【 "キッチュ"のボーダーライン】──"俗悪"という美的価値で楽しむカルチャー

──通俗物、まがいもの、悪趣味……などと訳されるキッチュという言葉の定義は難しいが、これらを通してその領域を探ってみよう。

キッチュを輸入した美術評論家

"キッチュ"のボーダーライン【1】──石子順造

石子が評価したつげ義春も、キッチュとは無縁ではないマンガ家だろう。
展示では、このような『ねじ式』の原画(1968 年、作家蔵)が一話分まるまる公開されている。

■大衆文化を読み解くための、キッチュという価値観
「石子順造(1928~77年)という美術評論家を、今なぜ取り上げるのか?」という問い以前に、「ていうか、誰?」という人もすでにいるだろう。60年代に革新的な作品を連続して発表しつつ評価が定まらなかったマンガ家・つげ義春を言論でバックアップする批評同人誌「漫画主義」を仲間と創刊し、"面白い・楽しい"で終わりだった「マンガ」をひとつの知的文化として扱ったマンガ評論家の元祖的存在。例えばそれが石子である。戦後のマンガ史を初めて通史として書いたのも石子だし、ほかにも都市、演劇、CM、サブカルチャーなど美術と一見無関係なジャンルを次々と取り上げたのも石子で、彼の中ではそれらに「キッチュ」という文脈を与えることで美術評論家として読み解きが可能になったようだ。

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