哲学者・萱野稔人の“超”現代哲学講座
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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第20回

戦争したって儲からない!? 恒常的軍備が無化した戦争の経済効果と新しい平和の形

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第19回テーマ「軍需産業と経済効果のジレンマ」

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[今月の副読本]
『戦争の経済学』
ポール・ポースト著、山形浩生訳/バジリコ(07年)/1890円

戦争は、本当に経済を発展させるのか――。先進国を中心に"定説"とされていたこの問いに、「武器市場の概略」「核物質取引の価格」など、多角的に、かつ初歩的な経済理論を用い、ストレートに分析した一冊。


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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第19回

「シルバー・デモクラシー」の弊害が顕著な日本で、所得の再分配に苦しめられる若者 原因は社会制度にあり!

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第19回テーマ「再分配と世代間格差の障壁」

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[今月の副読本]
『財政危機と社会保障』
鈴木 亘/講談社現代新書(10年)/798円

史上最悪の債務を抱えた日本の財政が、社会保障にもたらす影響を浮き彫りにした1冊。少子高齢化において、「日本の社会保障のあるべき姿」を、詳細かつ膨大なデータを用いて解説してくれる。


 格差問題といえば、これまでは正社員と非正社員の格差だとか、男女のあいだの雇用機会の格差などがよく論じられてきました。しかし、世代間の格差も決して無視することのできない問題です。たとえば経済学者の鈴木亘は『財政危機と社会保障』のなかで次のような試算をしています。

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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第18回

高度経済成長はもう二度と起こらない! 財政破綻の危機に直面する先進国共通の構造

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第18回テーマ「高度経済成長が生むバブルのツケ」

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[今月の副読本]
『国家債務危機』
ジャック・アタリ著/作品社(11年)/2310円

弱冠38歳で、フランスのミッテラン政権大統領特別補佐官を務めた著者が、債務問題から経済の展望を大胆に予測する。ユーロ危機や1000兆円の債務を抱えた日本の将来を、経済成長とともに紐解いていく。


 欧州の債務危機が世界を揺るがせています。ギリシャだけでなく、イタリアやスペイン、ポルトガルの債務状況も非常に危ないといわれています。今年10月には、フランスとベルギーに拠点をおく大手金融機関のデクシアが破綻しました。ギリシャなどが借金のために発行した国債をもちすぎていたためです。同じような金融機関の破綻は今後も続くかもしれません。もしそうなれば、金融機関同士が、貸し倒れを避けて、おたがいに資金を融通しあわなくなり、2008年のような金融危機がふたたび起こることだってありえなくはないでしょう。

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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第17回

麻薬密輸は死刑に相当する重罪か!? 人権を掲げる普遍的主義と文化相対主義との対立

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第17回テーマ「他国での死刑と文化相対主義」

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[今月の副読本]
『オリエンタリズム』(上)
エドワード・W・サイード著/平凡社ライブラリー(93年)/1631円

スタンフォード大学の特別研究員だったサイードによる、東洋への理解を多角的に捉えた著作。西洋人の独断的解釈で語られる「オリエンタリズム」の概念から脱却し、新しい価値観で中東を論じたことでも知られる。



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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第16回

「国家とは、民衆から支持されたヤクザ組織である」 暴力がお金を生み出す構造と国家論

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第16回テーマ「ヤクザから考える国家の概念」

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[今月の副読本]
『リヴァイアサン』
トマス・ホッブズ著/岩波文庫(54年)/945円

近代政治思想を築き上げたイギリスの哲学者による古典。人間の自然状態を戦争状態にあるとし、その人間の分析から国家の性質や構造を論じていく。同書のタイトルは旧約聖書に登場する海獣から取られた。


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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第15回

女性を交換するために作られた近親相姦というタブー

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第15回テーマ「近親相姦の禁忌が生む社会関係」

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[今月の副読本]
『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』
山極寿一著/NHKブックス(07年)/1019円

6500万年前に誕生したという霊長類。その中で我々人類は、霊長類の進化として、争いの原因、和解の方法を身に付けてきた。哺乳類とは明らかに異なる霊長類の行動から、人類の社会性起源に迫る意欲作。


 これまで2回にわたって「人を殺してはいけない」という道徳と死刑との関係について考えてきました。「人を殺してはいけない」という道徳はあらゆる社会に見いだされる普遍的な道徳ですが、もしこれと同じくらい普遍的な道徳がほかにもあるとしたら、それは何だと皆さんなら答えるでしょうか。

