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第1特集
「夜食テロ」なグルメマンガ【1】

“孤食” ”共食” ”キャラ化”etc……細分化するグルメマンガの奥の奥

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――グルメマンガの勢いが止まらない。2015年早々、嵐の櫻井翔主演のスペシャルドラマ『大使閣下の料理人』が放映され、1月8日からはBSで『ワカコ酒』のドラマも始まった。マンガの中の1ジャンルにすぎないグルメマンガから、次々に話題作が生まれるのはなぜか? 日々、増殖するグルメマンガの今を追った。

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シーズン4をむかえた『孤独のグルメ』(テレビ東京)と1月からスタートした『ワカコ酒』(BSジャパン)。

 昨年に引き続き今年も、グルメマンガの映像化が相次ぐ。人気マンガのドラマ化など、もはや珍しいことではないが、グルメマンガにおいてはこの動きが顕著だ。まず思い浮かぶのは『孤独のグルメ』【1】。2012年にスタートしたテレビドラマは、深夜枠としては異例の第4シーズンに突入。実在の店で作られた旨そうな飯と主演の松重豊の小気味いい食べっぷりとが相まって、テレビから映像が流れるやいなや、食欲を刺激されまくったツイッター民による「夜食テロ」ツイートがTLに並んだ。
 
 マスターと来店客が織り成す人間模様を描いた『深夜食堂』【2】も、09年に始まり第3シーズンを数えたテレビドラマが好評を博し、今月末には映画版が全国公開される。本作のドラマや映画の料理監修を務めるのは、フードスタイリストの飯島奈美氏。多くのテレビCMや映画『かもめ食堂』など、食事シーンが印象的な映像には常に名を連ねる人物が手掛けているだけあり、原作でも印象的だったたこさんウィンナーなどがドラマ版でも旨そうに再現されていた。
 
 これらの作品に登場する食事は圧倒的に庶民的なものが多い。誰も食べたことがない空想上の食べ物や高級食材とは違い、普段から食べ慣れている食事の映像には、食欲の経絡(実際にそんなものはありませんが)を一針で突く効果がある。また、重要な生活行為である"食事"に関して、大多数の人が一家言持っているもの。ゆえに、食がらみのネタはソーシャルメディアで拡散されやすく、情報が周知されやすい。また、予算が少ない深夜枠や地方局にとって、少ないロケ数で、あまり予算をかけずに視聴者の本能を刺激する映像が撮れるのは魅力的なのだろう。12年には久住昌之原作、水沢悦子作画『花のズボラ飯』(秋田書店)、13年には高瀬志帆『おとりよせ王子 飯田好実』、坂戸佐兵衛原作、旅井とり作画『めしばな刑事タチバナ』(いずれも徳間書店)が、深夜帯にテレビドラマ化されている。今年はとみれば、BSジャパンで『ワカコ酒』【3】がドラマ化。酒呑みの舌を持つ26歳のОL・村崎ワカコが、日本酒と鮭の皮などをしみじみと楽しむひとり酒仕様のショートコミックは、男女を問わず酒好きのハートをつかんでいる。

拡大するグルメ系コミックエッセイ市場

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まだまだある!2014年に刊行された主だったグルメマンガ!↑画像をクリックすると拡大します。

 作者自身の身の回りの出来事を綴った「コミックエッセイ」と呼ばれるジャンルにおいてもグルメマンガは増殖している。マンガ家にとって日々の食事は格好のネタの宝庫だし、それを求めるマーケットも拡大している。コミックエッセイの判型は一般的なコミックよりひと回り大きいA5判で、わかりやすいコマ割りのものが多い。身近な内容もさることながらページ数も140ページ前後と読みやすい。ゆえに、いわゆるマンガ読みではないライト層の読者も獲得しているのだ。それを受けて、売り場を拡大している書店も増えてきた。そんなコミックエッセイの中から特筆すべきグルメマンガをいくつか紹介してみたい。

 まずは、『ワカコ酒』でブレイク中の著者が、地元広島の美味しいものを紹介する『新久千映のまんぷく広島』。版元のKADOKAWAでは、地産地消を推し進める気運やご当地グルメブームを見据えてか、名古屋や仙台などエリアを限定したコミックエッセイを次々に刊行している。

 日本最大の魚市場・築地に特化した作品もある。おざわゆきの『築地まんぷく回遊記』(ぶんか社)だ。16年には場内市場の豊洲移転が決まっているが、場外市場は残り、新市場ができるなど引き続き要注目の築地。本作には、場内や場外の旨い物が155品も登場する。これだけの情報を詰め込んでも読みやすいのは、情報が複雑なストーリーの邪魔にならないコミックエッセイの形式だからだろう。

『はらぺこ万歳! 家ごはん、外ごはん、ときどき旅ごはん』【4】は、家族間で作り続けられている名もなきおかずといった日常の食事と、旅先で出会ったグルメが一度に味わえる内容になっている。特に印象深いのが、上京後、バイト先でまかないを作ってくれたシェフの味が忘れられず、シェフが故郷の青森で開いたレストランを訪ね、13年ぶりの再会を果たすエピソード。誰にでも青春の味と呼べるものがひとつやふたつはあると思うが、それを忘れない著者の人柄を思い、温かな気持ちになった。

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