ファッション研究者が語る「ユニクロ問題」ブランド買収から豊かな文化は生まれない

蘆田裕史(あしだ・ひろし)
1978年生まれ。ファッション研究者、京都精華大学ポピュラーカルチャー学部教員。ファッション批評誌「fashionista」編集委員。共著に『A REAL UN REAL AGE』(パルコ出版)、『ファッションは語りはじめた』(フィルムアート社)など。


[ファッション研究者]蘆田裕史
■多様性を失わせるやり方は服飾文化の豊かさに寄与しない

 そもそも、ユニクロをファストファッションと呼ぶかどうかは、人によって分かれるところだと思います。H&Mやフォーエヴァー21のように1~2週間で店頭の商品が入れ替わるほどサイクルが早いわけではないので、そういった意味ではファストファッションとは呼べないという考え方もある。低価格のブランドという括りで考えればH&Mなどとも比較できますが、ユニクロはほかのそうしたブランドと比べると、ファッション性がないのが特徴といえるでしょう。若い世代からおじさんおばさんまで、いろんな人が着られる服を売っている。これまで、安い服はそれだけ“安かろう悪かろう”と思われていたものを、粗悪でない丈夫な服を出して安い商品に対する先入観を変えたのは大きな功績だと思います。高級ブランドの商品は品質や制作にかかる手間や時間のために高価なものになっている部分もありますが、記号的な価値が大きいことも否めない。 単に“質の良い服”を作るだけであればそこまで高くはなくてもできるんだ、ということを示してくれているとは思う。

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