窓口になってやりとりのまとめをする者を“コレスポンディングオーサー”と呼びますが、ラストオーサーとコレスポンディングオーサーは兼任であることも多いです。研究者にとってはこの“三役”のどれかに入っていることが重要で、それ以外の部分に名前が載ってもあまり意味がない」(国立大所属の医学系研究者)

 小保方氏の疑惑の論文「Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency」でいえば、ファーストオーサーは当然小保方晴子氏、そしてラストオーサーは、騒動後の今年4月に「晴子、ボストンに戻っておいで」と語ったとされるハーバード大のチャールズ・バカンティ教授となっている。では、なぜこうしたことが重要視されるのか? それは、論文がどのように科学界を流通しているのかを知ると見えてくる。

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