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第1特集
【サイゾー発売日前特別先行公開】現代アート界のタブーとは?

【プレミア限定ロングver.】“会田誠×辛酸なめ子”現代アートは高尚なものじゃない!

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 8月19日発売のサイゾー9月号は「現代アート」大特集!タブーな表現に挑む新進気鋭のアーティスト紹介をはじめ現代アートの儲け方、はたまたタレント芸術家のお値打ち、現役美大生たちの本音などなど…ここでしか読めないアートの裏側に迫ります!
 本誌発売日に先駆けて今回は「会田誠×辛酸なめこ」の特別対談を先行公開!森美術館で行われた「天才でごめんなさい」展における抗議騒動の真相や、センセーショナルな作品を生み続ける会田氏が考える「タブーな表現」、はては女性の趣味まで……あますところなく現代アートの雄に迫りました!

――9月1日まで開催されている「瀬戸内国際芸術祭2013」の夏の会期に出展するため、現在香川県男木島に滞在し、制作を続けている美術家、会田誠。草間彌生、奈良美智らと並ぶ、日本を代表するアーティストのひとりだ。そんな会田氏に、現代美術界の現状と自身の活動について聞くべく、同氏が所属するミヅマアートギャラリーにかかわりが深い辛酸なめ子女史と共に、男木島に向かった―。

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(写真/田中まこと)

 日本の現代アート界を牽引する作家のひとりである会田誠は、ロリータやエログロ、戦争などのモチーフを多用するその作風から、一部では取り扱い注意作家とも呼ばれている人物だ。実際、2012年11月から13年3月まで東京・六本木の森美術館で行われた個展「天才でごめんなさい」では、「四肢切断された全裸の少女が首輪をされて微笑んでいる『犬』という連作をはじめ、性暴力性と性差別性に満ちた作品が多数展示され、女性の尊厳を傷つけている」と、「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」から抗議を受けた。そんな同氏とは18歳の時に出会い、何かと接点が多かったというコラムニストの辛酸なめ子。20年来、会田氏の作品を見てきたという彼女と共に、タブーを破り続ける会田氏の創作活動と、現代美術界の現状について本人を直撃した。

辛酸なめ子(以下、辛酸) 今日、こうして男木島で「瀬戸内国際芸術祭2013」(以下、瀬戸芸)の作品を見させていただいて、六本木の展覧会とはまったく環境が違うな、と思いました。会田さん、すっかり男木島に適応されていらっしゃいますよね。

会田誠(以下、会田) いやー、それはあまりできていないですよ。過疎の地域を活性化させるための芸術祭とか野外作品展とか、ホント苦手でしたからね。過去にも、青森の芸術祭に一度参加したことがあるくらいで。

辛酸 六本木にいる会田さんは近寄りがたい感じでしたけど、男木島にいると気さくに話しかけられるのかなぁ、という気もしました。

会田 六本木でだって気さくなつもりだったけどね(笑)。今、現代美術は二極化しているんですよ。大都市のギャラリーや立派な美術館で展示を行う都市型と、地方の広い土地や建物の中でやる、社会的に意義のある、何かを提言するような地方型の2つにね。比較的都市型志向の僕でも、時には何かの間違いで地方に呼ばれることがある。今回は、「昭和40年会」として一緒に参加している小沢剛、大岩オスカールらが、北川フラムさんという瀬戸芸のディレクターと仲が良くて。そのつながりで、僕も呼んでもらえたという感じなんですよ。まあ、僕はアトリエを持っていないので、もともとどこかに長期滞在して制作をするのが好きでしてね。だから、どうせ男木島でやるならひと夏いたいな、という思いもあって参加したんです。

辛酸 なるほど。島での活動は、気分転換にもなっているかもしれませんね。森美術館で行われた会田誠展「天才でごめんなさい」の際には、出展作品の内容をめぐりツイッターで炎上気味になったこともありましたけど……ここではツイッターの鳥アイコンが「バーカ」と言っている絵(写真参照)があったりして、何か発散されているみたいです。

会田 まあそれはあるね(笑)。電脳空間じゃなく、リアル空間で発散しよう、っていう。

辛酸 あの絵をまた、写真に撮ってツイッターで拡散する人がいないかと心配です。

会田 大丈夫でしょう。ネットは熱しやすく冷めやすいですから。

辛酸 でも、リアル空間でもPAPSから抗議されてましたよね?

