――レッドブルの開発者は貧しい家の出ながら、エナドリ1本で大金持ちになったことで、タイの誇りとされてきた。しかし、その孫は国民全員から嫌われている?
不届き者のウォラユット・ユーウィッタヤーのご両親。(写真/Getty Images)
世界でもっとも売れているエナジードリンク「レッドブル」はもともとタイ発祥。同国で鎮痛剤などを販売していたチャリアオ・ユーウィッタヤーが、1978年に自ら開発し、製造・販売をはじめた栄養飲料「クラティン・デーン」が起源である。
クラティン・デーンはタイ語で「赤いガウル(牛)」を意味し、これに目をつけたのがオーストリア人のディートリッヒ・マテシッツ。両者は87年に合弁を通じてレッドブル社を設立。タイだけではなく欧米でも販売されることとなり、世界中で大ヒットしていく。
チャリアオは2012年に亡くなるが、栄養ドリンク1本で一家は財閥化し、米経済誌「Forbes」の試算で202億ドル(約2兆円近く)ともいわれている。
名実ともにユーウィッタヤー財閥は同国を代表する大富豪だが、一方で創業者の孫の評判はすこぶる悪い。
創業者のチャリアオが亡くなったのと同じく12年、首都バンコクでフェラーリを運転していた孫のウォラユット・ユーウィッタヤーは警察官をひき逃げし、死亡させたとみられている。
御曹司らしく、ウォラユットはまずは使用人を身代わりに出頭させる。その後も、なぜか検察も訴追を見送ったりと、典型的な特権階級に優しい動きを見せるが、彼が逮捕されないことに世間が批判の声を上げ始めると、17年にはプライベート・ジェットでまさかの国外逃亡。イギリスなどで豪遊生活を送っていたが、当然ながらそれもタイ国民の怒りを買うこととなり、去る10月4日にはインターポールによってもっとも緊急性の高い「レッド・ノーティス」という手配書が出されている。
プライベート・ジェットという翼を授けられた創業者の孫は、果たしてインターポールから逃げ切ることができるのだろうか。