サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > タブー破りの【アメリカ産アニメ】
第1特集
レーディングに厳しい欧米アニメの過激さ【1】

『サウスパーク』だけじゃない!! ムハンマドや天皇もネタにするタブー破りのアメリカ産アニメ

+お気に入りに追加

――クール・ジャパンという言葉も普及し、日本のアニメの海外進出も騒がれる一方で、今ひとつ目を向けられる機会が少ないのが海外のアニメだ。しかしアメリカで放送されるテレビアニメシリーズなどには、日本ではご法度の過激なネタが満載の作品が数多く存在している。

1411_taboo_01.jpg
『サウスパーク』のHPでは、過去に放映されたエピソードを視聴できる。

 海外アニメと聞いて、大半の人が最初に思い浮かべるのはディズニーやピクサーの作品群だろう。一方でアメリカには、日本にはあまりないタイプの過激なテレビアニメシリーズも多く存在する。アメリカを中心に世界のアニメを紹介するサイト『Read Me! GIRLS!』管理人のスカポン太氏は、その特徴を次のように語る。

「『カートゥーン』と呼ばれるアメリカのアニメは、ストーリー性を重視する日本のアニメと比較すると、コメディ色が強いものが多いですね。10分程度の作品でも、大量のギャグが詰め込まれていて、ものすごいスピードでストーリーが展開します。ギャグのネタも、落とし方も日本とは違うので、日本のアニメに食傷気味だった人でハマる人は一定数います」(スカポン太氏)

 本稿ではタブー破りの海外アニメについて知見を深めていきたいが、まずは日本でもお馴染みの『ザ・シンプソンズ』と『サウスパーク』から見ていこう。

 海外ドラマ評論家で、アメリカのテレビ事情に詳しい池田敏氏は「『ザ・シンプソンズ』はアメリカにおいて、アニメ=子どものためのものという考えを壊すきっかけになった作品だった」と語る。

「それまでのアメリカのテレビアニメは、学校が休みの土曜日の朝に集中的に放送されていて、内容も実際に子ども向けの内容でした。そんな中で『ザ・シンプソンズ』は、ゴールデンタイムのバラエティショーの1コーナーとして1987年にスタート。大人も楽しめるコメディアニメとして大きな成功を収め、現在も放送継続中という長寿番組になっています。日本でいえば『サザエさん』のような存在でしょうか」(池田氏)

 その内容は「それぞれダメ人間な家族がお互いを支え合う、家族愛に満ちたホームコメディ」(同)だが、社会問題や政治経済などを扱い、ときには過激なネタも飛び交う。特に有名なのが「Thirty Minutes Over Tokyo」というエピソード。日本旅行に出かけたシンプソンズ一家が相撲を観戦するのだが、主人公のホーマーがそこを訪れていた天皇陛下を投げ飛ばし、マワシの山に頭から突っ込む……というシーンがあるのだ。

「さすがにその回は日本では放送できなかったようですね(笑)。またホーマーの仕事が原子力発電所の安全検査官で、原発を笑いのネタにすることもあります。アメリカは日本ほど原発に神経質ではなかったようで、『なんだかよくわからないけど危ないんでしょ?』くらいのテンションで扱われていた印象ですね」(スカポン太氏)

 一方、内容の過激さでトップクラスといえるのが、田舎町に住む小学生4人が巻き起こす騒動を描くシリーズ『サウスパーク』だ。

「97年に放送開始された当初は、切り絵風の絵柄に『子どもの絵かよ!』という声も上がっていましたが、扱う内容はとにかく過激。政治から宗教まであらゆるものを笑いものにし、R指定で公開された『サウスパーク/無修正映画版』では、カナダとアメリカが戦争状態になり、サダム・フセインも登場させていました。描く内容はムチャクチャなのですが、そこには現在のアメリカを批判的に見つめる視点があり、社会批判的な作品としても非常に面白く作られています」(池田氏)

 風刺画を描いた人に殺害予告を寄せるムハンマドさえも、作品中に登場させているのだから恐ろしい。

「実際にインターネットの掲示板には、作者のトレイ・パーカーとマット・ストーンの殺害を示唆する脅迫文が掲載されましたが、2人は『殺しに来れるなら来てみろ!』的なノリでした(笑)。また有名人も実名で登場させて容赦なくネタにしますし、トム・クルーズなどは複数回にわたってしつこく小馬鹿にされています」(スカポン太氏)