会田 あの騒動は、最初から僕の出る幕はなかったんですよ。抗議したPAPS側も、「会田が下品な絵を描くのは表現の自由」だと言っていた。つまり、描くこと自体は勝手だと。ただ、「それを公共性の高い美術館でやるのはどうか?」という、美術館側へのクレームに的を絞っていたんです。

辛酸 展示した美術館側の責任問題になっていたんですね。

会田 そういうことです。森美術館に展示した作品は、そもそも美術館のような場所で展示されることを想定していない、学生時代から描きためてきたものを、たまたま展示してもらえたんです。公営の美術館だったら、教育委員会の目がありますから、展示してもらえないだろうな、と思う作品ばかりでした。それを、私営である森美術館が「どうぞ」と言ってくれたから、展示できたものでした。

辛酸 そうだったんですか。てっきり、ネットの攻撃、炎上と相まって悩まれていたのでは、と老婆心で案じておりました。

会田 悩みねえ……別になかったかな。鈍感力は高めなほうだし(笑)。ネットでの匿名の書き込みって、ただ炎上しているからやってくる暇人たちでしょう。彼らには「うるさい」の一言しかないですよ。まさに、ハエという漢字が入った「五月蠅い」と書きたいぐらい(笑)。体の不自由な人が僕の作品を見て傷ついたという話ならこちらも心が騒ぐけど、大多数は関係ないじゃないですか。

美術界の最大タブーも“ユダヤ”を描くこと?

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抗議対象になった作品。『犬』(雪月花のうち“雪”)/98年/パネル、和紙、岩顔料、アクリル絵具、ちぎり絵用の和紙/73×100cm/撮影:宮島径(C) AIDA Makoto,Courtesy Mizuma Art Gallery 

辛酸 会田さんには、天皇制や、ビン・ラディンを取り上げた作品もあります。こちらへの批判や抗議は大丈夫だったんですか?

会田 ビン・ラディンの時は、「アラーは冒涜してないよな、これ」と考えたりはしました。刺客を差し向けられるのは嫌だから。

辛酸 マホメットのスキャンダラスな小説を翻訳して暗殺された教授もいましたからね。

会田 だけど、政治的なものだとタブーはそんなにないんですよね。森美術館で展示した「戦争画RETURNS」は、「日本と韓国を対等に描くとはけしからん」とか、「韓国の女のほうが日本人より美人とはどういうことだ! 在日だろ会田!」なんてネトウヨから攻撃されるかと思ってたけど、みんな全然スルー。むしろ、なんの反応もなくて寂しいぐらいでしたよ。

辛酸 では、会田さんにとって、ご自身の作品の中で一番タブー感の強いものはどれなのでしょう?

会田 そうねえ。少年の・女子トイレの覗き見趣味・について書いた小説『青春と変態』(96年、ABC出版)は一番リスクが高かったかな。

辛酸 トイレを下から覗く描写、すっごくリアルでした。ずっと、ご本人の体験だと思っていたんですが……。

会田 いやいや、それはさすがにないですよ(苦笑)。

辛酸 では、ほかに現代アートでタブーに挑戦していると思う作品はありますか?

会田 日本のタブー破り作品のピークは5~10年ぐらい前で、最近はあまりタブーに挑戦するものはなくなりましたよね。ただ、・タブー破りといえば中国のアーティスト・という時期があったかな。

辛酸 中国ですか?

