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第1特集
アニメを取り巻くカネと人

市場は広がれど制作は楽にならず―― 5つの数字で読み解くアニメ業界最新事情

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――日本のコンテンツ産業の中で最も注目を集めるアニメ業界。果たして、この市場ではいったいどれほどのカネが動いているのか?

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【アニメ業界を読み解く5つの数字】

【1】市場の罠
[アニメ産業市場規模(広義)]1兆3721億円(13年日本動画協会発表)
■市場拡大すれども制作会社はブラックな理由がここに
この10年余りで産業市場(エンドユーザー売り上げ)は2000億円ほど拡大してきたが、00年代後半頃から1兆4000億円手前で足踏みが続いており、頭打ちの状態になっていることがうかがえる。そのなかで特徴的なのは、この5年ほどでパチンコ・パチスロ台の出荷高が順調に増加している点だ(08年1528億円→12年2272億円)。なお、この産業市場とは別に、12年の業界市場(すべての商業アニメ制作企業の売り上げ推定)は1725億円となっており、制作会社の売り上げをはるかに上回って関連ビジネスが収益を上げていることが歴然とする。

【2】劇場大入
[劇場アニメ興行収入合計額]470億円(13年日本動画協会発表)
■『アナ雪』でさらに伸びる!劇場アニメの上昇傾向
2013年の邦画界において、興行収入が10億円を超えた作品は34本。そのうち14本を劇場アニメが占めている。『風立ちぬ』(120.2億円)、『ONE PIECE FILM Z』(68.7億円)といった大作のほか、『魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』(20.8億円)、『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』 (10.4億円)のような深夜アニメ発の中規模ヒットも生まれた。結果、劇場版アニメが積み上げた興行収入の合計額は470億円に到達。さらに今年は洋画で『アナと雪の女王』もあり、映画産業におけるアニメの存在感は増す一方だ。

【3】テレビ復権
[テレビアニメ年間制作分数]11万1794分(13年日本動画協会発表)
■ピーク時に迫るか?深夜アニメが大幅増
テレビアニメ年間制作分数は、06年(『涼宮ハルヒの憂鬱』放映年)をピークにいったん減少傾向に入っていたが、10年から再び回復。昨年の11万1794分という数字は、ピーク時の06年、07年に次ぐ歴代3位となる。内訳としては、キッズアニメが微減し、深夜アニメが大幅増加。アニメが大人のものとなりつつある感覚は間違っていないようだ。

【4】売上爆死
[『キルミーベイベー』DVD1巻初週販売枚数]686枚(オリコン調べ)
■円盤商法激化で大爆死作品も誕生
DVDやBlu-ray(通称「円盤」)で制作費を回収するビジネスモデルが出来上がっているアニメ業界だが、最もファンが金を落とす深夜アニメの作品数増加もあり、1作品あたりの売り上げ枚数は下がり気味だ。中には初週販売本数が4桁に届かないものもあり、12年1月から放映された『キルミーベイベー』もそのひとつ。686枚という数字は視聴者に衝撃を与え、制作サイドも686枚のアイコン画像をツイッターで配布したり、関連イベントの客席数を686席にするなどネタにしていた。だがその後、今春クールの『悪魔のリドル』は395枚、『彼女がフラグをおられたら』は290枚という数字をたたき出している。686枚では、マシなほうだったといえそうだ。

【5】劣悪環境
[30代アニメーター平均年収]約213万円(09年日本アニメーター・演出協会調査)
■中韓から東南アジアへ、人件費カットで国内は苦境
09年に国内で初めて、アニメーターの生活実態をめぐる調査が行われた。結果出てきた数字は、20代平均年収が約110万円、30代が約213万円、テレビシリーズの監督をやっても時給換算で1412円……という衝撃的なものであった。この頃から人件費を減らすために中国・韓国へ下請けに出していたのが、今ではさらに安い東南アジアへと広がっており、国内では技術の空洞化が叫ばれている。だが、これといって打つ手がないのが現状だ。

 今年のエンタメ・コンテンツ界の話題といえば、なんといってもディズニーアニメ『アナと雪の女王』の大ヒットだろう。日本国内の歴代映画興行収入ランキングで3位に入り、その額は実に250億円を突破した。国内作品も、同じく今年の『STAND BY ME ドラえもん』が現時点で80億円を突破、昨年も『風立ちぬ』が120億円超、『ONE PIECE FILM Z』が68億円超と安定した数字を出している。さらに、こちらも昨年だが、『魔法少女まどか☆マギカ』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のような、深夜アニメに出自を持つ作品の劇場版が10億円を突破するなど、大作一辺倒ではないあたり、アニメファンの裾野の広がりも感じさせるようになっている。他ジャンルに比べ、アニメ業界は、動くカネの大きさではいまや日本のコンテンツ業界随一といっていいのではないだろうか。

 しかしアニメを制作している当事者たちがその恩恵を受けているかというと、必ずしもそうとはいえない。「アニメ制作会社はブラック企業」「アニメーターは奴隷」などという話はアニメファン以外にも広く知られるようになっており、実際、今夏には「ブラック企業大賞2014」に制作会社・A-1 Picturesがノミネートされてしまっている。『おおきく振りかぶって』や『黒執事』『宇宙兄弟』などの人気作を手がけてきた同社だが、2010年10月に当時28歳の元社員が自殺。在職当時の残業が、多い月で344時間以上、3カ月無休という激務であったことから、今年4月に労災認定された。

 徒弟制度に近い育成システムや、そもそも正社員登用がほとんどない勤務体系など、アニメ業界自体には構造的な問題も多い。それでもさらに人件費を削るために、中国・韓国のスタジオに下請けを発注してきた歴史がある。現在では両国の平均賃金が上がったことから、さらなるコストカットを求めて東南アジアに下請けを出すようにもなってきた。こうした状況が続けば、日本国内でまともなアニメーターが育たなくなることすら危惧されている。業界唯一といっていいほどアニメーターへの厚遇を行ってきたスタジオジブリも、ここにきて宮崎駿引退宣言に伴い、アニメーターの数を減らす可能性が囁かれるようになってきた。1兆円を超える市場規模を持つ産業としては、いささか足元がおぼつかない状況で走り続けていることは確かだろう。

 日本のアニメ界に、このままカネの雨は降り続けるのか? この産業の深淵を覗いてみよう。

(文/編集部)

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