――「Zoo Rock」をはじめ「IN THE BOX」「どうってことねぇ」など時代を象徴するヒット曲を持つラッパーがさらけ出した内面性
(写真/西村 満)
楽曲に刻まれる「誰がやべーかわかってんだろ」のシグネチャーで広く知られ、ストリート・アルバム『STREET KNOWLEDGE』(06年)で登場以降、東京を代表するラッパーのひとりとして活躍するSIMON。本業のかたわら、LDH所属アーティストやヒップホップを題材としたメディアミックス・プロジェクト「Paradox Live」のラップ・ディレクションを手がけ、またK-POPアーティストの日本語でリリースされるラップパートの日本語詞を担当するなど活躍の場を広げてきた。そんな彼が前作『TRY』(21年)以来となるフルサイズのアルバム『IDENTIDAD』を完成させた。しかし、今作に至るまでには数々の葛藤に苦しめられたと話す。1982年生まれの彼を悩ませた呪縛とはいったいなんだったのか。
「改めて自分のラッパーとしてのアイデンティティを考えてみたんです。これまで間違いないクオリティで曲を出せてはいたけど、自分の内面性をリリックに落とし込むことはほとんどしてこなかったんです。ボリビアで生まれて日本で育ち、それなりに特異な環境で育ったんですけど、ただただヒップホップの曲としてのかっこよさだけを追求してきたというか。若いときはノリで続けられても、こうして40代になって、いつしか自分の中の悩みのひとつになっていたんです」