会田 「一人っ子政策」のせいか、中国では堕胎が横行しているんですよ。その胎児を買ってきて食べるっていうパフォーマンスをしたりとかね。あと、僕が北京に滞在していた時、近所に住んでいたパフォーマーは、肋骨の切除手術をわざと受けて、その抜いた骨をネックレスにしてたな。「胸がずきずき痛むんだ」とか、ニコニコ言うのを見て、「あ、こいつはキ×ガイだ」と思いました。

辛酸 は、激しいですね……中国人は。

会田 彼はコンクリに生き埋めになって、固まった後で割って出てくるパフォーマンスもやってたね。一応、あれにも政治的なメッセージがあったのかな、よく分からないけど。日本や欧米も、60~70年代にはラディカリズムの高揚があったでしょう。だけど、今は過激表現がやり尽されて穏健になってきているんですよ。中国をはじめとする新興国は、今まさにその時期なのでしょう。

辛酸 会田さんにも、まだまだラディカルな表現に期待したいところですが……ちなみに、これは美術界全体として、絶対触れられないというテーマはあるんですか?

会田 う~ん、ユダヤかな。

辛酸 え? フリーメーソン?

会田 いや、そんな陰謀論じゃないよ。戦後美術の中心はニューヨークだったでしょう? あの街って、ナチスの迫害を逃れて多くのユダヤ人が移住したこともあって、ユダヤ人の芸術関係者が多いんです。僕が個展をやった時のギャラリストもユダヤ人だったし。

辛酸 そういえば、ファッションの世界でも、ナチスを礼賛すると立場を失ってしまいますよね。ジョン・ガリアーノとか……。

会田 国際的に、ナチス賛美は難しいよね。天皇制を取り上げるのも難しいけど、日本で干されたとしても海外に行ける。世界で干されたらそうはいかない。

辛酸 海外というと……日本人のアーティストも、海外のアートフェアに出して売り出したい、という動きがありますよね。

会田 海外フェアね。僕はこれまで避けていたんだけど、この春、香港のバーゼルに行ってみたんですよ。あれはあれで悪いものじゃない。美術館やキュレーターが文脈を作って展示するだけが美術じゃないからね。ギャラリーの「売りたい」という欲望がごちゃごちゃと集まっているアートフェアも、それはそれで美術のひとつの現場なんだな、と思いました。

辛酸 確かに・欲望・ですね。若手アーティストがアートフェアを経て海外で売れる、というサクセスストーリーもあるんでしょうか。

会田 ないこともないと思うけど、そういう例は少ない。結局、いわゆるメジャーなものを扱っているギャラリーが勝ち組ですよ。草間彌生なんか、高いでしょ?

辛酸 リトグラフでも100万円以上するし、原画は5億5千万円で落札されたこともありますね。

会田 一方、新人はあまり売れてない。マーケットも保守的になっているのかな。

辛酸 アートの世界にも格差社会が……。インターナショナルに行ける人は、やはりごくわずかなんですね。

現代アートの立ち位置と映画へのコンプレックス

辛酸 村上隆さんが4月に公開された映画『めめめのくらげ』を作った時、「現代アートの世界は狭いが、映画のお客さんは目が肥えている」とコメントされていました。あれだけの立場の方でも、ほかのカルチャーにコンプレックスを抱いているものなんでしょうか。

会田 そりゃ、そうでしょう。エンターテインメントはやっぱり難しい。映画館を押さえたり製作費をかき集めたり、相当なリスクを背負うことになりますから。村上さんは果敢に挑んでますよ。僕も映画などのメジャーな舞台を夢見たりはするけど、ひるんでしまう。エンタメは怖くて近づけないジャンルですよ。

辛酸 会田さんも小説を出していましたし、カルチャーの枠を超えている印象がありますけど。

会田 僕は、アートから足を踏み外しがちだけど、メジャーカルチャーに行こうとはしませんよ。せいぜいアングラカルチャーでしょう。少数の愛好者が楽しむ「ガロ」(青林堂)の世界観。「週刊少年ジャンプ」(集英社)的な世界は志向しません。だけど、カルチャーの話をすると、アートという言葉は少々重さを感じることもあるかな。

辛酸 それはどういうことでしょう?

