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NTTへの規制がついに解かれる!?

我が子に三千億超を要求!? ソフトバンク孫社長がKDDIを乗っ取る日

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のっぴきならないフトコロ事情

ソニーのVAIOといえば、今の軽量薄型ノートパソコンのトレンドを作った、いわば日本のパソコン業界の看板。ところが今年2月、ソニーはこのVAIOを生んだパソコン事業部の売却を発表。その裏には、同社ののっぴきならないフトコロ事情が隠されていた。そして孫正義社長率いるソフトバンクも、事情は同じのようで……。

A:IT系ジャーナリスト 
B:通信業界コンサルタント
C:元ソニーのベンチャー社員
D:IT業界に強い証券アナリスト

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『あんぽん 孫正義伝』

A 2014年も最初の四半期を終えましたが、早くもいろんな出来事がありました。中でも大きいのが、2月に発表されたソニーによるテレビ事業の分社化とパソコン事業の売却、そしてヤフーによるイー・アクセスとウィルコムの買収でしょう。VAIOについては、7月までにPC事業をファンドに売却、今後は独立したパソコンメーカーとして歩むことになりました。

C 日本メーカーはどこも厳しいですが、ソニーがここまで大きなアクションを取るというのは元社員としても意外でした。

B 平井一夫社長は、プレイステーションをアメリカでヒットさせSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)アメリカの社長も務めるなど、アメリカで長くビジネスをしてきた人。だからこそ、テレビとPCというかつての看板部門のリストラを決断できたんでしょう。

A ただ、昨年ソニーは、ダニエル・ローブ氏率いるアメリカのヘッジ・ファンド サード・ポイント から「エンタメ部門の分社化と上場」を提案されましたが、同社はそれを拒絶。この提案は、家電メーカーからエンタメ企業への転換をソニーに促すものでしたが、それに比べると今回の措置は小粒な印象です。

D 今回の一件は投資家からの評価も微妙なところで、株価もさほど上昇していません。それに売却先が、日本産業パートナーズというみずほ銀行などが母体となった再生ファンド。実はソニーは他メーカーにも買収を打診していたんですが、すべて断られたらしい。今のVAIO事業部にはビジネス面での魅力がありませんから。

C しかも実は、VAIOの現行機種を開発したエース級の技術者は、ソニー本体に残るんだそうです。だから、新会社から今後発売されるVAIOは、ハードウェアの質が落ちるかもしれない。

B ソニーの社員に聞くと、12年6月に社長に就任した平井氏が「ワン・ソニー」をスローガンに掲げて事業部ごとの壁をなくす施策を採ったことで、社内の横のつながりや風通しが良くなったとか。でもここ最近のリストラによって、また事業部ごとの壁ができつつあるらしい。

C ソニーは前代のハワード・ストリンガー体制で行ったリストラでデキる技術者がかなり流出してしまい、メーカーとしての技術的基盤が弱くなりました。そこからようやく回復の兆しが見えてきたのに、また後戻りしそうですね。

NTTへの規制がついに解かれる!?

MEMO『孫社長』
ソフトバンク株式会社の孫正義代表取締役社長のこと。1957年、佐賀県生まれ、福岡県育ちの御年56歳。在日韓国人家庭の出自だが、90年に日本に帰化している。

A 同じ事業売却でも、まったく違う反響を呼んだのがソフトバンクの件です。子会社のイー・アクセスとウィルコムを今年4月に合併させることは昨年12月に発表済みでしたが、さらに今回、その新会社をヤフーが買い取ることになった。新会社の名称も「ワイモバイル」と、ヤフーブランドを前面に押し出したものに。

D 子会社の下に別の子会社を置いて孫会社にすること自体はたまにあること。ただし今回は、ヤフーがソフトバンクに3420億円もの現金を支払っているのが異例です。しかもヤフーは、1700億円分を銀行からわざわざ借り入れている。

A 12年10月にソフトバンクは約2000億円でイー・アクセスを買収。このときは株式交換によるものだったのでソフトバンクは現金を支払っていません。またウィルコムは、同社が破綻した際にスポンサーとしてソフトバンクが400億円を出資することで手に入れています。だからソフトバンクにとっては、400億円足らずの現金が約8倍にも増えて手元に返ってきたことになります。

