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サイゾー×プラネッツ『月刊カルチャー時評』VOL.10

『DOCUMENTARY of AKB48』──AKBはもはや”社会”と同義だ

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批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

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『NO FLOWER WITHOUT RAIN』より。今やAKB48グループ総監督となった高橋みなみの涙。

[批評家]宇野常寛×[情報環境研究者]濱野智史

 峯岸みなみの丸刈り騒動の余韻覚めやらぬ2月1日、AKB48の3作目となるドキュメンタリー映画が公開。作中で板野友美の卒業が発表されるサプライズも含まれていた同作は、巨大コンテンツに成長したAKBとそのメンバーの苦悩を描き出す、前2作を上回る濃密な出来だった──。

宇野 『DOCUMENTARY of AKB48』はこれで3作目になるんだけど、1作目の『to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』(10年)は、内容的にはAKB48の紹介的な色合いが強かったんだよね。演出的には、岩井俊二の弟子である寒竹ゆり監督が撮っているだけに、まさに岩井俊二的なフェイクドキュメンタリーっぽいテイストを残していた。

 それが2作目の『Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』(11年)で、AKBのPVをよく撮っている高橋栄樹監督【今号特集内でインタビュー掲載『AKB映画の監督・高橋栄樹インタビュー メンバーに語らせたスキャンダルの真相』】になってガラっと変わった。ドキュメンタリーとしてはそこまで手法を凝らした映画ではないんだけど、とにかく映ってるものがすごい。メンバーたちによる被災地訪問と、運営が全然仕切れていなくてメンバーが次々と熱中症で倒れていく11年の西武ドームライブ【1】とか、恋愛スキャンダルによるチーム4の混乱とかを並べて、はっきり言ってしまえば、原発とAKBを、どちらも「もはや誰にも止められないヤバいものなのだ」として重ね合わせるというシンプルなコンセプトだけで突っ走っていた。あれは歴史に残る傑作だったと思う。

 その2作目を超えるのは難しいのではないか、と思っていたんだけど、今回の3作目『NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?』にはびっくりさせられました。おそらく世間でのインパクトは2作目のほうが強いと思うんだけど、映画としての完成度はたぶん本作のほうが高い。本作でまず驚かされるのは、前作とうって変わってAKBの内部のことしか扱っていない点です。でも全然閉じていない。AKBの中のことを映しているだけで、社会そのものを描けてしまうという構成になっているんです。2作目では震災や、AKBでいうならレコード大賞などのみんなが知っている年中行事も律儀に追うことで、世間と接続するためのハブをいろいろ探しているようなところがあった。でも今回は完全に、前田敦子をはじめとする卒業メンバーと残されたメンバー、すなわち卒業と継承のドラマだけに焦点を絞って、すごくシンプルな構成になっている。それだけで十分にAKBというもの自体の魅力について語ることができるし、AKBという特殊な世界のことでありながらも同時に我々一人ひとりの直面しているこの現実の物語のように見える、という回路が成立してしまう。今や「AKB=社会」になってしまったことを象徴する映画になってるんだよね。そのことに確信があったから、すごくブレがない、濃密で無駄な要素の一切ない映画になっていて、演出家としての高橋栄樹の力を感じる一本だった。

濱野 まさにそうなんですよね。重ねていうと、ちょっと変な話ですが、これはドキュメンタリーというよりはライフログに近いと思った。AKBメンバーの一部始終が収められたライフログであり、僕らAKBヲタの「ヲタ活(動)」のライフログにもなっている。というのも、今回の映画に出てくる現場に、僕ほとんど行ってるんですよ。米沢瑠美と平嶋夏海の謝罪があった全国握手会【2】、さいたまスーパーアリーナ3日間、東京ドーム公演3日間、増田有華の個別握手会での謝罪【3】と、全部現場にいたわけです。ドキュメンタリーと言うと、たいていそれは本物の現実そのものに本当に迫れるのかどうかが問われるわけだけど、これは単に「ありました」、いや、「自分もそこにいました」のライフログ映画なんですよね。もちろんこの映画では、自分の知らなかった現実――たとえば舞台裏でのメンバーたちの涙や目線――をドキュメンタリーという形で見せられるんだけど、やはりメンバーはこう悔しがっていたり悲しがっていたりしたのか……というものばかりで。没入感が半端ないわけです。まぁ「それはお前が現場に行きすぎなだけだ」と言われたらそうなんですが(笑)。でもある程度のAKBファンなら、この映画に出てくる半分ないし3分の1程度の現場は行ってると思うんですよ。だから奇妙なドキュメンタリー映画だな、と思いました。例えばオウム真理教の内側を描いた映画『A』『A2』のように、普通は入れない世界の中をカメラが教えてくれるというのがドキュメンタリー映画じゃないですか。でも、これはそうじゃない。

 それから、これがはたしてドキュメンタリーなのか? という点で言えば、板野友美の卒業が映画の中で発表されたことは重大ですよね。試写の間はその部分の映像は入っていなくて、そこから公開までに板野のインタビューを入れている。僕は公開日初日の初回で観ましたが、最初サラッと「え?ともちん、卒業するって言ったな」と、一瞬呆けてしまった。

宇野 あれは本当に裏をかかれた。AKBってリアルタイムで次々とサプライズが出てくるのが魅力だったのに、あえてそれを乱してくるという。

濱野 リアルタイムで、生でサプライズ発表するからすごいのに、まさか複製芸術である映画でそういうことをやってくるとは。まず観客である我々は、普段映画って黙って観るものだから、声をあげられないわけですよ。黙って板野の卒業を受け入れてしまうというサプライズになっているわけです。

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