 テレビで放送されるアニメが、そこまで過激な内容を扱えることの背景には、視聴可能な年齢を制限するレイティングの存在がある。

「アメリカの子ども向けのアニメでは、『銃撃戦でも実弾っぽく見えるものはダメ』『刃物を人に向けたらダメ』『オッパイが大きすぎるセクシーなキャラクターはダメ』など、さまざまな制限があるんです。一方で制限が外れた成人向けの作品では、その反動からか、なんでもアリの状態になってしまう(笑)。カートゥーン ネットワークというアニメ専門チャンネルには『Adult Swim』という深夜枠があり、そこで放送される番組はたいていヒドいです。テレビ局側も『年齢を制限してるんだから、あとは何が起ころうが、こっちの責任じゃない』という考えなのでしょう。『サウスパーク』はたびたび名誉毀損などの裁判沙汰を引き起こしていますが、それでも人気が高いので放送は継続されています」(同)

 ちなみに『サウスパーク』が視聴可能な年齢は17歳以上。「子どもが主役のアニメなのに子どもが見られないというおかしな状況(笑)」(池田氏)になっている。

「ただ、なんでもありに見えるアメリカの成人向けアニメでも、子どもへの暴力や、児童ポルノなどの描写は日本以上に厳しい。そのあたりの規制の厳しさはほかの国でも同様ですが、日本だけはその基準がガラパゴス化している印象があります」(同)

 なお『サウスパーク』の人気の要因には「キャラクター自体のかわいさも当然あるはず」とスカポン太氏は分析する。

「アニメファンにはキャラクターの絵柄から入る人も多いですからね。『サウスパーク』は過激な内容ながら、女性のファンもとても多い印象です。また、かわいいキャラがヒドい死に方やむごい行為をするのも、アニメならではの面白さだと思います」(スカポン太氏)

 そんな作品の典型例としてスカポン太氏が推すのが、『ハッピーツリーフレンズ』というフラッシュアニメ作品だ。

「キャラクターはぬいぐるみのようなカワイイ雰囲気なんですが、とにかく描写がグロい。『トムとジェリー』でもジェリーが切り刻まれる描写がありましたが、このアニメでは血が飛び散るだけでなく、腕がもげたり内臓が飛び散ったりするシーンも克明に描く。登場するキャラクターはほぼ全員がむごい死に方をするし、殺人鬼があらゆるキャラクターを皆殺しにする回もあります。ウェブアニメなのでテレビ以上に好き勝手にやっている印象で、日本にも熱心なファンがいる作品です」(同)

 かわいいキャラクターが下劣なことをする作品といえば、昨年ヒットした『テッド』という実写映画があるが、同作品の監督のセス・マクファーレンは『ファミリー・ガイ』という過激なアニメシリーズも手がけている。

「『ファミリー・ガイ』の内容のベースは『ザ・シンプソンズ』のようなホームコメディ。実際に比較されることも多いですが、下ネタのレベルでは『ザ・シンプソンズ』を圧倒しています。セックスに関するジョークもガンガン出てくるので、日本では放送されにくいでしょうね」(同)

 また、悪ガキ2人組が巻き起こす騒動を描く『ビーバス・アンド・バットヘッド』も日本のアニメにはないタイプの作品。「へろへろでヘタウマ系のダサい絵で、作品の雰囲気もローテンションなので、日本ではあまりウケないのも理解できる」(同)というが、内容自体は過激だ。

「作品中にネコを燃やす描写があり、それを真似する人が現れて訴訟沙汰になったこともありました。また日本でゲーム化された際にロンドンブーツ1号2号が吹き替えを担当したのですが、その内容に非難が殺到して、評価のチャンスを逃した部分もあります(笑)。また同じ製作者が手がける『キング・オブ・ザ・ヒル』という作品も、地方の中年たちのユルい日常を描く似たようなテイストで、こちらは13年間続く人気シリーズとなりました。アニメ的な派手なアクションもなく、大半が会話シーンのみなので、『果たしてアニメの意味があるのだろうか……?』と思ってしまう内容なんですが(笑)」(池田氏)

 その『キング・オブ・ザ・ヒル』は時事ネタやパロディも多く取り入れる作品だそうだが、「パロディが表現として認められているのもアメリカの特徴」とスカポン太氏。

1411_taboo_02.jpg
『ドローン・トゥギャザー』は版権に厳しい作品もネタに!