B 要は、借金まみれの親=ソフトバンクが、稼ぎの良い子ども=ヤフーから強引に仕送りさせたようなもの。あまりに露骨なので、大手新聞までが「ヤフーはソフトバンクの財布だ」と書くほどでした。

D ケータイ事業は今、ドコモやKDDIとのキャッシュバック競争に陥っているため、手元に現金が必要【1】だったとの見方もありますね。

A もうひとつの理由として、電波割り当てを有利にするためとの見方もあります。イー・アクセスはソフトバンクと一体に見られているため、イー・アクセス単体で新たな電波を割り当てられる見込みは小さい。そこでヤフーの子会社とすることで、少しでもソフトバンク本体と距離があるように見せて、電波割り当てを有利にしたい【2】のでしょう。

D さらにいわれているのが、イー・アクセスの現社長で、新会社の社長に就任予定のエリック・ガン氏【3】の影響力を削ぐことです。ガン氏は、千本倖生会長と二人三脚で、創業以来イー・アクセスを育ててきた実績がある。しかしその分アクの強い人物でもあり、孫社長と仲良くやっていけるとは誰も思っていません。

A ところでイー・アクセス買収をめぐって争ったソフトバンクとKDDIですが、総務省の通信政策の見直しについては仲良く並んで記者会見をしていて、思わず笑ってしまいました(笑)。

C 総務省が競争政策の見直しの検討を始めた件ですね。要は、NTTに対する規制を解除するかどうかという問題。85年までは電電公社だったNTTはかつて電話事業を独占していたため、民営化時に厳しい制限を課せられました。例えばドコモとNTT東日本は、ケータイと光ファイバーの割引セット販売といった、NTTグループ企業内での連携ができません。その規制を見直すことを総務省が考え始めたため、ソフトバンクとKDDIが反対の意見書を総務省に提出したというわけ。

B NTTは官僚的だとずっといわれていましたが、最近は特に現場の社員の意識は変わってきていますからね。その一方でKDDIは、いまだに組織が硬直化している印象です。KDDIの母体となった国際電電は、旧電電公社から国際電話部門を分離させた会社。だから内部には、NTT以上に保守的な部分が残っているんですよ。田中社長もそのことをわかっていて、だからこそ時間を稼ぐためにも、今回のNTTへの規制見直しはなにがなんでも妨げたいんでしょう。

A 実は、いまいちばん落ち目なのがKDDIですからね。ニュースでも話題になった、ナンバーポータビリティ契約者に対する高額キャッシュバックも、いちばん予算が小さかったのがKDDIで、逆にいちばん多かったのがドコモ。その結果3月の契約数は、ドコモ、ソフトバンク、KDDIという順番になった。

D NTTへの規制が緩和されたとしたら、ソフトバンクはともかくKDDIは厳しいでしょうね。もしかしたら、KDDIがソフトバンクに買収される可能性だってある。

B 政治家や総務省の中にもそういうふうに考える人はいそうですね。孫さんも本当にそれを狙っていたりして(笑)。

(構成/三森黒介)

【1】現金が必要
ソフトバンクは、06年のボーダフォン買収時の巨額な借入金が足かせとなって、しばらく積極的な投資ができなかったという苦い思い出がある。今ではだいぶ状況は改善されたが、それでも手元資金に余裕があるわけではないのである。

【2】電波割り当てを有利にしたい
総務省は今年、次世代の通信方式である「LTE-Advanced」のために3・5GHz帯の新たな電波割り当てを予定している。現状ではドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に平等に割り当てられる見込みだったが、そこにワイモバイルが食い込む可能性が出てきた。ソフトバンクはヤフーの株式を40%強しか持っていないため、「連結対象だけど完全子会社ではない」という言い訳が一応成り立つのである。

【3】エリック・ガン氏
千本倖生会長は、イー・アクセスをソフトバンクが買収する際、KDDIとも交渉して価格つり上げを図るほどの豪腕の持ち主。孫社長にとっては目の上のたんこぶにもなりかねなかった人物なのだが、タイミングよく引退を決意してくれた。となると、残るガン氏の排除も時間の問題ではないかと見る向きは多い。

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