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第1特集
ペット業界にうごめく"闇の勢力"とは?

ワシントン条約は意味なし!? "違法動物"がこんなに日本に!!【1】

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 ワシントン条約で商取引が禁止されているにもかかわらず、日本国内に密輸入されている動物はこんなにいた!! ホシガメ、カワウソ、スローロリス、サンゴ等々、税関をスルーするそのやり口を動物輸入の専門家が暴露する!!

 動物保護・環境保護が盛んに叫ばれる昨今、動物の商取引も、年々規制が厳しくなっているという。しかし、それでも法の目をかいくぐり、闇で取引されている密輸動物も日本には多い。動物の輸入・卸売会社の大手「レップジャパン」社長であり、動物の商取引に精通する白輪剛史氏に、その現状について聞いた。

「動物の商取引において闇取引といえば、その対象は主に、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で輸出入が規制されている動物です。ワシントン条約では3つの附属書で動植物が分類されているのですが、そのうち附属書リストI・IIに記載されている動物が狙われますね。日本の場合は、タイやインドネシアからペット用小型ザルやカメ類などが多く密輸入されています。それとは別に、日本国内で天然記念物やその他国内法で規制されている動物も、秘密裏に取引されていますね」

 ワシントン条約の附属書Iでは、パンダやゴリラ、オラウータン、チンパンジーなど絶滅危惧種約900種がリストアップされており、基本的に商業目的での国際取引が禁止されている。
日本では、国内で繁殖された個体のみ取引可能だが、それでも、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づき、環境大臣が発行した「登録票」がなければ国内取引不可と定められている。

 附属書IIでは、リクガメ類、サル類、イグアナ、ラッコなど約3万2500種がリストアップされているが、これらは絶滅の危機に瀕しているわけではない。単に個体数が多くて世界的に取引が盛んなため、規制されているだけだ。商業目的の国際取引を行うには、輸出国の輸出許可証が必要となる。

 附属書Iの動物の密売買・譲渡が明るみになった場合、日本では上述した「種の保存法」違反で、懲役1年以内または100万円以下の罰金などが科せられる。しかし、附属書IIの動植物に関しては、一度国内に入れさえすれば、あとは規制するすべがない。そのため、附属書IIの動物のほうが、より闇取引されやすいのだという。

キャリーバッグで手荷物として密輸

 では、ワシントン条約で規制された動物は、実際にどのように日本に持ち込まれ、消費者の手に渡るのか?

「現地の"キャッチャー"が捕まえた個体が、ブローカーから輸出業者に。その輸出業者から日本の密輸入業者の手に渡って、小売店に流れるケースがほとんどですね。日本の密輸入業者は少なくとも7グループで、いずれも法人ではなく、個人。手口としては、手荷物として持ち込むのが一般的です」

 そのやり口は、実に単純明快。バッグの中に動物を入れ、機内預け荷物として預けてしまうのだという。

「無事日本に着いたら、空港で税関審査がありますよね。そこで捕まる密輸者の逮捕要件は、虚偽の申告・不申告による関税法違反と、外国為替及び外国貿易法違反です。たとえばワシントン条約附属書IIに記載のコツメカワウソを入国させようとするとき、税関で『コツメカワウソを持っています』と正直に言えば、ちゃんと申告していることになり、逮捕はされない。注意を受け、その動物を放棄しておしまいです。でも密輸者は国内に入れようとしているわけで、当然『申告するものはない』と嘘をつく。それがバレれば、虚偽の申告・不申告で捕まるんですね」

 中には、輸出入における規制のない動物が多数入ったバッグに規制動物を隠して税関審査を通過する、巧妙な密輸者もいるそう。また、一般的に知られていないような動物であれば、名前を偽って審査をパスできるこも。

「麻薬や武器、ブランド品など、税関職員がチェックすべきものは多岐にわたるため、すべての規制動物の名前と外見を判別することは不可能に近いんです。職員の方たちは一生懸命やっていますけど、それが現状なんです」

 密輸動物でも、店頭に並んでしまえば、それが密輸されたものかどうかを確かめるすべはない。種の保存法で取り締まることができるワシントン条約附属書Iの動物でも、それは同じだ。

「附属書Iの動物でも、単純所持なら種の保存法違反にはなりません。それに、種の保存法違反の時効が3年ですし、チンパンジーを所有しているのが見つかったとしても、『4年前から飼っています』と言ってしまえば、警察はそれ以上突っ込めないんですよ!」

 こう熱弁する白輪氏本人も実は、種の保存法違反で"塀の中の人"になった経験を持つ。05年、ワシントン条約附属書Ⅰのホウシャガメとガビアルモドキ(ワニ)を密輸業者から譲り受け、「自分で繁殖させた、国内で生まれた個体」と偽り、環境大臣発行の登録票を取得してしまったのだ。今は深く反省する白輪氏に、規制動物の密輸撲滅のための対策を尋ねてみた。

「"ワシントン条約附属書Ⅰの動物はすべて、環境大臣発行の登録票がなければ所有不可"とか、単純所持を完全アウトにすればいいと思います。その上で、附属書Ⅱの動物も登録制にする。ただ、そこまでやる人員も予算もないのが現実。正規のルートで入ってきたか疑わしい個体にも登録票を発行するのは、環境省が良しとしませんし。だったら、附属書Ⅱの動物も、せめて売買目的で所有している人には登録票を必須にしたほうがいいと思いますね」

 成田空港において08年にワシントン条約違反で摘発されたものの数量は、341。これは氷山の一角であり、動物の闇取引は後を絶たない。野放し状態の密輸業者を取り締まる手立てはないものだろうか?
(構成=遠藤麻衣)

白輪剛史(しらわ・つよし)
1969年、静岡県生まれ。トカゲ好きが高じて世界中を旅するうち、動物の商取引に興味を持ち、95年、爬虫類・両生類を主に扱う輸出入・卸売会社「レップジャパン」を設立。07年、野生動物の値段や取引について赤裸々に語った著書『動物の値段』(ロコモーションパブリッシング刊)が話題を呼んだ。今年12月には、同書の文庫版が角川書店より発売予定。


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