[ドキュメンタリー編2]9・11、パレスチナ、海南島──映画監督・足立正生が選ぶ記録された歴史作品

──映画監督であると同時に、自らもパレスチナへ渡り、日本赤軍と行動を共にした経験を持つ足立正生をして、「座って観ていられない」ドキュメンタリー作品があるという。扱う問題は全く違えど、そこに共通して流れるのは、本質を見極めようとする。"リテラシー"の目だ。

足立正生氏の著書『映画/革命』

 ドキュメンタリーというのは、基本的にタブーを破っていてこそ作品になり得る。タブーとされるような証言を記録するということは、歴史をリテラシーする上で非常に重要なのです。真に歴史的な記録は、根源的には現場にいた個人の記憶とその証言をもとに作られるはずであって、その記憶を記録と突きあわせることが、ドキュメンタリーらを記録させるということ。そういった作業や運動が、それを観る者に問いかけるんです。
 
 2005年にアメリカで製作された『9/11 Press for Truth』【1】は、タイトルの通り9・11の報道にスポットを当てた作品で、アメリカ政府発表の情報と、ジャーナリストたちが調べた情報の食い違いを扱っています。「どっちが本当か?」という疑問に端を発し、遺族の女性たちが調べていくうちに、政府が何かを隠していることに気づく。つまり、現場にいた証言者の記憶と、国家による記録のズレがある。そこに隠された真実を突き止めようとするのですが、それが次第に国内で運動になっていくんですね。・‥‥関連の作品はほかにもありますが、被害者の家族たちの頑張り、努力や苦悩などがとても伝わってくる。僕なんかは、座って観ていられなくなるくらいです。

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