【DADA】「お母さんはずっと泣いてた」見えなかった愛を身体に彫った福岡発ラッパーの快進撃

──昨年、あるラップ・ソングがTikTokで人気を集めた。ただ、リリックは「弟2人にミルクあげた/小さい身体でママ抱きしめた」とシリアス。そんな曲を歌う男の企みとは──。

(写真/草野庸子)

「小学校3年生のとき、何かがあったのか、突然お父さんが消えたんです。お母さんはずっと泣いてました。お金がなくて生活できないって」

昨年、「High School Dropout」がバイラルヒットし、今もっとも注目を集めるラッパーとなったDADA。「愛見えないから身体に描いた」というパンチラインにある通り、彼の胸には「愛」という文字のタトゥーが5つ並んで彫られている。「何をやってもカッコよくて、とにかく大好きだった」という“本職”の父に、ずっと憧れていた。

出身は、近年、Deep LeafやWAVEMENTといったヒップホップ・クルーが注目を浴び盛り上がりを見せている街、福岡。中でも、彼は福岡市早良区にある野芥(のけ)というエリアに住んでいる。クルー名に“NokeyBoyz”(のーきー・ぼーいず)と付けるだけあって、地元の話になると熱が入る。

「野芥、大好きなんすよ。別に普通の街っすけど。でも、住んでる団地の隣が精神病院で、人はよく死ぬかも。自分の家の前から人が飛び降りて死んだこともあった。周りは両親いない人ばかりで。自分はお母さんいるだけマシだなって思ってました」

お金がなくて生活できない──と泣き続ける母親に対し、だったら自分が稼ごうと決めて高校を辞め、本格的に音楽に取り組んだ。もともとラップを始めたのは中学3年の頃で、NY出身の気鋭ラッパーだったエイサップ・ロッキーに出会い、衝撃を受けたのがきっかけだという。見よう見まねでラップを繰り返し、小学校低学年だった弟とどこに行ってもラップをしていた。2018年、DADAより先に弟は“太郎忍者”のMCネームで「Pussy」をドロップ。バズを起こし、小学生ラッパーとして一躍注目を浴びることになる。

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