中道改革連合の大敗で支持母体である創価学会の集票力にミソがついた。本当に「F票」に効果はあったのか?また、教団をめぐっては、「芸術部が裏で芸能界を操っている」や「学会系の企業が存在する」といった陰謀論がいまだに取り沙汰されている。なぜ創価学会は、すべての黒幕にされるのか?
2月に行われた衆議院選挙において、立憲民主党と公明党が合流した中道改革連合(以下、中道)は議席を伸ばせず、野田佳彦、斉藤鉄夫の両共同代表が引責辞任する結果となった。この政変は、日本の選挙戦における長年の「定説」を根底から覆すものだった。
「創価学会の組織的な選挙支援」、いわゆる「F票(フレンド票)」や女性部(旧・婦人部)の動員力は、勝敗を左右する決定打として語られてきた。
しかし、自公連立が事実上の解消を迎え、自民党候補が学会の支援なしに戦った結果、一部では「自民党に創価学会の力なんて最初から必要なかった」という厳しい声さえ上がっている。「自民党議員は学会員の支持を得られないから苦戦する」という「幻想」は、音を立てて崩れ始めた。
「そもそも創価学会自体が選挙に力を入れられなくなってきているのが現状です。信者の高齢化も影響し、2世や3世へと世代交代が進んだことで『熱心に選挙をやりたくない』という傾向が出てきています。その影響は数字にも表れ、公明党候補の得票数は年々右肩下がりで減少しています」
そう語るのは、『完全版 創価学会』(新潮社)などの著作がある宗教学者の島田裕巳氏。
「ただ、公明党のポスターを貼っていた家は、突然中道のポスターに貼り替えていました。つまり学会員たちは組織の指示には忠実だったと思うんです。しかし、選挙の結果を見ると、そこに込められた熱意は低かったように感じますね」(同)
自公連立のときは、選挙のたびに学会員と自民党支持者は互いに連携して行動してきた。しかし、今回提示された「中道」という枠組みには、歴史的・構造的に無理があったのかもしれない。
「『中道』というのは、保守や革新、右派や左派の『真ん中』を目指す、仏教由来の創価学会用語です。一方、『連合』というのは労働組合の連合から来ています。立憲民主党は労働者の味方ということですが、戦後に発展した創価学会に入信した人たちは、当時、大企業に勤められない未組織労働者で、既存の労働組合にも加入できないという境遇の人が多かったわけです」(同)
その影響もあり、立憲民主党の支持母体である組合と創価学会は、そもそもあまり関係がよくないという。
「そのため、中道を作ったときに『そのことを考えたのかな』と疑問が残ります」(同)
インターネット上で作られた日本の黒幕というイメージ
政治の世界では創価学会の影響力は近年落ちているというが、インターネット文化にどっぷりと浸かってきた30~50代にとって、創価学会は政党の支持母体だけという存在ではない。社会や芸能界まで裏で支配している「黒幕」というイメージを持つ人も多い。
SNSで話題の陰謀論者たちのアカウントを見ていると、「創価学会は日本を支配しようとしている」とか、「中国と手を組んで、ともに国家転覆を狙っている」という、はたから見ると荒唐無稽な持論を展開している。
「2000年代のインターネットの中で創価学会はかなり強力な『ネタ』として扱われていました」
そう語るのは、『危険だからこそ知っておくべきカルトマーケティング』(ぱる出版)などの著作がある怪事解明ライターの雨宮純氏。
◉駅伝、在日説、無限城、集団ストーカー
取り沙汰される創価学会陰謀論なにかと黒幕にされがちな創価学会。実際にはどんな噂や陰謀論があるのか? マシなものからトンデモ説まで、一挙紹介。
正月にお茶の間がザワつくけど
①創価大学駅伝部の選手は全員学会員!?
創価大学駅伝部は箱根駅伝で上位進出を果たす強豪校だが、全員が信者というわけではない。かつて信者が多かったことでも名をはせた同校野球部のイメージが強いが、今の時代は創価高校ではなく、全国の強豪高校からスカウトするのが当たり前だ。そのため関西創価高校出身の選手はひとりしかおらず、選手たちのバックボーンに触れられることも少ないため、「聖教新聞」にも「信仰の力で好成績を収めた」という記事が掲載できなくなっている。荒唐無稽な説が今になって復活
②池田大作は日本人ではなかった!?
2001年頃、「國民新聞」という保守系メディアのホームページに、富士谷紹憲という風水師が「池田大作は在日朝鮮人であり、本名は成太作(ソン・テチャク)で帰化2世である」という記事を配信した。いわゆる在日コリアンへのヘイトも含まれた悪意のある陰謀論で、当時は誰も相手にしなかったが、2010年代になるとジャーナリストで陰謀論者のリチャード・コシミズがたびたびこの説を取り上げるようになり、SNSを中心に拡散されている。どうしてQアノンと戦う必要があるの?
③東京の地下には創価学会の施設がある!?
なんと、東京駅の地下には『鬼滅の刃』(集英社)に登場する無限城のような、オリハルコン(架空の鉱石)で覆われた創価学会の施設が存在するという。そこに子どもたちが誘拐されているため、ドナルド・トランプが率いるホワイトハット(光の戦士)が、創価学会率いるブラックハット(ディープステート)と最終決戦の準備を進めているという陰謀論が壮大なスケールで語られ、SNSの一部で注目された。しかし、そこに真実はない。熱心すぎる学会員の折伏とは別
④集団ストーカーの犯人は創価学会!?
ジャーナリストの山崎リュウキチ氏も取り上げているが、電磁波やつきまといなど、特定個人に対して複数人が組織的に日常生活を妨害する嫌がらせを指す「集団ストーカー」。街中でもよくポスターを見かけるが、この犯人は学会員だという説がある。敵を作るのであればディープステートや爬虫類型人類など、何でも仕立て上げられるが、学会員は「怪電波を発信する技術」を持っているとして、黒幕として語られることが多いそうだ。