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第1特集
サイトは海外へと移り、問題は国際化

海賊版の被害は年間1兆円以上! 深刻化する「漫画村問題」のその後

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――現在のマンガ業界を語るうえで無視できない問題のひとつが、ネットで“タダ読み”できてしまう海賊版マンガサイトの存在だろう。2019年の「漫画村」運営者逮捕は、あらゆるメディアで大きく取り上げられた。その後、大きな話題になることは減ったが、事態は深刻化しているという。

1兆19億円――。

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いまだなくならない違法マンガサイトの一例。

これは、2021年の1年間に海賊版マンガサイトで“タダ読み”された作品の被害額の推計だ(出版社などが作る一般社団法人「ABJ」の調査より)。

前年の金額は約2100億円だったため、被害は1年で約4.8倍に急拡大している。そして1兆19億円という数字は、20年の正規のマンガ市場6126億円(出版科学研究所調べ)の売り上げの約1.6倍もの規模だ。

なおこの被害額は、アクセス数上位10のオンラインリーディング型サイトに限ったもの。違法なマンガアプリや、パソコン等にデータを取り込むダウンロード型サイトの被害額も集計には含まれておらず、実際の金額はさらに大きくなる。

「漫画村」運営者の逮捕後も、被害が拡大しているのはなぜなのか。莫大なPVから生まれる収益の流れはどうなっているのか。またこの状況に対して、出版社や政府はどのような対策を行っているのか。業界関係者の話から、その真相に迫ってみたい。

まず、海賊版マンガサイトの収益構造や、その過程で関わっている企業を確認しながら、漫画村の登場前後からの流れを確認していこう。

漫画村の運営者の星野ロミ氏は、出所後に漫画村の収益について、「俺が手にしたので何億円くらい」と、億単位の金額を自身が得たことを明かしている。漫画村のような海賊版マンガサイトの収益源は広告で、広告主→広告代理店→運営者という流れで金銭が渡ることになるが、当時の業界を知る広告代理店社員は「漫画村では1日2000万円程度の広告予算が動いていたと聞く」と明かす。

「海賊版マンガサイトの広告単価は一般のサイトの数十分~百分の1程度と激安です。にも関わらず大きな収益があったのは、それだけ莫大なPVがあったためです」(広告代理店社員)

しかしこれが違法であるのは言うまでもない。広告代理店側もその点は認識していたため、実際に出稿する代理店は限られていた。

「アダルト広告専業の代理店や、出会い系サイトの中でもサクラしかいない〝出会えない系サイト〟を扱うグレーな企業などですね。また当時はクライアント側も『広告がどんなサイトに出ているか』という出面に無頓着だったため、代理店では費用対効果だけを重視して、漫画村等に出稿するケースがありました」(広告代理店社員)

ただ現在は、海賊版マンガサイトの広告を扱う代理店は「日本にはほぼないはず」とのこと。どのタイミングで撤退が始まったのか。

「私がきっかけと感じたのは、ウェブメディアの『ねとらぼ』が漫画村等に広告を提供している代理店を名指しして、責任を追及する記事を出したこと。社名が広く報道されれば信用問題に深く関わるため、まともな代理店はそこで手を引きました。なお、広告を出している代理店はサイトのタグを見ればわかるため、そうしたニュースが出てきた時点で、各社は急いでタグを外していましたね」(広告代理店社員)

国内の広告代理店が手を引いた一方、冒頭に書いたように、海賊版マンガサイトの被害額は19年の漫画村の閉鎖以降も増加。新たな海賊版マンガサイトの乱立は続いてきた。

漫画村の運営者を特定した弁護士で、その後も海賊版対策に積極的に取り組んでいる中島博之氏は、問題の背景を次のように話す。

「漫画村の摘発以降は、22年7月に当時の代表的な海賊版マンガサイト『漫画BANK』の運営者が摘発されるまで、約3年間、大きな摘発事例がありませんでした。そしてコロナ禍による巣ごもり需要も後押しし、海賊版マンガサイトのPVは増加。『漫画BANK』が閉鎖となる直前の2021年10月には、上位10サイトの月間合計アクセス数が4億PVと、漫画村のあった当時の約4倍になっていました」

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