>   >   > 篠山紀信から中国のレン・ハンまで――LG...

【こちらの記事と一緒にお楽しみください】

――写真家が“作品”として発表するヌード写真。日本でそれは、「芸術か、わいせつか?」という議論を巻き起こしつつも、しばしば世間の注目を集めることがあった。では今、その最前線の表現はどうなっているのか? 国内外の写真家たちの名前を挙げながら、2010年代におけるヌード写真の潮流をつまびらかにしていきたい。

篠山紀信から中国のレン・ハンまで――LGBT的連帯と裸体の素材化 国内外ヌード写真の最尖端の画像1
ロンドンの女性写真家ハーレー・ウィアーが撮った、バレンシアガの17年春夏キャンペーン。

 日本でヌード写真はたびたびた大きく取り沙汰された。ただし一般的には、1991年に篠山紀信が10代の宮沢りえを活写した『Santa Fe』(朝日出版社)や、2013年にレスリー・キーが男性器を撮った写真集を販売し、わいせつ物頒布等の罪に問われた事件など、スキャンダラスな話題として消費されがちだ。しかし当然、世界にもヌード表現があり、日々更新されている。本稿では、2010年代の国内外におけるヌード写真の動向を考察したい。

 編集者・アートプロデューサーの後藤繁雄氏は、10年代以降の新傾向として“ポスト・ヒューマン”と“ジェンダーフリー”を挙げる。前者を代表するのは、オリエント工業による精巧なダッチワイフ「ラブドール」を被写体とした写真展『LOVE DOLL×SHINOYAMA KISHIN』を今年の4~5月に開いた篠山紀信【1】だ。

「同展は、篠山さんが過去に撮ったグラビアのシチュエーションにラブドールを据えるという極めて批評的な試みであると同時に、VRなどを駆使したバーチャル・セックスを予見しています」(後藤氏)

 篠山の挑戦は、日本におけるヌード表現のひとつの到達点だと後藤氏は言う。

「乱暴に言えば、欧米におけるヌード写真のピークは80年代で、ヘルムート・ニュートン、ブルース・ウェーバー、ロバート・メイプルソープらによるグラマラスな裸を顕示した写真が中心でした。一方、日本では、篠山さんの『激写』シリーズのような湿気をはらんだエロチシズムを基軸に、特殊発展してきました」(同)

 そして80年代後半以降、篠山は都市空間での裸の撮影も行った。しかし、彼は『20XX TOKYO』(朝日出版社/09年)で都内の公衆の目に触れる場でヌード撮影をしたことが公然わいせつ罪に問われる。

「そこで、篠山さんは写真展『快楽の館』(16年)で、美術館の敷地内で撮ったヌード写真を撮影したのと同じ場所に配し、密室でヌードを乱反射・増幅させるような展示をした。さらに『LOVE DOLL~』では、ラブドールを被写体に純粋なセックスのみを提示。これは、特殊発展した日本のヌード写真と、ラブドールという立体造形技術と、キリスト教的モラルに縛られない発想が生んだ、世界的にもかなり進んだ写真表現といえます」(同)

 もうひとつの傾向のジェンダーフリーとは、今までは基本的に男性のためのものだったヌード写真に、女性やゲイの視点が持ち込まれたこと。もっとも、前出のウェーバーやメイプルソープをはじめ、昔からゲイの写真家は多くいた。彼らと今のゲイ写真家は何が違うのか? 写真やファッションに明るい編集者の菅付雅信氏は、こう説明する。

「今のゲイ写真家は、LGBT的な連帯感が強い。ウェーバーやメイプルソープの世代は、自分たちはゲイという、ストレートはもちろんレズビアンやバイセクシュアルなどとも区別された特殊な存在で、そこにある種の優越感と孤独感を抱いていましたが、現世代はほかの多様なセクシュアリティの人たちと並列だと考える、寛容な態度を持ち合わせています」

 ゆえに、若い世代のゲイ写真家によるヌード作品は、ストレートの女性にも抵抗なく受け入れられる。そんな中で、菅付氏いわく「この10年間で、アートとしてのヌード写真で最もアイコニックな存在」がライアン・マッギンレー【2】だ。

「ニューヨークの写真家で、03年に史上最年少(25歳)で米ホイットニー美術館で写真展を開きました。キャリア初期は若者のストリートライフを題材にしていましたが、裸の若者たちが郊外の街や自然の中で戯れるさまをユートピアのように撮った写真で大ブレイク。その後は、大がかりなプロダクションで洞窟内にいる若者のヌードを撮ったりしています。彼には、ヌードとは写真史において永遠普遍の題材であり、自分はその歴史を継承しつつ発展させる存在になりたいという意図が明確にありますね」(菅付氏)

 ライアン・マッギンレーが写真界に与えた影響は計り知れない。事実、彼の元アシスタントや友人であるティム・バーバー、サンディ・キムといった“マッギンレー一派”とも呼べる若手も注目を集めている。とりわけ、ファッション写真をベースに活動しているパリのピエール=アンジュ・カルロッティ【3】(彼もまたゲイだ)は、“ポスト・マッギンレー”と呼べる才能があるという。そして、この“ファッション”という分野も、ヌードと深い関係にあると菅付氏は話す。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...
この記事を購入※この記事だけを読みたい場合、noteから購入できます。

Recommended by logly
サイゾープレミア

2017年12月号

チラリと魅せる和モノ写真進化考

チラリと魅せる和モノ写真進化考

真木しおり、Gカップのリムジンパーティ

真木しおり、Gカップのリムジンパーティ