「他局のことも容赦なくネタにしますし、日本では『許可とってんのか?』と怒られるような、明らかにそっくりなキャラクターを平気で使ったりしますからね。そのパロディ路線を突き詰めた作品といえるのが『ドローン・トゥギャザー』。スーパーマン、ディズニーのプリンセス、ピカチュウなどにソックリなキャラが勢揃いするヒドい作品です。子ども向けアニメのキャラクターで人気の女性声優を使って、そのキャラクターのパロディを描きながら、レズシーンをやらせるという最低なこともしています」(スカポン太氏)

 また”アメリカの作品ならではの過激さ”という点では、人種問題を扱う作品も存在する。日本のアニメ専門チャンネルでも放送された『ブーンドックス』がそんな作品の一例だ。

「黒人の少年が主人公なんですが、人種差別ネタがバンバン出てくるんです。自分自身が黒人なのに『くそニガーめ!』みたいなヒドいセリフを吐くおじさんも出てきますね。この作品では黒人大統領という存在はネタでしかなかったのですが、放映後に実際にオバマが大統領になってしまったことも感慨深いです」(同)

 国内外のアニメに詳しく、本誌連載でもおなじみの丸屋九兵衛氏は、そのマンガ版を愛読していたという。

「00年頃に読んだ際、明らかに日本のオタク文化的なものを通過した絵柄で、黒人が黒人の世界を描いていることに『こういう作品が出てくる時代になったのか』と驚きましたね。また主要登場人物の3人が、『教会に通い、ソウルが好きな古いタイプの南部のおじいさん』『パブリック・エネミーやマルコムXが好きな頭でっかちな少年』『ギャングスタ的なストリート人生を歩む少年』と、黒人社会のステレオタイプ的な人格をそれぞれ代表しているのも面白い。日本のエンターテインメントは人種問題を扱うことに臆病だけど、こういうタイプの作品があれば面白いのにと思いますね」(丸屋氏)

インド版『巨人の星』はクリケットのアニメに

1411_taboo_03.jpg
左上から『ザ・シンプソンズ』『ハッピーツリーフレンズ』『キング・オブ・ザ・ヒル』『ファミリー・ガイ』のDVD。いずれも日本版が発売されている。

 さて、ここまでは日本でも視聴可能な過激な海外アニメを見てきたが、逆に、日本のアニメは海外でどのように受け入れられているのだろうか?

「アメリカでは『子ども向けに厳しい規制を受けた作品』と、『大人向けの、なんでもアリの作品』の二極化が進んだ中で、ティーン・エイジャーが見られる作品がスポッと抜けている状態でした。そこに入ってきたのが日本のアニメで、『ドラゴンボールZ』『ポケットモンスター』『遊戯王』『NARUTO』あたりは一定の人気を得ています」(スカポン太氏)
 一方で、アニメーション史の研究者で京都精華大学マンガ学部准教授の津堅信之氏は「大衆的な人気を得るには至っていない」と分析する。

「『ドラゴンボールZ』の戦闘シーン程度でもアメリカでは暴力的と判断されるため、大半の作品は深夜帯を中心にしか放送されていないのが現状です。そして問題をクリアしようと描写をカットしたり改変したりすると、マニアックなファンからは非難を浴びてしまう。インドで『巨人の星』が野球をクリケットに置き換えてリメイクされたことが話題になっていましたが、やはり国ごとに文化は違うため、日本向けに作ったアニメをそのまま輸出することは想像以上に難しいんです」(津堅氏)

 一方、思いがけない作品が人気を呼んだり、日本とは違う人気の序列が生まれることもある。丸屋氏によると、「日本では圧倒的な存在感の『機動戦士ガンダム』よりも『超時空要塞マクロス』のほうが海外でウケていたり、ロボットものでは『マジンガーZ』ではなく、それより人気の落ちる『UFOロボ グレンダイザー』がフランスで圧倒的な人気がある」とのこと。またスカポン太氏によると「アメリカでもガイナックスの人気は高いが、『新世紀エヴァンゲリオン』はそこまで火がつかず、(同じくガイナックスの)『フリクリ』のほうが今でも人気」なのだそう。

 無論、日本のアニメの海外進出が着実に勢いを増しているのも確か。

「『主人公が泥棒だなんてとんでもない』とアメリカでは厳しい目で見られていた『ルパン三世』も、やっと深夜の時間帯ですが放送が始まりました。『ドラえもん』も放送が始まっていますし、世界向けにアジャストできれば、日本のアニメはまだまだ広がると思います」(池田氏)

 津堅氏も「最初から海外のマーケットを意識した作品づくりを、積極的に行ってもいいのではないか」と語る。

「いわばハリウッド映画と同じようなつくり方ですね。そのような試みをして失敗している事例もいくつかありますが、日本のマーケットだけではアニメ産業も厳しくなるでしょうから」(同)

 日本で人気の作品を積極的に輸出することよりも、世界各国のアニメ文化を分析し、そこで人気を得やすいような作品をつくっていくことが、これからのクール・ジャパン戦略で本当に必要なことなのかもしれない。

(文/古澤誠一郎)

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...
この記事を購入※この記事だけを読みたい場合、noteから購入できます。

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