サイゾーpremium  > 連載  > 神保哲生×宮台真司「マル激 TALK ON DEMAND」  > 【連載】「マル激 TALK ON DEMAND」第74回
連載
神保哲生×宮台真司「マル激 TALK ON DEMAND」 第74回

水道事業民営化も騒がれる”水輸入国”日本の課題

+お気に入りに追加

ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

[今月のゲスト]
橋本淳司(はしもと・じゅんじ)[ジャーナリスト]

1303_az_11.jpg
橋本淳司氏の著書『水をめぐる争い』

 近年、水資源の問題に注目が集まっている。貴重な資源である水(特に飲用可能な淡水)をめぐって、国際的な紛争や水資源の争奪が、すでに世界各地で起こっているのだ。今回は、ジャーナリストの橋本淳司氏の話から、水問題についての世界情勢や日本の現状など、さまざまな側面を見ていく。

神保 今年のマル激では、水資源の問題を継続的に取り上げていきたいと考えています。今回は第一回ということで、入門編として、世界中の水の問題を取材されているジャーナリストの橋本淳司さんをゲストにお迎えしました。

 日本には「水に流す」「水掛け論」「水入りの勝負」など、水の入った言葉がいくつもありますが、その割にはわれわれ日本人の水問題に対する意識は必ずしも高くないようです。

宮台 江戸は運河の街だったし、さらに言えば水道の街でした。徳川幕府は刀狩りをするかわりに、各藩に水利や灌漑や港湾の公共事業を徹底させました。当時においては水が非常に重要なものとして扱われ、我々が水に悩むことがないように工夫されてきたし、維新以降もうまく継承されてきたのですが、その分今日の我々は水の不足に悩むのがリアルではなくなりました。そうした歴史的な経緯もあって、昨今の日本人は水が存在することの「当たり前でなさ」に自覚的ではないのだと思います。

橋本 「水に流す」という言葉の例が出ましたが、これは日本の水の状況をよく表している言葉です。例えば、目の前の川にモノを落とすと、あっという間に流れていくし、豪雨の土砂などで川の水が汚れても翌日にはきれいに流れてしまう。日本列島の断面は脊梁山脈(分水嶺となる山脈)を中心として三角形になっており、山の頂点から海までの距離が非常に短い。そのため、たくさん雨が降っても、急斜面をものすごいスピードで流れていくのです。

 その点、ヨーロッパの川を見てみると、ドナウ川やライン川の流れはゆるやかで、冬には凍るほど。「水に流す」という言葉は、「水に流せる」ほど川に水量と勢いがある、独特の地形や風土を表した言葉だといえます。

神保 なるほど。水を含んだ表現や格言にも、日本独特の水事情が関係しているのですね。

橋本 例えば学校で講演すると、国語に社会、理科や算数まで、水を通して、あらゆる教科につながる話ができます。

 それほど多岐にわたってテーマにできる問題にもかかわらず、水を総合的・横断的に学ぶ学問はない。同様に、国という単位で考えても、水は専門的なカテゴリーが多数に分かれており、日本には水を全体的に統括する省庁がありません。河川は国土交通省が管理し、水道は厚生労働省が管理している。このように専門化することにはメリットもありますが、それぞれのセクションにブリッジがかかっていない。そのため、予期せぬ問題に対応できなかったり、水にかかわる利権争いでにらみ合いになる、というデメリットがあります。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2019年9月号

戦争と平和

戦争と平和
    • 平和を願った【ジャニー喜多川】の戦後史
    • 【スピルバーグ映画】が訴える戦争
    • アメリカの【アトミック・カルチャー】
    • 【PTSDになった日本兵】の悲しき境遇
    • 【BTSDアメリカ兵】を描いた傑作映画
    • 米軍では反発も…【LGBT自衛隊員】の憂鬱
    • 戦争を金に!【トランプ】の魂胆
    • ドラッグ、殺人【米ラッパー】の司法戦争
    • アイドルが歌う【反戦歌】と音楽業界
    • 【激戦地区】の異文化と気候の地政学
    • 【映画監督・塚本晋也】ベトナム戦争映画のトラウマの意義
    • 【映画監督・想田和弘】GoProで撮影された映画で観客が失神
    • 【映画監督・宮崎大祐】戦争の記憶を掘り起こす異常な暴力映像
    • 【ラッパー・Kダブシャイン】禁断のアメリカ史を描いたフィルムメーカー
    • 【イスラーム映画祭主宰・藤本高之】中東紛争に肉薄した3作品
    • 卍とハーケンクロイツ【ナチスと仏教】の結びつき
    • 国防としての【サイバーセキュリティ】

竹内渉、究極の"美尻"撮

竹内渉、究極の
    • 【竹内渉】が魅せた色香と素顔

NEWS SOURCE

    • 【関ジャニ錦戸】退所報道の舞台裏
    • 【ソニー】音楽ビジネス大改革の裏側
    • 【秋元司・内閣府副大臣】の疑惑とは

インタビュー

    • 【上原実矩】──"年金"で女優業に目覚める !?
    • 【田川隼嗣】──18歳が月9の現場で武者震い
    • 【釈迦坊主】──元ホストラッパーの光と闇

連載

    • 【RaMu】二郎デビューしたんです。
    • 【川上愛】スパイに間違えられたモデル
    • 【菜々子】が一番大事
    • 【動画メディア】の未来と情報発信のあり方
    • 【萱野稔人】人間は"教育"によって生かされている(後)
    • 高須基仁の/【テレビ】はもう終わった
    • 盆踊りに【使徒】襲来
    • 中国大富豪たちの【ポッドキャスト】
    • 【RIZE】逮捕で考える薬物とロック
    • 町山智浩/【おしえて!ドクター・ルース】90歳のセックス・セラピスト
    • ポピュリズム政策【MMT】は日本経済の救世主か?
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」
    • 笹 公人「念力事報」/帝国の翳り
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ博物館」
    • 稲田豊史/マンガ『1122』ソリューションとしての不倫
    • アッシュ・ハドソンの「アングラ見聞録」
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 伊賀の里でビールを仕込む【忍者ブルワー】見参!
    • 幽霊、新しい大衆はもう猿を見ない。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』