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第1特集
発禁の問題作から名作のオマージュまで

不安定でいびつな少女像を映す タブーな海外美少女写真集

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【1】『Presumed Innocence:Photographic Perspectives of Children』

 純粋無垢なだけが美少女ではない。成長期の少女はみな不安定な肉体と精神に怯えながら、グロテスクな欲求を内に抱えているのだ。

 そんな女子の奥底に迫り、美へと昇華させた海外写真集を写真評論家の富田秋子が紹介する。

 まず被写体としての美少女を考える前提として、海外作家の写真を概観するには、少女写真の歴史を追う展示会作品録『Pre-sumed Innocence』【1】がいいですね。もともと"少女写真"というカテゴリーがあったわけではなく、少女はドキュメンタリーのテーマやポートレイトの一モチーフとして撮られていました。それがやがて、80年代頃から写真表現の主要なテーマになったことが、過去に発表されたさまざまな視点の作品が並べられることで理解できます。

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【2】『At Twelve』

 アメリカの女性写真家サリー・マンが88年に発表した『At Twelve』【2】は、少女が女になり始める微妙な年頃を撮ったエポック・メイキングな写真集。変化していく自分の姿を見る異性や大人の目に対し、嫌悪感もあれば利用するあざとさもある、不安定な身体と精神を抱えた少女を写しています。彼女はこの後、真っ裸で遊ぶ自分の息子と娘たちを撮った『Immediate Family』を刊行しましたが、出版差し止めの裁判が起きました。アメリカは日本以上に児童ポルノへの規制が厳しい国ですが、作品の高い芸術性が評価される一方で、一般的にはスキャンダラスに取り上げられたことで有名になった写真家のひとりでもあります。


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【3】『The Last Day of Summer』

 同じくアメリカの男性写真家ジョック・スタージェスの『The Last Day of Summer』【3】も同様の問題が取り沙汰されました。ナチュラリストと呼ばれる人たちが裸で生活するビーチを訪れ、その家族を撮った作品です。あるがままの姿で生きる思想を持ったナチュラリストの写真はあくまで自然美でエロティシズムではないというのが彼の主張でしたが、90年にFBIが児童ポルノ禁止法違反の容疑で10万点以上のネガを押収したそうです。しかし本作を児童ポルノ扱いにしたら表現の自由やある意味人間本来の姿を否定することになるため、保守派の攻撃に対する抗議活動も起こりました。


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【4】『Portraits』

 それから時を経て、04年にオランダの女性写真家ヘレン・ファーン・ミーネは、『Portraits』【4】でサリー・マンと同様に成長過程の少女のポートレイトを発表。ただ、女の子は歯の矯正をしていたり、成長過程の体形だったりと、いわば歪な姿で写されている。また鳥籠に頭を突っ込むといったアンニュイな演出も施され、あの年頃特有のままならない心境を見事に表現しています。いわゆる美少女の定式から逸脱した姿でも、彼女たちは美しいのだと主張したかったのかもしれませんね。


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【5】『The New Life』

『The New Life』【5】は、ある程度の経験は済ませているかもしれない大人になる寸前の少女が被写体。これを撮ったリーズ・サルファティはドキュメンタリー写真家なので、彼女たちの個性をよく理解した上で撮影、つまりドキュメントしていたはずですが、少女が少し開いたドアの前に立つなど、なんだろうと思わせる演出も加え、少女である最後の状態を強調しています。


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【6】『Can You Find Happiness』

『Can You Find Happiness』【6】を出したベッティナ・ランスは少女を写すポイントがまた違い、攻撃的なエロティシズムを撮るのに長けています。日本人で言えば荒木経惟に通ずる感性の持ち主ではないでしょうか。ここで登場する女の子たちは、成熟した女性にも負けないエロスを放っています。


無垢な少女像とはかけ離れた狂暴性

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【7】『Little Red Riding Hood』

 ここからは、完全に演出写真と呼ばれる作品で、少女をモチーフに虚構を作り上げています。まず、サラ・ムーンの『Little Red Riding Hood』【7】は、『赤ずきん』がモチーフですが、物語をそのまま写真に置き換えず、粒子を荒らしたような幻想的で詩的な写真に仕上げています。幼い頃は男の子も女の子も"子ども"とカテゴライズされますが、女の子は自我が芽生えた段階で女であるという自覚があり、純真で無垢な幼女のイメージだけには収まらない強さやしたたかさを持ち合わせているものです。『赤ずきん』の主人公にもあるそんな一面を、この写真集は引き出しているのです。


