食い違う「検察と堀江氏の主張」 ライブドア事件とは、なんだったのか?

 ライブドア事件とは、ライブドア(以下、LD)と、その子会社であったライブドアマーケティング(以下、LDM)に、証券取引法に触れる事業行為があったとされる事件のことだ。問われている罪は、証券取引法の「偽計及び風説の流布」と「有価証券報告書虚偽記載」の2つ。その内容を簡単に見てみよう。

「偽計及び風説の流布」とは、業績を偽る、嘘の情報を流すなどして、株価に影響を与えようとする行為。ライブドア事件では、次の3点が違法ではないかと指摘されている。

①LDが、LDMを介して、実質的に支配下に置いていたファンド名義で買収済みだったマネーライフ社の企業価値を、ライブドアファイナンス(以下、LDF)従業員が過大に評価し、LDMとの株式交換を決めたこと。

②LDFの従業員が株式交換比率を決めたにもかかわらず、第三者機関が算定した結果を両者間で決定した、と嘘の情報を公表したこと。

③LDMの第三四半期決算の際、架空売り上げを計上して完全黒字化を達成した、という嘘の情報を公表したこと。

また「有価証券報告書虚偽記載」とは、有価証券報告書に偽りの情報を記載する行為。ライブドア事件では、04年9月期の連結決算で、業務の発注を装った架空売り上げと、LDが所有するファンドがLD株を売却することで得た利益とを、それぞれ売り上げに計上し、実質赤字だったにもかかわらず黒字だったと有価証券報告書に記載したこと。

 これらの容疑を、堀江氏が主導して計画的に行ったというのが、検察側の主張だ。一方、堀江氏は次のように反論。

①買収した会社の評価額を不当に水増ししていたという「偽計及び風説の流布」容疑に関して、裁判所はライブドアの社員が公認会計士に指定した算出額を使わせた、として違法としているが、堀江氏がそれを命じた、とは判決にも書かれていない。また堀江氏は、公認会計士の報告通りに決裁しただけで、自らが計画したものではない。また、評価額はDCF法(株式や不動産などの投資プロジェクトの価値を算出する際に用いる評価方法)で算出したもので、不当に高いわけでもない。

②同じく「有価証券報告書虚偽記載」容疑に関して、一部の取引が架空取引であったことについては、それらが架空であったことを知らされていなかったため、架空であったとしても認識できるはずがなかった。

③ファンドを通じた自社株の売却益を売り上げとして、損益計算書に計上した「有価証券報告書虚偽記載」の容疑について、裁判所はファンドは脱法目的でつくられたものと認定。しかし、ファンドで自社株を売却したのは、買収される側のクラサワコミュニケーションズとウェブキャッシング・ドットコムが、株式交換ではなく現金での買収を希望したためにつくったスキームを満たすためであり、自社株売買により利益を上げるという違法な目的でつくったものではないため、違法行為には当たらない。さらに、当時の会計基準では、当該ファンドはライブドアの連結対象ではなく、自社株の売却益を損益勘定(売り上げ)に組み入れても問題ないという解釈も存在している。

こうした堀江氏の主張にもかかわらず、裁判では、一審、二審ともに懲役2年6カ月の実刑判決が下されている。現在は上告中で、今年4月23日には、「二審判決は最高裁判例違反であり、また重大な事実誤認がある」とする上告趣意書を最高裁に提出している。

 あれだけ注目を集めた事件にもかかわらず、人々の記憶に残っているのは事件の本質から外れたバッシング報道ばかり。ライブドア事件は、メディアの、情報を伝える責任の希薄さも浮き彫りにしたといえる。

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