日本人でもヘイトスピーチを繰り返す政党の台頭には、ただただ辟易。外国人の前に、まずは彼らを取り締まるべきでは?(絵/ICHIRAKU STUDIO)
ほんの数年前まで「おもてなし」などと言って、インバウンド(訪日外国人観光客)を歓迎していたのに、いまや外国人排斥を掲げる参政党が躍進し、自民党の小野田紀美経済安全保障相は「悪いことをする外国人は日本にいない状況をつくる」と主張している。こうした日本社会のゼノフォビア(外国人嫌悪)を、当の外国人たちはどう受け止めているのだろうか?
[座談会参加者]
A…ネパール人男性・在住歴20年(40代) B…フランス人男性・在住歴8年(30代) C…スリランカ人男性・在住歴8年(20代) Z…帰国子女男性・帰国して15年(30代)
A 渋谷は外国人観光客が多すぎて、ちょっと気が滅入るよ。
B コロナ禍のとき、渋谷区に住んでいたんだけど、あの頃は外国人観光客がいなくて静かでよかったね。
C 外国人観光客といえば、中国人が目立つけど、円安の影響でアメリカ人も多い。クラブや飲食店で騒いでいる、マナーの悪いヤツは大抵そうだよ。
Z 近年のオーバーツーリズムや移民問題、排外主義の台頭について、日本で長く暮らしている海外出身者の視点からお話を伺いたくこの座談会を開催しているのですが、3人とも日本語が本当に流暢で、会場の居酒屋の雰囲気にもすっかり慣れていますね。
A 当たり前だけど、箸は普通に使えるよ。僕たちが流暢な日本語を話すからバグったのか、さっき店員さんにおすすめメニューを聞いたら「馬刺し」
と言われたよ(笑)。
B 外国人観光客にはハードルが高い食べ物だよね。僕は納豆以外であればなんでも食べられるからいいけど。
C わかる。日本の食べ物はなんでも美味しいけど、納豆だけはいまだににおいが無理(笑)。
Z まぁ、納豆は日本人でも苦手な人は多いですからね……。そんな皆さんは国籍や「外国人であること」を理由に日本で損をした経験はありますか?
C そりゃ、たくさんあるよ。昔アルバイトしていた飲食店で、上司がなぜかスリランカ人にだけ厳しかった。ほかにも中国人やベトナム人がいるのにね。あとで聞いた話では、以前その店で働いていたスリランカ人がレジから金を盗んで、そのままいなくなったらしい。だから、スリランカ人そのものに懐いの目を持っていたんだ。本当、迷惑な話だよ。
A そういう意味でいうと、外国人が一番苦労するのは、部屋を借りるときじゃないかな。
B 間違いないね。
C 不動産屋がオススメしてきたのに、大家さんに電話すると「外国人はダメ」と断られることが何度もあった。当時は「人種差別だ!」と腹が立ったけど、今ならその気持ちも少しわかる。というのも、家賃を払わずに逃げた外国人の話もよく聞くからね。
Z 日本で生活する中で、不便に感じていることや、「ここは変えてほしい」と思うことはありますか?
C 日本に来て8年になるけど、いまだにクレジットカードを作るのが大変。自分は過去に悪いことをしたわけでもないし、母国では普通に作れるのに……。問い合わせても、審査に落ちた理由を教えてくれないんだ。
A 僕も学生の頃は、なかなか審査が通らなくて苦労したね。でも、会社に入ってからはスムーズに作れるようになったよ。
B 僕も同じ。だから、日本人と同じように単に収入を見られているのかな?
Z 最近は詐欺事件が増えている影響で、日本人でもカード審査に落ちることは珍しくないですからね。
C あとは、病院かな。日本の病院は基本的にとても丁寧な応対なんだけど、薬に関しては融通が利かない。僕は心臓に持病があって、海外で処方された特定の薬をずっと使っているんだ。でも、日本ではその薬をなかなか出してもらえない。法律的な問題もあるとは思うけど、ひとり暮らしだし、いつ発作が起こるかっていう不安は常にある。
A それは大変だね。
Z 海外では認可されていても、日本では認可されていない薬は多いですよね。ところで、先ほど渋谷の話が出ましたが、最近のオーバーツーリズムについて、皆さんはどんな印象を持っていますか?