会田 アートとか芸術って、ほかのカルチャーより高尚だと思われているじゃないですか。でも、決して特別なものじゃないんですよ。それを、「アートのくせにエンタメよりしょぼいじゃないか」と言われてもね。しょぼいのは現代アートの宿命だから。ルーベンスや狩野派の時代なら、その工房の新しい絵画は、今で言うハリウッド映画の新作みたいなものだったでしょう。だけど、今は王様や殿様が巨大な予算を出してくれるわけじゃない。現代アートはひとりの作者と少数のギャラリスト、キュレーターという最小ユニットで作るもの。未完成でも、自由な実験ができるものなんです。それがなかなか、一般には伝わらないですね。

辛酸 今回の、男木島の学校作品も大掛かりなものではないですよね。童心に帰るというか、懐かしい感覚を覚えました。

会田 うん。瀬戸芸では、ビッグネームのアーティストたちが、制作費もかけてでかい繊維強化プラスチックの作品を作ったりしている。それもアートだし、僕らのように、余った学校の備品で作った等身大の作品もまた、アートなんです。

モデルは13~14歳が◎“お相手”するなら22歳以上

辛酸 ところで、前々から思っていたんですが、会田さんの周りには、昔から美女、美少女が多いですよね。何か引き寄せる力があるんでしょうか?

会田 え、自分のことも入れてます? なめ子さんも、僕の周りにいる女性じゃないの(笑)。

辛酸 いえいえ、とんでもないです。会田さんがモチーフに取り上げるのは、いわゆるローティーンの美少女が多いですよね。女性は18歳を超えると駄目ということなんですか?

会田 いや、僕がお相手するなら18歳でも若いぐらい。22歳以上じゃないと。

辛酸 お相手……。

会田 会話の相手ですよ、会話(笑)。僕が女性に対して13歳だ14歳だと言うのは、単にビジュアルの素材としてですよ。ただ、その少女アイドル的な絵っていうのも、世代的な必然なんですよ。最近、『あまちゃん』(NHK)を見てそう思いました。

辛酸 ご覧になっているんですね。

会田 あれもアイドルを観て育った、宮藤官九郎の作品でしょ? 僕も彼と同じく、物心がついた時にはキャンディーズやピンクレディーがいて、おニャン子クラブ、キョンキョンがテレビの中にいた。そんな時代に成長してきたから、表現も自然にこうなったのかな、と。

辛酸 私生活での好みの女性が気になります。

会田 私生活では、整った顔立ちよりも、ちょっと変化球で味わい濃いめな子が好きなんですよ。アイドルだと、山口百恵や松田聖子のような女王タイプというよりは、大場久美子や西村知美あたりが好きだったかな。でも、僕の作品って、B級、C級のアイドルみたいな子ばっかりでしょう? 静止画の美術では、女の子の個性やキャラが伝えられなくて。それが、今後の課題かなと思ってます。

辛酸 今後は個性的な女性の絵が増えていくかも、と。では、愛子さまなどを描かれるのはいかがですか? 古風ですが、濃さがあるというか。

会田 愛子さま……は、ご遠慮させていただきましょうか。やっぱり『あまちゃん』ですよ。能年玲奈さん、かわいいよね。チューしたいな~(うっとり)。

辛酸 あ、本日はお疲れ様でした。ありがとうございました。

(構成/佐々木正孝)

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会田 誠(あいだ・まこと)
1965年、新潟県生まれ。美術家。美少女、エログロ、ロリータ、戦争などをテーマとした、センセーショナルな作品で知られる。代表作は『あぜ道』『切腹女子高生』『紐育空爆之図(戦争画RETURNS)』など。「ここ数年、海外コレクターにも買ってもらえるようになってきたおかげで、僕の作品は不当に値段が上がっている(笑)」と言うが、ミヅマアートギャラリーでの個展を中心に、国内外でその注目度は高まっている。

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辛酸なめ子(しんさん・なめこ)
1974年、東京都生まれ埼玉県育ち。現在は、マンガ家、エッセイストとしての活動が目立っているが、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻を卒業し、アート作品の制作も行っていた。過去には会田氏も所属するミヅマアートギャラリーにて、個展「ソウルメイトをさがして…」なども開催している。

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