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大石始のマツリ・フューチャリズム【56】

五輪開催で揺れる盆踊り大会

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――21世紀型盆踊り・マツリの現在をあらゆる角度から紐解く!

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「完全屋外開催!」を謳い、8月14〜15日の2日間にわたり開催を決定した「中野駅前大盆踊り大会」。今年も“盆ジョヴィ”旋風は巻き起こるか。写真は19年開催時の様子。
(写真/大石慶子)

この原稿をまとめる6月下旬、東京五輪の開会まで1カ月を切った。「いよいよ」というかなんというか、ここまでくると新型コロナウイルスの感染拡大のないまま、無事に開催されることだけを祈っている人も少なくないだろう。

当連載でも五輪に向けた日本各地の盆踊りや祭りの動きを取り上げてきたが、都内の盆踊り・祭り団体の中には、五輪に振り回されてきたところも多い。五輪会場に近い地域では、早い段階で盆踊りの開催を断念せざるを得なかったところもあったと聞く。そこにコロナという予想だにしなかった混乱まで持ち込まれたことで、都心ではどの町内会や自治会、商店街も盆踊りどころではないというのが正直な気持ちだろう。

「ひょっとしたら開催できるんじゃないか?」と中止・延期をギリギリまで表明せずに引っ張っていた盆踊り団体も、6月に入ると次々に中止を発表。その中でも盆踊り愛好家たちからひときわ大きな落胆の声が上がったのが、日本三大盆踊りのひとつに数えられる郡上おどり(岐阜県郡上市八幡町)が、昨年に続いて開催断念を発表したことだった。

郡上は1945年8月15日にも非公式で踊ったという踊り狂いの地である。ひょっとしたらこの2021年夏は郡上おどりを強行するのではないかと個人的に思っていたが、さすがに難しかったようだ。郡上がダメなら、ほかのところはなおさらダメだろう。盆踊り界隈は、そんなあきらめムードに包み込まれた。

6月11日に行われた郡上おどり運営委員会の記者会見では、日置敏明郡上市長も登壇。昨年同様、少人数で踊る様子をネット配信するなど、完全な中止ではないことが発表され、仮にコロナの感染状況が緩和することがあれば、一夜だけでも開催する可能性もあるのだという。もしも実現されれば、間違いなく郡上おどりの歴史に残る一夜となるだろうが、見通しはそれほど明るくない。

また、都内はすでにほとんどの盆踊りが中止を発表している。「DA IBON」の愛称で知られる中野区大和町八幡神社例大祭も本年度の中止を発表しているが、7月25日には式典と奉納盆踊りの配信が予定されている。「DAIBON」のように配信を行う盆踊りは、都内ではむしろ稀。町内会や商店街主催の盆踊りの場合、そこまでして開催するならば中止にしたほうが楽というのが本音だろう。

そうした中で野外開催をすでに宣言しているのが、中野駅前大盆踊り大会だ。同イベントは昨年も屋内にて入場者数をかなり絞った盆踊り大会を成功させており、その手応えをもとに、今年の野外開催を決断したと思われる。今年も入場者数を限定するなど制限付きの開催ではあるものの、野外での開催を発表している盆踊り団体は現段階でほぼ皆無のため、この夏でも貴重なリアル盆踊りの場となる。一定のリスクを抱えた開催であることは間違いないが、少しでも早く例年通りの盆踊りの場を取り戻そうという実行委員会の熱意に胸を打たれる。

この中野駅前大盆踊り大会のように、感染症対策を徹底したうえで開催を決断する盆踊りも出てくるかもしれないが、結局は五輪次第。選手村でクラスターが起きるようなことがあれば、今年どころか来年の開催も危ういだろう。

その一方で、盆踊り・祭り愛好家は爆発寸前である。盆踊りのない昨年の夏は筆者としても苦痛だったが、同じ夏がもう一度繰り返されると思うと暗澹たる気持ちになる。ただし、仮に来夏に盆踊りが再開されるとなったら、各地で尋常じゃない盛り上がりを見せるはずだ。まさに盆踊り・祭りのセカンド・サマー・オブ・ラブである。

戦時中、各地の盆踊り・祭りは中止を余儀なくされたが、戦後になって再開すると、各地で大きな盛り上がりを見せた。徳島の阿波おどりなどは戦後になってから「連」と呼ばれる踊り団体が急増し、その中から阿波おどりのニューウェイヴともいえる新しい動きが生み出された。さらにさかのぼって明治初期、各地の盆踊りはさまざまな理由から開催が禁じられたが、締め付けも緩くなった大正期に入ると、少しずつ復活。その際、社会の変化に合わせた盆踊りや祭りのスタイルが模索された。

つまり、盆踊りはそのように中断と再開を繰り返しながら、新しい形を作り出してきたわけだ。この21年から22年は、まさに中断と再開の節目にあたる年だ。そうした意味でも、マツリ・フューチャリズムの時代が到来するのは、もしかしたらこれからなのかもしれない。

大石 始(おおいし・はじめ)
旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」のライター/編集者。07年より約1年間をかけ世界を一周、08年よりフリーのライター/編集者として活動。国内外の文化と伝統音楽、郷土芸能などに造詣が深い。著書に『ニッポン大音頭時代』(河出書房新社)、編著書に『大韓ロック探訪記』などがある。新刊『盆踊りの戦後史― 「ふるさと」の喪失と創造』(筑摩書房)が発売中。

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