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第1特集
音楽で犯罪を防げるのか!?【1】

プロを唸らすスキルで犯罪を抑止する――警察音楽隊の実情と技術を問う!

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――「音楽活動を通じ、犯罪被害防止や交通安全を呼びかける」ことを理念に掲げる警察音楽隊。「そもそも警察音楽隊って?」と思われる読者も多いだろう。本稿では音楽隊の広報や楽長の話をはじめ、元警察音楽隊経験者によるリアルな本音、さらにはプロのミュージシャンたちが警察音楽隊の演奏スキルをジャッジしつつ、音楽による犯罪抑止力の底力を検証する。

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(絵/ぱいせん)

 さかのぼること約90年前、神奈川県警察部警務課内で総員8名の音楽隊が発足されたのは1934年のこと。音楽の力によって犯罪行為を抑止し、地域住民とのコミュニケーションを図り、警察がより身近に感じられる――。これをモットーとする少数精鋭の音楽隊だったが、戦争に備える軍隊に警官も召集されたことから、1937年、発足からわずか約4年で解散となった。

 再始動したのは戦後すぐの1945年、大阪府警察音楽隊を皮切りに、各都道府県の警察内にも続々と音楽隊が再発足・新設される。現在、各署によって隊員人数に差はあれど、国内の警察において音楽隊が存在しない都道府県は皆無だ。しかし、全国まんべんなく存在する音楽隊であるのに、その認知度は計り知れないほど低い。「なぜ警察がそこまで音楽に力を注いでいるの?」という素朴な疑問や、「そもそも音楽隊があることを知らなかった」という意見まで散見される。であれば、警察音楽隊の内情をリサーチし、加えて隊員のパフォーマンス(演奏)がどれほどスキルフルなのかをプロのミュージシャンたちにジャッジしてもらい、素敵な理念を掲げる警察音楽隊の存在意義を徹底調査してみたい。

音楽経験があれば誰でもウェルカム

 まず、この数年で警察音楽隊の存在が一般層に響いた出来事があったとするならば、Official髭男dismのベーシスト・楢﨑誠氏が警察音楽隊の在籍経験を公表したことだろう。彼は島根県警察音楽隊でサックスを担当していた異色の経歴を持つわけだが、同時に「髭男のベースって、元警官だったの?」という疑問も浮上する。しかし、彼の場合は「一般公募によって採用された隊員」であり、警官としての職務に一切触れることはない。「現在は一般からの応募は受け付けておりません。これまでの長い歴史の中ではあったかもしれませんが、今年度はありません」と、北海道警察音楽隊の広報担当者の言葉からも明らかなように、各都道府県によって採用制度は異なり、一般から公募する県があれば、警察官採用試験に合格し、れっきとした警察職員にならないと入隊できない県もある。つまり楢﨑氏の場合は、一般公募による嘱託職員として音楽隊へ入隊していたということだ。

 一方で、警察職員からの音楽隊への入隊は、どのようなプロセスを踏むのか? 山形県警の元警官で音楽隊員でもあり、現在は女優として活動する田中杏樹氏に話を聞いた。

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