 2008年4月9日の朝日新聞(web版)にはこんな記事がありました。少し引用しましょう。

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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第14回

死刑肯定論や犯罪の正当化も根は同じ!? 道徳的判断を貫く「ふさわしさ」

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第14回テーマ「近代刑法学の祖から見た死刑と道徳」

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[今月の副読本]
『犯罪と刑罰』
ベッカリーア著/岩波文庫(59年)/693円

フランス革命から遡ること25年前に上梓され、封建的刑罰制度の中で執行される、死刑と拷問の廃止を訴えた初の書物として名高い。その後、フランス革命を経て、近代刑法の礎を築くきっかけとなった。


 前回は、道徳はどこまで普遍的なものなのか、という問題を取り上げました。そこで考察の対象となったのは「人を殺してはいけない」という道徳と死刑との関係です。2009年の内閣府の世論調査では85.6%の人が死刑制度を容認していたことからわかるように、多くの人は「人を殺してはいけない」と確信しながらも、処罰のためには凶悪犯を殺すのもやむをえないと考えています。つまり、どのような場合であれ(たとえ凶悪犯を処罰するためであれ)人を殺してはいけない、とは考えていないんですね。「人を殺してはいけない」という道徳には例外がある、ということです。

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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第13回

本当に、人を殺してはいけないのか? 死刑が揺るがす道徳の普遍性

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第13回テーマ「殺人の正当化と定言命法の普遍」

[今月の副読本]
『実践理性批判』
カント著/岩波文庫(79年)/903円
絶対的な道徳というものは存在しうるのか? また、人は自らの意思により、それに従うことはできるのか? 『純粋理性批判』『判断力批判』と併せた三批判書により、批判哲学の祖を築いた哲人による倫理学の名著。


 道徳の中で最も普遍的で根本的なものとはなんでしょうか。多くの人はおそらく、人を殺してはいけないという道徳だ、と答えるでしょう。

 実際、「人を殺してはいけない」という道徳はあらゆる社会に見いだされるものであり、また、「嘘をついてはいけない」とか「盗みをしてはいけない」といった道徳よりも、はるかに多くの人によって守られています。もちろん殺人事件は常に世界のいたるところで起こっている以上、「人を殺してはいけない」という道徳は完全に守られているわけではありません。しかしそれでも、殺人事件が起こればほとんどの人は条件反射的に「よくないこと」と考えるほど、「人を殺してはいけない」という道徳は確固たるものとして人々の間に根付いています。

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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第12回

石油エネルギー依存からの脱却で、アメリカの世界覇権も終焉へ!? 資本主義の歴史が証明する未来とは?

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

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第12回テーマ「アメリカ・ヘゲモニーと資本主義」

今月の副読本
『長い20世紀──資本、権力、そして現代の系譜』
「アメリカ・ヘゲモニーと資本主義」ジョヴァンニ・アリギ著/作品社(09年)/5460円

「アメリカが覇権を握る経済システムの始めと終わり」20世紀をこう表した世界システム論の代表論者による分析論。アメリカ・ヘゲモニーが終焉を迎える今、新たな覇権は誰が握るのか、その視座を探る──。


 前回は、日本の電力供給システムの問題点についてお話ししました。その中で見直されるべき点として取り上げたのは、垂直統合型といわれる電力供給の仕組みです。つまり、電力会社が発電と送電を一括して担うという仕組みですね。発電という生産の部分と、送電という流通の部分をひとつの会社が「垂直」に「統合」して電力を供給するので、「垂直統合型」と呼ばれます。

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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第11回

東日本大震災が顕わにした日本にはびこる構造的問題

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

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第11回テーマ「資本主義の支配的構造と電力問題」

今月の副読本
『記号と事件 1972年-1990年の対話』
ジル・ドゥルーズ著/河出文庫(07年)/1260円

『千のプラトー』『アンチ・オイディプス』など、自らの思想についてドゥルーズが語った20年にも及ぶインタビュー&対話集。自身が"ドゥルーズ入門書"と位置づけている通り、明快で柔らかく語られている。


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宇野常寛の批評
宇野常寛の
批評のブルーオーシャン
『さらば、既得権益はびこるレッドオーシャン化した批評界!』

ITインサイドレポート
佐々木俊尚の
ITインサイドレポート
『激変するITビジネスとカルチャーの深層を鋭く抉る!』

映画でわかるアメリカがわかる
町山智浩の
映画でわかるアメリカがわかる
『映画を通してズイズイっと見えてくる、超大国の真の姿。』


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