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【premium限定連載】ドキュメンタリー監督・松江哲明のタブーを越えたドキュメント 第4回

童貞まるだしの武田真治! AVをパロディ化して民放で放送する『めちゃイケ』の攻める姿勢

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――ドキュメンタリー監督である松江哲明氏が、タブーを越えた映画・マンガ・本などのドキュメンタリー作品をご紹介!

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『クイック・ジャパン 113』(太田出版)

 岡村隆史が「テレクラキャノンボールや」とつぶやき、Respect to カンパニー松尾のテロップ、さらにはWeekday Sleepersの「Passion Fruits Teleclider」が東京の繁華街の風景に重なる。『めちゃイケ』の「モテない男No.1決定戦!」は『劇場版テレクラキャノンボール2013』に感動したスタッフがその敬意をさらけ出した回だった。そして近年のめちゃイケで最もドキュメント性が生かれたとにかく面白いバラエティだった。

『テレクラキャノンボール』はAV監督カンパニー松尾が97年に始めたシリーズで、目的地までのカーレースと、テレクラやナンパ、出会い系等を使って女性を口説き、セックスの内容でポイントを稼いで優劣を決めるゲーム性と、赤裸々な人間模様が描かれる企画AVだ。シリーズ5作目となる『2013』を僕はまず10時間あるDVD版で見たが「今年、これを超える作品が現れるはずがない」と確信し、すでに2014年のベスト1と決めている。

 見ている最中は仕事も進められず、寝ても続きが気になって、明け方布団に包まりながらノートPCの小さい画面に向かって嗚咽を漏らしていた。その数日後に上映が始まった『劇場版』はオーディトリウム渋谷でのレイトショーで連日満員が続く。映画館で配られたチラシと松尾監督のTwitter以外宣伝はされていないはずだ。だが観客の口コミが凄まじかった。

 松尾監督自身による「ネタバレ禁止ね」と告げられたことで観客の結束力が高まったこと、もの凄くえげつない内容なのに笑えてしまう映像、世代を超えたAV監督たちの生き様(死に様)に感動せざるを得ない等、理由はいくつも考えられるが単純に「今こんなに面白い映画は他になかった」からに違いない。

 公開中、Twitterには「見るか見ないかなら見る人生を選ぶ」というつぶやきが溢れた。劇場に駆け付けた観客たちの感想だ。これは参加者の一人であるビーバップみのる監督がある決意をした時に発した言葉を元にしたキャッチコピー「ヤルかヤラナイかの人生なら俺はヤル人生を選ぶ」から取られている。作品を象徴する見事なコピーだと思う。まさかこの言葉の意味があんな映像に繋がるなんて、という衝撃も含めてだ。見た人が「凄いんだよ」と口にしたくなる仕掛けは予告編やチラシの段階にあったのだ。

 だが作品を見れば「ヤル人生を選ぶ」のかがいかにトンデモないことかが分かる。実は僕にはその人生を選べなかったという想いがある。今から約10年前、僕は松尾監督の制作会社ハマジムでフリーの監督としてAVを撮っていた。二年近く続けていたが、あれほど自由にドキュメンタリーを撮れた現場はない。AVとしてはほとんど売れなかった『アイデンティティ』を『セキ☆ララ』と改題し劇場公開されてもらったこと、『童貞。をプロデュース』に松尾さんに出演して頂けたことは今振り返ってみても大きな転機だった。

 だが、あの頃は居心地の良さと同時に「このままでいいのか」という思いもあった。ハマジムにいると先輩たちの影響が強過ぎて、何を撮っても「似て」しまう。同じ機材、撮影条件だからというのは言い訳にしかならない。そもそもドキュメンタリーを志したきっかけの人なのだ。影響を受けない方が無理だった。僕が『テレクラキャノンボール2013』に泣いた理由は、松尾さんが今も昔も、きっとこれからもヤル人生を選ぶからに違いないからだ。AVの世界ではヤレなかった僕にはその凄さが少しだけ分かる。

 そんな僕にとっても今回の『めちゃイケ』は感動的だった。ヤラナイことを徹底的に笑いとして表現していたからだ。その代弁者が武田真治だった。何度もナンパに失敗し、メンバーからは「気持ち悪い」と笑われながらもポイントを稼ぐ三ちゃんや、慎重に出会いを求め、失敗を笑いに変える岡村隆史に対し、彼は一切声をかけることが出来ない。最も期待されていたにも関わらず、だ。

「みっともないことは出来ない」「この人だって決めて真心こめてナンパする」と言い訳をしながら微動だにしない姿がおかしくて仕方なかった。自分のプライドを守る鎧が固過ぎて遂には「俺の心の闇、深いよ」とまで言い出す始末。まさか武田真治を見て自分の童貞時代を思い出すとは思わなかった。これも見事にヤラナイ人生だった。だが、この放送でのチャンピオンは彼に違いない。

 僕は『テレクラキャノンボール』に限らず、松尾監督の作品は見る人の衝動を促す作品だと思っている。面白いとかヌケるとかエロいとか、そういう感情よりも「女の人に会いたい、セックスがしたい」と思わせてしまうのだ。または「何か作りたい」という創作欲。『めちゃイケ』スタッフにもきっとその想いが伝染したことは違いない。テレビバラエティからAVに対する見事な回答だった。

まつえ・てつあき
1977年、東京生まれのドキュメンタリー監督。99年に在日コリアンである自身の家族を撮った『あんにょんキムチ』でデビュー。作品に『童貞。をプロデュース』(07年)、『あんにょん由美香』(09年)、『フラッシュバックメモリーズ3D』(13年)など。『ライブテープ』は東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門作品賞を受賞。

本文中に登場した『テレクラキャノンボール』が6月にポレポレ東中野にて再上映!詳細はコチラから。


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