サイゾーpremium  > ニュース  > 社会  > 【愛媛・縫製会社】技能実習生が語る実態

賃金未払いは一人当たり約160万円

給与は銀行振り込みと、一部、手渡しだったと女性は話す。違法残業分が手渡しだったことは容易に想像ができる。女性から提供を受けた同社の給与明細には不自然な部分がある。明細上の残業代とは別に、欄外に「残業残り」という項目があるのだ。

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女性の給与明細

違法残業の事実を確かめるため、女性の勤務先に電話を入れたが、本稿執筆時までに社長と連絡をとることはできなかった。社長は東京新聞の取材に対し、残業代未払いの理由をこう話している。

「海外産との競争が激化し、国内の既製服の工賃が安く、経営が苦しかった。医療用ガウンを3万から4万着生産したが、仲介業者が入り、工賃は1着150円ほどだった」

月100時間を超える違法残業。賃金未払いは少なくとも一人当たり約160万円あるが、11人の総額は約1800万円になる。全額、すぐに支払うことは難しいだろう。

実習生に転職は認められないが、同業種への「転籍」は可能だ。女性らは支援団体の力を借り、岐阜県内の縫製工場に転籍する手続きを進めている。

女性は話す。

「本当は3年で帰国するつもりでした。来日するために親戚から借りた5700ドルは8カ月で返済しましたが、現在の貯金は4億ドン(約200万円)。これでは家を建てることはできません。あと2年、実習生として働いて、家族のためにお金を稼ぎます」

最後に、「日本に対して言いたいことはないか?」と女性に尋ねると、劣悪な環境で働いてきた自身の悲哀を伝えるわけでも、技能実習制度の改善を求めるわけでもなく、意外な答えが返ってきた。

「エンダカニシテホシイ」

女性らを支援しているNPO法人日越ともいき支援会の吉水慈豊代表は話す。

「円安が加速し、同じ10万円をベトナムに送金しても、1年前と比べて約20%目減りしています。日本に出稼ぎに来る魅力が薄れるなか、不当労働行為を強いる企業を撲滅していかなければなりません。若手の労働力を実習生に頼りきりの状況のなか、日本に来てよかったと思えるよう、彼らの生活と人権を守っていく必要があります」

監理団体、受入企業の認定を行う国の外国人技能実習機構には、より厳格な審査が求められる。

(取材・文/澤田晃宏 「高卒進路」記者/ジャーナリスト)

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そのほか外国人が働く現場を徹底取材! 澤田晃宏外国人まかせ 失われた30年と技能実習生

澤田晃宏(さわだ・あきひろ)
1981年生まれ。兵庫県神戸市出身。ジャーナリスト。高校中退後、建設現場作業員、アダルト誌編集者、「週刊SPA!」(扶桑社)編集者、「AERA」(朝日新聞出版)記者などを経て、進路多様校向け進路情報誌『高卒進路』記者、同誌発行元ハリアー研究所取締役社長、NPO法人進路指導代表理事。著書に『ルポ技能実習生』(ちくま新書)、『東京を捨てる コロナ移住のリアル』(中公新書ラクレ)など。
Twitter〈@sawadaa078


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