都心だけが東京ではない!――未知の可能性を秘めた“奥東京”

――21世紀型盆踊り・マツリの現在をあらゆる角度から紐解く!

大石氏が上梓した『奥東京人に会いに行く』(晶文社)。東京の都心部ではない地域に焦点を定め、これまで語られてくることのなかった、知られざるディープな“奥東京”体験記をまとめた1冊。

 手前味噌ながら、今回は先日上梓した拙著『奥東京人に会いに行く』に関する話から始めたい。同書では東京の端っこを「奥東京」と名付け、都心~郊外のさらに奥に広がる世界の中に、今まで語られてこなかったディープ東京のライフスタイルを見出そうとした。新島や青ヶ島など島嶼部、山梨との県境付近に広がる山村、神奈川とのボーダーラインにあたる羽田など旧漁師町、江戸川や荒川の流域を訪ね歩いた結果、企画を立ち上げて世に出るまで、約3年の期間を費やすことになった。自分としては東京オリンピックを目前に控え、都心ばかりにスポットライトが当たる今こそ、都心に対する辺境の地ともいえる「奥東京」を掘り下げた本を出したいという思いがあった。言うまでもなく東京は都心ばかりではないし、その周りには郊外のベッドタウンが広がり、さらにその外側には東京のステレオタイプとは異なる豊かな自然が広がっている。そこに息づく東京ディープサイドの暮らしを描くことで、中心に対する周縁、都心に対する奥東京の逆襲を仕掛けたいというような考えもあった。

 この連載に重ねて言えば、「奥東京」はマツリ・フューチャリズム的可能性に満ち溢れた場所でもある。東京の周縁地域には各地域固有の盆踊りや祭り、民俗芸能が息づいているが、中には広く知られていないものもある。東京という土地の文化は掘り尽くされているような気になりがちだが、まったくそんなことはないのだ。

 例えば、青ヶ島という伊豆諸島最南端の孤島に伝わる「還住太鼓」。これはひとつの太鼓を両面から2人で叩くというもの。ただし、2人で延々叩くのではなく、次々に打ち手が替わっていくというのが基本スタイルだ。面白いのは、還住太鼓においては、太鼓のうまい・ヘタはあまり重要ではないということ。創作和太鼓のように技を見せるのではなく、叩くことで打ち手同士のコミュニケーションを図り、場を盛り上げるためのものという側面があるのだろう。僕も還住太鼓の輪に加わったことがあるが、これが実に楽しい。同じスタイルは八丈島でもやっているが、こうした太鼓の文化は、まさに世界に誇れるものだとも思う。

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2024.5.15 UP DATE

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