「AIに任せるほど若手が育たない」――データ活用の第一人者と考える AI時代の「人を育てる」仕組み

[今回のゲスト]
高橋隆史
データサイエンティスト協会・代表理事

パーソナリティ心理学を活かして組織と人材の成長を支援するコンサル企業「HRD株式会社」代表取締役・韮原祐介氏が、“人を育てる立場”にある、各界のリーダーやトップをゲストに迎え、人材育成と自己成長をテーマに語り合う当連載。データ活用の黎明期から業界を牽引してきた高橋隆史氏を迎え、データサイエンティストという仕事の変化から、生成AIが人材の成長や企業の育成に及ぼす影響まで語り合う――。

(写真/増永彩子)

韮原祐介(以下、韮原) 今回のゲストは、一般社団法人データサイエンティスト協会の代表理事である高橋隆史さんです。高橋さんは2004年にブレインパッドを共同創業し、まだ「データサイエンティスト」という職業が存在しなかった時代から、日本にデータ分析の市場を切り拓いてきました。ブレインパッドは私の古巣で、高橋さんは元ボスとして何年もお世話になりましたが、この対談では改めて、データサイエンティストという仕事がどのように生まれてきたのか、その背景からお話しいただけますか?

高橋隆史(以下、高橋) 2010年頃に「ビッグデータ」がバズワード化しました。市場調査などアンケートとかで全体を推定するしかなかった時代から、扱いきれないくらい膨大な全体そのもののデータが手に入る時代への移行です。そこで、その巨大なデータを解析して価値創造する新たな職種として、データサイエンティストが登場しました。

韮原 データを分析するだけでなく、そこからビジネス上の意思決定やアクションにつなげていくところまで担う仕事ですよね。その意味ではコンサルティングとも重なるわけですが、データサイエンティストならではの仕事を改めて整理すると、どうなりますか?

高橋 世の中のデジタル化とネット化、さらにはスマホの普及の結果、消費者の行動や取引に関するデータが大量に発生しています。それらを分析して、「何が起きているのか」を明らかにして次の行動につなげる仕事です。たとえば通販サイトであれば、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴、前回の購入からの期間など、さまざまな行動がわかります。このデータとして残ったファクトを基に次に取るべき行動を明らかにして、価値創造につなげるのがデータサイエンティストの役割です。

韮原 「PV数が増えました」「購入者が増えました」ということがわかっても、それだけでは意味がない。そこから何が導き出せるかということですよね。

高橋 はい。たとえばユーザーの行動を見たらA~Eの5パターンあって、「収益に貢献していないのは、AとBのパターンのユーザー」と特定できる。そうすると、「この人たちにもっと使ってもらうにはどうすればいいのか」や「残りのC~Eのパターンの人にもっと使ってもらうにはどうするのか(何がAやBと違うのか)」など、次のアクションにつながる示唆を出します。

韮原 ほんの10年ほど前までは多くの企業が「ビッグデータ」という言葉を使っていましたが、今となってはひと昔前の言葉という感じがしますよね。

高橋 そうですね。「ビッグデータ」や「データサイエンティスト」の重要性を説明しても、「AIでできるでしょ」と言われてしまう時代になりました。実際には、AIを使ってより多くのデータを分析できるようになって、活躍の場は広がっていますが、それだけ当たり前のことになってきたということだと思います。

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