【市村幸卯子】ドイツで発刊された、原発事故後の日本の『不謹慎』な生活を綴ったマンガ絵日記

──原発事故後の東京の”日常”を絵日記で綴った書籍が、ドイツで刊行された。同書に込められた日本人クリエーターの思いとは?

(写真/江森康之)

 東日本大震災発生からわずか3日後。南ドイツ新聞・電子版にて、東京在住のCMディレクター市村幸卯子によるマンガ絵日記『YUKOのトーキョー日和』の連載が始まった。内容は、未曾有の災害・事故に揺れる東京での生活や、パートナーと過ごす日常の光景を私的な視点で切り取ったドキュメンタリーレポートだ。特に、福島原発事故後の不安定な感情を、可愛らしいタッチのイラストと共に素直かつユーモラスに綴ったことがドイツ国内で話題を呼び、今春、Carlsen Verlag社より書籍として刊行されることになった。

 そもそもなぜドイツなのか。過去に原発事故を経験し、廃核宣言を行った国で刊行することに、反原発の意図はあるのだろうか。

「私は11年間、イギリスに住んでいたことがあって。3・11直後は在英時代の知人がたくさんメールをくれたんです。海外では、甚大な被害を受けた被災地の様子が繰り返し報道され、東京も被災地と同様の被害を受けたととらえる人もいた。それで、あらためて自分の周りを見てみると、余震に怯えながらも普通に仕事をしていたり、停電時にヤシマ作戦【編註:TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する作戦名からとった節電運動】を敢行したり……。海外の人たちには信じられないような、“不思議ちゃん”的な日本人の前向きさに感じ入るところがあって、みんなには『大丈夫、不思議ちゃんジャパンは、この重大事すら乗り越えるから』と返信したんです。その中に、ドイツ人ジャーナリストのティム・リットマンがいました」

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