サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > K-POPの猛攻が衰えないワケ【1】/【K-POP製作陣】が語る日本の課題

――全米におけるBTSの大躍進は本誌特集でも既報通りだが、彼らと同じく日本デビューも果たしているTWICEやBLACKPINKなど、K-POPアーティストの楽曲クオリティは極めて高い――。その認識は、今や業界内で通底している。本稿では、日本でK-POPの制作に携わる裏方に集まってもらい、その内実と苦悩を詳らかにする。

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『K-POP Girls』(ミュージック・マガジン)

[座談会参加者]
A…メジャーレコード会社社員
B…芸能事務所社員
C…シンガー・ソングライター
D…音楽プロデューサー

 K-POPの完成度は、J-POPと比較にならないほど非常に高い――。これは新大久保を根城にしている生粋の韓国オタクの方々が発した言葉ではない。音楽業界に身を置き、韓国アーティストの制作にかかわった経験を持つ識者の総意である。その理由とは、果たして何か? 日本デビューを果たしているK-POPアーティストが所属するレコード会社/芸能事務所の社員や、韓国語ではなく“日本語ver.”をリリースする際の日本語歌詞を担当するシンガー・ソングライター、そして日本と韓国の音楽情勢を熟視してきた音楽プロデューサーを招き、その理由を詳細にしていきたい。

――まず、みなさんがK-POPに抱いていた印象から聞きます。

A 日本で韓国のアーティストがデビューして人気を得たのは、やはりBoAがパイオニアですよね。それよりも先にBoAと同じ事務所であるSMエンタテインメント所属の3人組女性グループ、S.E.Sが日本デビュー(1998年)していますが、いずれにしてもまだ日本ではK-POPと呼ばれていなかった。そもそも彼女たちは“日本向け”に作られた楽曲を歌っていたので、楽曲も日本で売れるフォーマット――メロディアスでカラオケで歌いやすい――に則っていたように思います。

B 04年の東方神起の日本デビューを機に、K-POPという言葉が徐々に日本に浸透し、10年を前後にSUPER JUNIORやBIGBANG、少女時代、KARA、2NE1などが続々とデビューしてから、K-POPという言葉が確立したのではないかと。

C その時代からですね、アメリカのメインストリームのサウンドと比較しても遜色のない楽曲を、しかもアイドルがやっているという印象を抱いたのは。

D アイドルという概念が変わりましたよね。少女時代のファースト・アルバムは、リード曲のみならずアルバム収録曲も含め、トータル・クオリティも非常に高かった。制作陣のクレジットを見れば、かかわっているクリエイターたちは、ビルボード・チャートのトップ40に名を連ねるプロデューサーばかり。とても緻密に作られていましたね。

 そもそも「なぜK-POPのクオリティが高いか?」という疑問があると思うんですが、K-POPはアメリカのトップ40にチャートインするようなトレンドに則した楽曲を“完全にトレースする作業”からスタートしているんです。まずは真似をすることで、全米のメインストリームのサウンドを徹底的に研究し、それを本国(韓国)の制作にかかわるスタッフはもちろん、アーティスト自身の意見も重ねてオリジナルのものにしていく。そのアジャストする早さにも驚きですが、「トレンドは2週間、ヘタしたら1週間で変わる」という事務所はおろか、アーティスト個人からの意見も尊重し、制作をリリース日の締切ギリギリまで延ばすのもストイックな姿勢です。その最先端のサウンドを見逃さない姿勢が必然的に楽曲のクオリティを底上げしますし、そういった制作工程は締切重視の日本では見られない光景ですね。

C 同感です。アイドルにありがちな「与えられた曲を歌う」のではなく、アーティスト自らが「そのトラックで曲を作りたい」という意思が明確なんですよね。正直、事務所の制作陣がトレンドに則った楽曲を用意して、それを歌わされているだけかと思っていたんですが、まったく違いました。

B それが日本のアイドルとは決定的に異なりますよね。もちろん、中にはクリエイティブ・コントロールを握っているアイドルもいることにはいますが、あくまでその視線は国内止まりであって、世界に目は向いていないのがほとんどです。

A K-POPの場合、それだけ前衛的で挑戦的なサウンドに挑んでも、日本で受け入れられるんですよね。今は日本のメジャーなレコード会社に1組はK-POPアーティストが所属していると思いますが、収益性の高い案件として受容されている。ただし、SMエンタテインメントやYGエンタテインメント、JYPなどの大手事務所所属アーティストともなれば、薄利多売【編註:契約書における売上利益の配分は韓国が非常に高い】といわれていますけどね(苦笑)。

――薄利多売となると、韓国サイドからの「日本でデビューさせてほしい」といった懇願ではなく、日本サイドからの「日本でデビューしませんか?」という働きかけだからこそ、そうした契約内容になるのでしょうか?

A 00年前後は「日本デビューさせてほしい」という韓国の事務所も多かったんですが、今はもう立場がまるっきり逆転しています。言い方は悪いですが、「そこまで言うなら日本でデビューしてあげてもいいよ」と、ふんぞり返った態度を取る事務所もあるくらいですから。

――日本の音楽は、なぜK-POPに水をあけられてしまったのでしょうか?

D 国内マーケットの大きさという問題もあると思います。J-POPの制作スタッフもヒットを出すべく、国内の過去のヒットを元に、さまざまな判断をしますが、それをイメージすると、どうしても昔の感覚に縛られて保守的になる。例えば、実験的なサウンドに挑戦する意識の高いアーティストがいたとしますよね。「まるで洋楽に引けを取らないクオリティだ!」と太鼓判を押すことになっても、徐々に制作を進めていく間に、「これ、売れるかな」「ファンが離れてしまったらどうしよう」「もっとわかりやすい歌詞のほうが……」という不安に駆られ、挙げ句の果てに年配の上司から「なんだこれ? 泣きメロがないぞ。作り直せ」みたいな圧力がかけれる。

A まさに経験済みです(笑)。プリプロの段階では、アーティスト自身も制作チームも「やりたいことを形にできてる!」と高いモチベーションで制作に臨んでいるんです。私は数年前、K-POPもJ-POPも担当している時期があったので、「K-POPに負けてたまるか!」という気持ちがありました。しかし、Dさんの指摘のように、どんどん不安になり、「サビをもっとキャッチーにしたほうが」「AメロとBメロをさらにメロディアスにしたほうが……」と考えた矢先に、上司から「こんなの売れない」と突き返されることがたびたびありました。

――すると、先ほどの話と矛盾する点が生まれるような気がするのですが、なぜサビやメロディアスな楽曲に固執せず、アメリカのメインストリームのサウンドをトレースするK-POPが日本でヒットするのでしょう?

B K-POPには固定の日本人ファンが必ず一定数つき、彼らが購入特典を目的に初回盤や通常盤を買ってくれることが大きい。あとは「ルックスがよく、歌って踊れる」という、字ヅラにすればジャニーズのアイドルと同じように感じるかもしれませんが、そのレベルが桁違いに違いすぎる点は、K-POPの大きな魅力になっていると思います。

A ジャニーズはルックスありきで、小さい頃からちやほやされて、「親が勝手に履歴書を(事務所に)送った」とかいう他薦文化が根深く残っていますが、韓国のアイドルは自薦で、かつデビューまでに「人前に立たせても恥ずかしくないレベル」まで自分自身を磨き上げるというのが根底にありますからね。

B BIGBANGやEXO、SHINeeなどがその代表格だと思いますが、K-POPの場合は、それが女性グループにも同じことがいえますからね。

知られざる内情――日本語ver.制作の苦悩

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