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【8】『Story』

 またアンナ・ギャスケルの『Story』【8】は、『不思議の国のアリス』を独自解釈し、衣装やシチュエーションを作り込んでいますが、無邪気なアリス像とはかけ離れ、グロテスクな狂暴性を備えた女の子が登場し、歯をむき出しにしたカットも観られます。男性には怖く映るかもしれませんが、不安定な少女期を過ごした女性であれば、そんな部分さえ愛おしく見えるという演出なのです。


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【9】『LORETTA LUX』

『LORETTA LUX』【9】は少女のみならず男の子も登場しますが、これに至っては完全に合成写真で質感や色、バランスに違和感があり、中世のイコン画を彷彿とさせます。また作者のロレッタ・ラックスは旧東ドイツ出身で、共産圏で抑圧された幼少期を過ごしたせいで作り物じみた子ども像を描いたとも推測されていますが、この演出でむしろ子どもの純真な美しさが強調されていると受け取る声もありますね。

 変わりゆく身体や精神に対して少女が抱く不安や嫌悪感。そんな側面に光を当てた写真を女性が見て共感し、美しいと思うのは想像できます。一方で男性はこれらの写真集を通じ、世に流布する一元的な美少女像を現実の女の子に押し付ければ、痛い目に遭うとわかるのではないでしょうか(笑)。(談)

富田秋子(とみた・あきこ)
フリーランス・エディター&ライター。「スタジオボイス」(INFASパブリケーションズ)元写真担当編集者。現在、各種媒体でページ制作等を行う。

<以下、作品詳細>

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【1】『Presumed Innocence:Photographic Perspectives of Children』
2008年/DeCordova Museum
アメリカで開催された、子どもを写真で撮る行為がどのようになされてきたかを検証する展覧会のカタログ。アンセル・アダムスやダイアン・アーバスといったドキュメンタリー写真の大巨匠の作品からアート色の強い写真まで収録され、少女写真の変遷を体感できる。


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【2】『At Twelve』
Sally Mann/1988年/Aperture
ティーンエイジャーになる直前の少女たちのポートレイト集。副題を「Portraits of Young Women」とし、「Girls」としなかった点がミソで、12歳の肉体と精神のアンバランスな関係を描き出したサリー・マンの大傑作は、ロリータ趣味を超越した美しさを放つ。


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【3】『The Last Day of Summer』
Jock Sturges/1991年/Aperture
北カリフォルニアや南仏のビーチで「ありのまま」の姿で生活するコミューンにジョック・スタージェスはコミットし、美少女のヌードをモノクロで撮影。みずみずしく透明感のある彼女たちの裸体を目にすれば、児童ポルノと断罪するのがいかに的外れか理解できる。


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【4】『Portraits』
Hellen Van Meene/2004年/Aperture
一般的な美少女像の定式にはおよそ当てはまらない、成長過程の「イビツ」な少女のポートレイト群で、歯を矯正していたり、半端な体形だったりする姿が写されている。可愛い子は無条件にチヤホヤされるけど、不安定な年頃のリアルな少女像はこんなものなのだろう。


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【5】『The New Life』
Lise Sarfati/2005年/Twin Palms
マグナムに所属し、自由化以降のロシアを撮っていた社会派のドキュメンタリー写真家が、アメリカ各地のティーンエイジャーを撮った作品集。ドキュメント的な要素もありながら、少女が大人になって何者かに決まりきってしまう直前の状態を演出交じりで表現。


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【6】『Can You Find Happiness』
Bettina Rheims/2008年/Schirmer/Mosel
ストリッパーや大道芸人など社会の周縁にいる人々の過激な写真で知られるベッティナ・ランスは、本書で少女の攻撃的なエロティシズムを抽出。スーパー・モデルのケイト・モスが有名になる前にヌード写真を撮ったその作家は、女の子の魅力を発見するのが巧い。


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【7】『Little Red Riding Hood』
Sarah Moon/1983年/Creative Editions
ファッション写真家のサラ・ムーンが、『赤ずきん』の物語をモチーフにした演出写真。粒子を荒らしたような幻想的なプリントによって、童話のダークな側面が引き出され、純真なだけではない、ずる賢くエロティックでさえある赤ずきんちゃん像が浮上している。


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【8】『Story』
Anna Gaskell/2001年/powerHouse Books
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を独自解釈し、アンナ・ギャスケルが演出した少女像。モデルとなる女の子に衣装を着せ、設定したシチュエーションを演じさせることで、アリスの奥底に潜むグロテスクな部分や狂暴性の上に成立する美を炙り出した。


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【9】『LORETTA LUX』
LORETTA LUX/2005年/青幻舎
旧東ドイツで幼少時代を過ごしたロレッタ・ラックスは、スタジオで撮影した子どものポートレイトと、風景画や風景写真を合成。生い立ちが作風に影響したかどうかは推測の域を出ないが、その奇妙な質感/色/バランスのイメージは、中世の肖像画を彷彿とさせる。


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