西成から歌舞伎町、ホームレスまで――ヤバい現場に入り込んで調査! 社会学でわかる日本の裏の顔

――社会学とは、誰もが知っている日常を研究対象として、そこに生きる人の目線で、我々が見ているのとは違う事実が隠れていることを探る学問。それでは、そんな社会学者が裏の社会を自らの足を使って研究したら、何が見えてくるのだろうか?

『社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた』(東洋経済新報社)

 アメリカの社会学者、スディール・ヴェンカテッシュの『社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた』(東洋経済新報社、2017年)をご存じだろうか? 高級売春婦、ドラッグディーラー、不法移民など、世界一の大都市・ニューヨークの暗部で生きる人々を、社会学者である筆者自らがフィールドワークして描いた本書は、昨年5月に翻訳版が発売されると瞬く間に話題となった。

 この本を通じて描かれているのは、一見縁遠く思えるアンダーグラウンドな世界が、実は表の経済にも密接に絡み合っているということだ。

「この本に限らず、彼の研究はきわどい対象を扱っているからおもしろいのではなく、分析がきちんとしているからなんです。例えば彼は刑務所に入っているギャングからドラッグに関する帳簿をもらってきて、その内容と自分が日頃から目にしているギャング同士の抗争や、そこで何人死んだかという情報を照らし合わせることで、それぞれが自分の命をどれくらいだと見積もっていることになるのかをはじき出したんです。その論文の中では命の値段は非常に安く、通常であればギャング集団に属し続けるとは思えないのですが、だからといってヴェンカテッシュはギャングが非合理的で向こう見ずな集団だと結論づけず、彼らの中にあるトーナメントシステムのような価値観の存在を指摘しています。『一戦一戦の期待利潤は少ないが、生き残ると一攫千金になる』という考え方で、だからこそギャングのリーダーは高級車に乗ったり、高価な服を着ることで部下にも期待させる。社会学、特に都市のフィールドワークでは経済学的な要素を飛ばし、人々のやりがいや社会的関係などに注目しがちなのですが、歌舞伎町ではお金の話が重要だと感じたため、彼の経済学的な分析と社会学的な分析の組み合わせは参考になりましたね」

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