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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第125回

『サバービコン 仮面を被った街』――トランプが掲げるグレートなアメリカは誰のためのものか?

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『サバービコン 仮面を被った街』

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1950年代のアメリカで、実際に起こった事件をモチーフに製作された、ジョージ・クルーニー監督最新作。白人限定を謳い話題となった、閑静な住宅街の一家に強盗が押し入り、母親が惨殺された。不審に思った息子ニッキーは父親を疑い、街で唯一の黒人一家を中心に事態は思わぬ方向へ向かう――。
監督/ジョージ・クルーニー、出演/マット・デイモン ジュリアン・ムーアほか。5月4日全国公開。


 1959年、サバービコンという名のニュータウンの建売住宅に住む少年ニッキー・ロッジ。父は優秀なサラリーマン(マット・デイモン)。母(ジュリアン・ムーア)は体が不自由で、同居する双子の姉マーガレットが世話をしている。そのロッジ家がある晩、2人組の強盗に襲われ、母は惨殺される。

 ところが、ニッキーは次第に気づく。父がマーガレットとデキてしまったので、邪魔になった母を、殺し屋を雇って殺させたのではないか、と。

 映画『サバービコン 仮面を被った街』は、『ノーカントリー』のコーエン兄弟が80年代に書いたシナリオで、普通の気弱な男が殺し屋を雇うというプロットは、コーエン兄弟の監督デビュー作『ブラッド・シンプル』や『ファーゴ』と共通する。当初、ジョージ・クルーニーが出演する予定だったが、コーエン兄弟がこの映画を監督するのを辞めたため、クルーニー自らが監督することになった。

 ただ、『サバービコン』には、もうひとつのプロットがある。ロッジ家の隣にマイヤーズという一家が引っ越してくる。彼らを見て住民たちは驚く。黒人の家族だったからだ。サバービコンのセールスポイントは「白人だけの街」だった。

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