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誤送信されたマニュアル……家宅捜索のノバルティス「家宅捜索対応」の実態

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郷原信郎『検察崩壊 失われた正義』(毎日新聞社)

「会社の方針として、ずっと検察の捜査が入った事実を認めないでいくのかなど、後で今後のことについてご相談したいと思います」

 これは、2月19日に東京地検特捜部による家宅捜索を受けた製薬大手ノバルティスの日本法人の関係者の間でやり取りされたメールの一部だ。驚くべきことに、19日、筆者の手元にこのメールが誤送信されて送付されてきたのだ。

 東京地検特捜部は、同社が販売元となっている高血圧治療薬ディオバンの効能を調べた京都府立医大や東京慈恵医大の臨床研究で不正なデータ操作があったことを知りながら、両大学の論文を広告に使ったとして、薬事法違反容疑で強制捜査に乗り出した。

 メールは、同社の関係者の間で、東京地検特捜部の家宅捜索に対して、どのような広報対応を行うのかについて関係者の間で検討が行われた際の交わされたもので、そのやりとりがチェーン・メールとなり、「東京地検の本社捜索に対して」とする資料が添付されている。その一部を明らかにしよう。

「既に、検察官とマスコミ対応方針を協議し、その方針とも合致したメディア向けQ&AをAさん(仮名)が用意してくださっていますので、顧客の方に対しても若干のアレンジは必要かもしれませんが、基本的には統一的な対応を採るのが良いと思います(東京地検との関係でもそれが良いと思います。)」と、マスコミ対応方針を検察官と協議したことが述べられた一文が書かれている。

 この結果の基本ステートメントとして、

(1)個別の捜査内容については申し訳ありませんが、弊社からの回答は差し控えさせてください。(刑事事件のため捜査に支障をきたす恐れもあることから、個別の事案については、回答できません)

(2)弊社は一連の事案について極めて重く受け止めており、捜査に全面的に協力して参る所存です。

(3)このたびは、患者さま、ご家族、医療従事者の皆さま、および国民の皆さまに大変ご心配とご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます

――以上を同社の共通した見解として共有していくことが述べられている。

 また、個別の質問に対する回答については、「個別の捜査内容については申し訳ありませんが、弊社からの回答は差し控えさせてください。」という回答となっている。

 そして、こうしたやり取りの結果、先の「東京地検の本社捜索に対して」という対応資料がまとめられ、これがメールに添付されていた。

 しかし、この対応資料の内容は、基本ステートメントとは違っている。<基本トーク>というページでは、顧客から問い合わせがあった場合にのみ回答するということで、「先生、お騒がせして誠に申し訳ありません。報道の通り、昨日、誇大広告の容疑で東京地検特捜部の捜索を受けました。弊社は、今回の件を非常に重く受け止め、継続してあらゆる調査に全面的に協力して参ります。」と書かれている。これで分かるように、“顧客”を“先生”と呼んでいる点から、顧客とは医者を指しているのだろう。

 また、Q&Aでは、

(1)Q:何の疑いで本社に捜索が入ったのか?
A:ディオバン医師主導臨床研究に関連して、薬事法の虚偽・誇大広告の容疑と聞いています。

(2)Q:本社に捜索が入ったということは、厚生労働省の告発を検察は受理したということか?
A:その点については、わかりません。

(3)Q:捜索を受けての会社の対応は?
A:弊社はこの事態を深刻に極めて重く受け止めており、これまでと同様に今後も当局に全面的に協力して参る所存です。また、再発防止策を徹底し、信頼回復に全力で努めて参ります。

(4)Q:いつ頃、結論が出るのか? 今後、どのように進んでいくのか?
A:申し訳ありません。弊社は、今後の展開についてコメントできる立場にありません。

――というように、基本ステートメントから踏み込んだ内容のものとなっている。

 誤送信により入手したものであるが、その内容はマスコミ対応について検察官と協議を行っていることが明らかになっており、また、東京地検特捜部が捜査に入ったことを社として明らかにするのか、しないのかなどを検討していた事実が明らかになるなど、驚きの内容だ。

(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

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