読売の誤報で炎上!?――文化庁・先進美術館騒動の真相と顛末

リーディング・ミュージアム構想

アート市場を活性化するために、リーディング・ミュージアム(先進美術館)を指定し、価値付けした作品をオークションなどで売却する――。今年の初夏、そのような政府案があると読売新聞が報じ、美術界を中心に大きな波紋が広がった。しかし実のところ、文化庁が作成した資料の内容が報道によって歪曲されたため、炎上してしまった!?

政府の未来投資会議で文化庁が提出した資料「アート市場の活性化に向けて」より。この図が誤解を招いた?

 今年5月19日付「読売新聞」で、「政府は、国内の美術館や博物館の一部をアート市場活性化に先進的な役割を果たす『リーディング・ミュージアム』として指定する制度を創設する検討に入った」と報道され、“大炎上”した。同記事には「リーディング・ミュージアムに指定された美術館や博物館には国から補助金を交付し、学芸員を増やすなどして体制を強化する。これにより、所蔵する美術品などを価値付けし、残すべき作品を判断しながら、投資を呼び込むために市場に売却する作品を増やす。コレクターの購買意欲を高め、アート市場の活性化を促す狙いがある」と書かれていたが、この構想に対して、次のようなアーティストをはじめ美術界から多くの批判が噴出したのだ。

「NYのギャラリーからアートフェアへの懐疑が出ていて、H&Wとかガゴシアン【1】が巨大化、美術館化している中で、日本は美術館のコマーシャル・ギャラリー化を促すってわけか。どうすればそういう結論になるんだろう。市場がないならば無理しないでむしろ地道な研究や活動に予算さいてほしいよ」(田中功起ツイッター/5月20日)

「市場を活性化させる前に、実際に展覧会を作る場や学芸員及び作家、評論の場を活性化させないと。文化より経済優先は発展途上国のする政策」(奈良美智ツイッター/5月20日)

 読売の報道の少し前、4月下旬には東京大学の食堂に飾られていた故・宇佐美圭司の絵画が、施設改修に伴い、東大生協によって廃棄されたことが発覚したばかりだった。そうした出来事もあり、美術作品を収蔵、後世へ伝える役割を担うべき美術館が収蔵作品の売却を積極的に行うことで、“商業的価値”から漏れた作品が失われるのではないかという危機感が強まったわけである。

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