5秒に1回客を笑わせ、ぴったり80分でライブ終了――【綾小路きみまろ】の誠実すぎるプロの漫談

――元放送作家で、現在は脚本家として心機一転活動する林賢一が、生のトーク現場に裸一貫突入! 事務所の大看板・古舘伊知郎を始めとした先達たちが繰り広げるトークライブをレポートする。

『綾小路きみまろ 笑撃ライブ2017』

人物:綾小路きみまろ 日時場所:2017年4月25日 @草加市文化会館

日本全国各地を爆笑の渦に巻き込み続ける、綾小路きみまろの笑撃ライブに突撃! 現在進行形の毒舌漫談とは!? 66歳のきみまろをウォッチングしてみた。


 綾小路きみまろが観客を1分間で何回笑わせているか、数えてみた。結果、1分間に12回の笑いが生まれていた。1分間に12回人を笑わせることができるのはプロだけだ。1分に12回とは、つまり5秒に1回笑わせている計算になる。例えばM-1グランプリのような、規定時間内にどれだけ笑いを取れるかというコンテストであれば、そこに猛烈な手数を打つのは当然だ。だが、自身のライブでそれをやるとなると、簡単ではない。綾小路きみまろは1000人を越える地方の文化会館でそんなトークを定期的に行っている66歳。冷静に考えると、超人かもしれない、とライブを体感して思った。

 埼玉県草加市文化会館で行われた「綾小路きみまろ笑撃ライブ2017」は中高年の観客で溢れ、異様なハイテンションで包まれていた。中年女性2人連れ、後期高齢者夫婦、老人母&中年息子など、さながら中高年の見本市のようであった。

 上演前には、そんな観客たちがケミカルライト(光る棒)を振りながら、きみまろの出番を待っている。一瞬、「ここはジャニーズのライブか?」と勘違いしてしまうほど、みなさまお元気のようだ。

 きみまろが登場すると、会場が揺れる。これがロックバンドのライブならわかる。だが、観客はほとんどが60歳オーバー。しかも、平日の14時である。普通の勤め人は来ることなんてできない。草加市が揺れた。この事実に興奮してしまった。そして、きみまろが歌う、踊る、跳ねる。観客のグルーヴが上がりきったところで、いきなり客いじりが始まる。

「前のほうの席はあんまり元気ないけど、ここはデイサービス?(笑いドッカーン)あれ、奥さん。あの人に似てない? 籠池元理事長(ドッカーン)。あー、ところどころ席が空いてますね。日にちを間違えてるんですね、ボケちゃって(ドッカーン)。奥さんのファッションすごいね、エルメスのようなしまむら(ドッカーカーン)。いや、シルクのようなポリエステル(ドッカーン)」

 オープニングからこの調子で延々、客いじりが続く。5秒に1度笑いを取っていた証拠がコレである。とにかくテンポが速いのだ。しかも、きみまろは笑いの後に間を取る、いわゆる「笑い待ち」をしない。間髪入れず、すぐさま次のギャグをかましてくるのだ。この連続攻撃はハードドラッグのように中高年を酩酊させてゆく。

 いつまで客いじりが続くんだ? と心配になっていると、続いて始まったのが「綾小路きみまろのライブに行こうとする夫婦の1人コント」だ。2人暮らしの老夫婦のやりとりをきみまろが1人で演じていく。

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