幽霊、バズる全能感と滅びゆく批評。

――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった? 生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

モデル小説の作法を知らないからこうなる、という世評もあったが、純文学は実験小説なので、定型化された作法なんてないのだ。

今回の特集は「本」だが、もはやメインの記事としては需要のない文壇ネタをいくつか。

現役の医師で、ワクチン接種絡みで医療情報のインフルエンサーになっている医療ミステリ作家の知念実希人が、著作の権利引き揚げをちらつかせながら、週刊誌の反ワクチン系特集に片っ端からクレームを入れる「正義の」恫喝行為を行っていた。しかし、『女性セブン』(小学館)だけは一歩も引かず、7月に同社から権利を引き揚げたのだが、間髪入れず、今度は芥川賞作家である李琴峰への国籍差別発言で謝罪する羽目になった。李琴峰は『SFマガジン』(早川書房)の百合SF特集にフェミニストとして院外団的に介入したことから、反フェミ右派男性たちから蛇蝎のごとく嫌われていたのだが、知念の犬笛ヘイト攻撃で李は完全にロックオンされたようで、謝罪後も攻撃は続いている。

かつての知念は温厚な人物だったようだが、売れて可視化された頃には選民思想を隠さなくなっており、部数は少ないが良心的な作家を、利益を出す作家にぶら下がっている寄生虫と見下し、陰謀論大好きミステリ界のゴッド・島田荘司にウイグルの臓器移植手術をレクするなど、危険な徴候が表れていた。そこにナントカに刃物かSNSか、コロナ禍で反ワクチン主義者批判がバズり、自民党&安倍晋三批判者への揶揄がバズり、その勢いで純文学畑で自己主張の強い李琴峰にマウンティングを仕掛け……早い話、右派保守のホモソーシャルノリ全開で左派リベラルの女性作家にヘイトスピーチをかましたのだが、呉座勇一の炎上事件と同じく、中高一貫男子校出身のエリートらしい事件といえる。

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