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法社会学者・河合幹雄の法痴国家ニッポン【51】

【いじめ情報共有義務づけ】いじめ加害者を「殺人犯」にできない刑法の限界と、政府が探る“第3の道”

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法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

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いじめ情報共有義務づけ
2016年8月、青森県で中学生の男女が相次いで自殺するなど、後を絶たないいじめによる“重大事態”。それに対して文部科学省のいじめ防止対策協議会は16年10月、いじめ情報の共有は法で定められた公立学校の教職員の義務であり、怠った場合には懲戒処分となり得ることを周知する、などの取りまとめ案を提示している。


「横浜・避難生徒いじめ『被害150万円』学校動かず」(「毎日新聞」2016年11月17日付)

「青森中2女子の遺書を遺族が公開『いじめてきたやつら、二度としないで』」(「SANSPO.COM」16年8月30日付)

 繰り返される、学校現場でのいじめによる重大事件。そのつど巷では、厳しい刑事罰を求める議論が加熱し、いじめは犯罪である、とのお題目が繰り返されます。被害者がいじめを苦に自殺したのなら、それは加害者やその周囲に殺されたも同然だ、と。

 もちろんそうした市民感情は理解できなくはない。いじめを受けた経験のある人や、子育て中の親ならなおさらでしょう。しかし法の専門家からすると、いじめの加害者やその周囲を刑法で裁き刑事罰を下すのはきわめて困難です。それはなぜなのか? 今回は、刑法システムといじめ問題との“距離の遠さ”を解説しつつ、では、代わりにどのような抑止システムがあり得るかについて考察してみましょう。

 いじめを刑事司法で扱いづらい最大の理由。それは、いじめというものの大部分が、証拠の残らない間接的な攻撃、つまり犯罪として立証できない行為であるということです。もちろんいじめの中には、直接的な“犯罪行為”も存在する。たとえば冒頭で引用した横浜市の事件のような多額の金を脅し取られたケースなら、恐喝罪を適用し得るでしょう。

 しかし、そうした証拠の残る物理的な行為は、現実にはいじめのほんの一部です。むしろいじめの大半は、恒常的な悪口や無視、仲間外れなどの間接的、心理的な攻撃で占められている。ゆえに、たとえそうした行為と自殺との因果関係が明らかであるように見えても、多くの場合、それを証明する手立てはない。また、加害者が直接手を下して殺害したわけではない以上、殺人罪では立件できない。刑事上、死因はあくまで“自殺”なのです。せいぜい、加害者によるSNS上の「死ね」などの書き込みを証拠として、自殺教唆罪を問えるかどうかでしょう。

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