嵐のジャケとピンク・フロイドの類似点──ジャニーズ・カバー・アート進化論

──ジャニーズの音楽ソフトにも付帯してきた「ジャケット」。それらは単に売るためのイメージでしかなかったのか? 田原俊彦、SMAP、嵐と各時代におけるジャケット・デザインの真価を、美術評論家の楠見清氏が問う。

 黎明期のジャニーズはロカビリーやGSといった戦後の若者の音楽文化をテレビを介してお茶の間に持ち込んみました。ただ、そのことが逆に後発のフォーク歌手に比べると歌謡曲の枠を出ないものにしてしまった。フォーリーブスや初期の郷ひろみのレコード・ジャケットは洋楽とはまったく別のドメスティック指向で作られていたように見えます。しかし、80年代のたのきんトリオの頃から何かが変わり、とりわけ田原俊彦のジャケットは前世代のジャニーズとは異なっていた。その中でも『It’s BAD』【1】(キャニオン/85年)は、マイケル・ジャクソンの『スリラー』【2】(Epic/82年) をどこか思わせる。今見ると宣材写真そのままのような印象ですが、背景にロール紙を垂らしてライティングというのは当時はやった広告写真のメソッドで洋楽もこうだった。レコード店に洋楽と邦楽が肩を並べて置かれたのもこの時代ですし、MTV世代のアイドルは洋楽を当たり前に指向するようになる。当時のトシちゃんの顔付きがマイケルと比べて遜色ないのは、きっとマイケルの歌とダンスをビデオで研究しながら自分が何者でどこへ行くのかを理解していたからだと思います。

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2024.4.29 UP DATE

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