『福原愛』
「夫のモラハラ」「離婚協議」「不倫デート」報道で、これまでのクリーンなイメージが一転した元卓球選手の福原愛。デートは緊急事態宣言中だったが、石田純一みたいな叩かれ方をしていないところに、世間のコロナ対策への気の緩みを感じる。あと「泣き虫愛ちゃん」はとっくに卒業したが、この状況は素直に泣いてもいいと思う。
「もう全然いいわ。言うことねぇわ」
出だしから、呂布カルマがR-指定と「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日系)で戦った際に放った名パンチラインを持ち出すほどの投げ出しっぷりに、困惑した読者もいるだろう。
今回、卓球元日本代表・福原愛の騒動をとりあげるにあたり、既に散々な報道・意見が飛び交うなか、今さら私が何を語るべきか、ずっと悩んでいた。3月18日号の「週刊文春」(文藝春秋)では「夫・江宏傑のモラハラ疑惑」や「離婚協議中であること」、同じく3月18日号の「女性セブン」(小学館)では、年下男性とのデート現場を撮られ「不倫疑惑」が明るみに出た愛ちゃん。続報に継ぐ続報で、ついには本人が今回の騒動についてインタビューで答えることとなり、原稿執筆時点では枝葉の情報も続々と報じられ、もはや「息の長いコンテンツ」と化している。
「理想の幸せ家族」のイメージが強かっただけに、そのギャップに世間のどよめきが大きかったことは否めない。だが、結局のところ私が一番衝撃を受けたのは、愛ちゃんが歯医者に行くのについていった夫の江が、帰り道で「誘うような口の開け方をして。この売女!」と罵ったエピソードだ。
え!? その角度から怒るの? つーか、「そんな想像をする、お前の方がエロいだろ」という話である。「文春」に掲載されていたそのほかの言動は、「モラハラあるある」な面があるが、これは完全に規格外。もはや「エロい想像」というより、「エロの創造」である。なんだか、思わぬ性癖の扉を開けられたような気がして、戸惑っている私だ。関係ないけど「戸惑っている」と「マドモアゼル」ってちょっと似てない? 完全に冒頭の「フリースタイルダンジョン」に引っ張られてはいるが、クオリティはせいぜいジョイマンである。
しかしまあ、「文春」のモラハラ報道だけであれば、世間は完全に愛ちゃん擁護になっていただろう。しかし「セブン」の「不倫疑惑」報道が出たことにより、一気に非難寄りに傾いた感がある。まあ、2人の子どもと自身の母親を台湾に残して、日本で夫とは別の男性と2日間にわたりイチャイチャしているところを撮られたら、仕方ないのかもしれないが。
だが、なんとなく私は同情してしまう。異国の地で夫や義母、義姉からモラハラ的な扱いを受け続けていたのなら、そりゃ逃げだしたくもなるだろう。しかも、逃げた先では自分を受け止めてくれる優しい男が待っていた。ダメだとわかっていても、すがってしまうその気持ち、わからなくはない。
思い出してほしい。世間は彼女が「泣き虫愛ちゃん」と呼ばれていた幼少時代から、明石家さんまと卓球対決しているテレビ番組を観ては笑っていた。現役時代には、オリンピックでメダルを取るたびに「感動をありがとう」と涙を流した。結婚、引退後は「理想の家庭像」を見てはほっこりしていたのである。言い方は悪いが、これまで散々「福原愛」という人間を消費してきたのだ。彼女から受け取ってきたもののことを思えば、たった一度の過ちくらい、スルーしてあげてもいいじゃないかと思うのだ。
個人的には、「泣き虫愛ちゃん」の頃は、大人の都合に振り回されている感じがして、いまいちノレなかった。現役時代は、スポーツにまるで興味がなかったので特に感動もせず。結婚後は眩しすぎて、もはや「別世界の人」という認識で何の思いも抱いてこなかった。だが、今回の騒動を経た今、はじめて「人間臭さ」を感じ親近感が湧いている。関係ないけど、「親近感が湧く」と「リンキン・パーク」ってちょっと似てない?
まあこの後、愛ちゃんは地位も名誉もそして子どもすら失うことになる可能性もあるわけだ。だが、そうなったとしても「セブン」で報じられた彼との2日間は、後悔はしつつも彼女のなかで“尊い2日間”として強く思い出に残るのではないだろうか。たとえ2人が結ばれなかったとしても。
今回の騒動の人間模様を見ていると、ふとドラマ『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)を思い出す。あれも確か、石原さとみ演じる紗絵子がモラハラ夫から逃げだし、松本潤演じる爽太にすがっていた話ではなかったか。あのドラマは好評で、なんなら紗絵子の人気も高かったはず。ならば、今回の福原愛の件、みんな「失恋ショコラティエ」を見る気分で向き合ってみてはどうだろう。とかいってたら、「文春」の続報でデートしていた男は実は既婚者だったんだって。台無しだ! 全部台無しだ!! 関係ないけど、「失恋ショコラティエ」と「お後がよろしいようで」ってちょっと似てない? ねえ、似てない?
西国分寺哀(にしこくぶんじ・あい)
今回を機に「西国分寺愛」に改名しようか悩む40代独身男性。ただ、そうなると単なる「西国分寺が好きな人」と勘違いされそうなので、踏みとどまることにした。