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哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第52回

【哲学入門】存在について考えるためには、「現存在」たる人間を手がかりしなければならない。

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(写真/永峰拓也)

『存在と時間』全3巻

マルティン・ハイデガー(原佑・渡邊二郎/訳)/中公クラシックス/1600円+税(Ⅰ巻・Ⅲ巻)、1750円+税(Ⅱ巻)
存在とは何か――ヨーロッパ哲学の課題であった存在論を新たに切り開き、ひとつのジャンルとして確立したマルティン・ハイデガーの主著。現代哲学に大きな影響と広がりをもたらした、20世紀でもっとも重要な哲学書のひとつ。


『存在と時間』より引用
つまり現存在は、おのれの存在と存在しうることとを、おのれの世界内存在に関しておのれに根源的に了解せしめるのである。目的であるものはなんらかの手段性を、手段性はなんらかの一定の用途性を、一定の用途性は適所をえさせることがそのもとでえられるなんらかの適用を、適用は適所性がそれでもってえられるなんらかの適具を、有意義化する。これらの諸関連は根源的な全体性としておたがいに結びつけられている。つまり、これらの諸関連がほかならぬこれらの諸関連であるのは、このような有意義化のはたらきとしてであって、この有意義化のはたらきのうちで現存在は、おのれ自身におのれの世界内存在を先行的に了解せしめるのである。こうした有意義化のはたらきの関連全体を、われわれは有意義性と名づける。

 20世紀以降の現代の哲学を考えるうえでもっとも重要な哲学者とは誰でしょうか。多くの人はマルティン・ハイデガーの名前をあげるにちがいありません。私もそう答えるでしょう。

 私はもともとミシェル・フーコーやジル・ドゥルーズといった現代フランスの哲学者を研究していましたが、彼らの哲学を研究すればするほど、いかに彼らがハイデガーの哲学から大きな影響を受けているのかを痛感させられました。極端にいえば、彼らがオリジナリティあふれる深い考察を繰り広げることができたのは、あくまでもハイデガーが新しい哲学の地平を切り開いたからこそです。ハイデガーがいなければ20世紀以降の哲学のあり方はまったく違ったものになっていたでしょう。

 では、ハイデガーの哲学の何がそんなに画期的だったのでしょうか。それは「存在」をめぐる彼の考察です。

 哲学には存在論と呼ばれる領域があります。存在論とは文字どおり「存在するとはどのようなことか」を考える哲学の営みのことです。たとえば目のまえに葉っぱが落ちていたとします。この葉っぱが存在するとはどのようなことかを問うのが存在論です。もちろん哲学における存在論は葉っぱのような個々の存在物についての考察にとどまるものではありません。たとえそこから出発するにしても、存在論は最終的には「人間が存在するとはどのようなことか」「この世界はどのように存在しているのか」「なぜそもそも無なのではなく、世界が存在しているのか」といった大きな問いにまで行き着きます。

 その存在論を20世紀において刷新したのがハイデガーです。ハイデガーがその後の哲学者たちに影響をあたえたのも、その存在論の刷新が大きなインパクトをもったからです。

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