サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 昆虫を味わう“美食”の最前線と功罪
第1特集
サイゾーPremium 特別企画「今こそ“昆虫”を考える」

世界の超一流シェフが生のエビにアリをまぶす!――昆虫を味わう“美食”の最前線と功罪

+お気に入りに追加

(取材・文/須藤輝)

2009_gastronomy_01_520.jpg
YouTube上の映画『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』予告編より。

“昆虫食”というと、日本ではゲテモノ食いの類いか、あるいは長野県などで食べられているイナゴの佃煮や蜂の子のような地方の伝統食というイメージが根強いのではないか。しかし近年、将来の食糧危機が懸念される中、環境への負荷が少なく栄養価も高い昆虫は有望な食材として世界的に注目を集めている。

 また、イギリスのウイリアム・リード・メディアが主催する「世界のベストレントラン50」で2010年から4度も第1位に選出されたデンマーク・コペンハーゲンのレストラン〈noma(ノーマ)〉も、生きたエビの背中にアリをまぶした料理で高い評価を得ている。あるいは日本でも、20年5月に無印良品が「コオロギせんべい」を販売したことは記憶に新しい。

2009_gastronomy_02_520.jpg
無印良品の「コオロギせんべい」

 ここでは、とりわけガストロノミー(文化と料理の関係を考察し、おいしさを作り出す技術を理論で裏付けること。「美食学」などと訳される)と虫の関係を探っていきたいが、その前に昆虫食全般をめぐる現状をもう少し整理しておこう。

 NPO法人食用昆虫科学研究会の理事長で、ネット上では「蟲喰ロトワ(むしくろとわ)」の名で活動する佐伯真二郎氏は、こう話す。

「私は08年から昆虫食の研究を始め、11年から食用昆虫科学研究会に合流、14年にNPO法人化しました。当時から、昆虫には食用にするに足る栄養があることは研究者の間では疑いがなかったのですが、やはり昆虫そのものへの嫌悪感や偏見もあり、昆虫食の研究というのは机上の空論であると切って捨てられることも珍しくありませんでした」

 それが、ある報告書をきっかけに潮目が変わったという。

「13年に国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した報告書が、来るべき世界的な人口増加と食糧問題を見据え、昆虫食を推奨するものだったんです。この報告書をまとめたオランダの研究者は10年にも、豚や牛は腸内で消化物が発酵するため温室効果ガスを出してしまうが、コオロギやミールワームといった昆虫はそうではないという趣旨の論文を発表しており、環境問題に敏感な一部の先進国は昆虫食に注目していました。FAOの報告書はその流れを加速させたといえます。具体的には、例えば牛肉を1キログラム生産するには8キログラムの飼料が必要だけれど、コオロギであれば2キログラムの飼料で済む上に繁殖も容易で可食部も多く、より効率的・経済的であるなど、さまざまな利点が挙げられていたのです」(佐伯氏)

 結果、アメリカとヨーロッパ諸国を中心に昆虫食が見直され始めたのだ。

「特に動きが早かったのはアメリカで、ベンチャー企業がコオロギ養殖の資金調達に成功しています。それに少し遅れる形でEUでも15年から昆虫養殖の審査が始まり、18年には無事に認可され、今や食用昆虫はオーガニックフードと同じ棚に陳列されています。殺虫剤を撒かれると死んでしまう昆虫をオーガニックで育てることは、そう難しくないんです」(同)

レモンの代わりにアリで酸味を付ける

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2021年10・11月号

伊織いお「パワフル&セクシー」

 伊織いお「パワフル&セクシー」
    • 【伊織いお】ボディメイクで鍛えた体!

(秘)読書案内

(秘)読書案内
    • 【YouTuber本】ヒット戦術
    • 【RYKEY DADDY DIRTY】ムショ読書
    • 【イスラム】を理解するための本
    • 尖端的すぎる【写真集】
    • 【フェティシズム】写真集の華麗なる変遷
    • 【スピリチュアル出版社】イチオシの本
    • 【エロ本】衰退史
    • エロ本業界の【歴史】がわかる参考文献
    • 【現代のエロマンガ家】の4冊
    • 【ヒップホップ文化】を学ぶ本
    • 17歳の【新鋭ラッパー】に聞く
    • 今流行りの【中国ミステリ】の世界
    • 占領下生まれのイビツなニッポン【図書館】

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 【マルサの女】高崎かなみ
    • 【高槻実穂】グラビア
    • 【藤木由貴】グラビア
    • 【グレイテストラウンドガール】プールパーティ
    • 【後藤直義】GHOST IN THE TECH
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【稲田豊史】オトメゴコロ乱読修行
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【クロサカタツヤ】ネオ・ビジネス・マイニング
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • 【小原真史】の「写真時評」
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【田澤健一郎】体育会系LGBTQ
    • 【澤田晃宏】外国人まかせ
    • 【大石始】マツリ・フューチャリズム
    • 【AmamiyaMaako】スタジオはいります
    • 【DJ DARUMA(PKCZ(R))& JOMMY】BLACK PAGE
    • 【友清哲】ビールの怪人
    • 【西国分寺哀】大丈夫?マイ・フレンド
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【更科修一郎】批評なんてやめときな?
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報