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高山真が読む今月のサイゾー/オトコとオンナの裏の裏【3】

和田アキ子、ももクロ、三代目JSB…ダサいからこその『紅白』、その悲喜こもごも

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――女性向けメディアを中心に活躍するエッセイスト・高山真が、サイゾーの記事を斬る。男とは、女とは、そしてメディアとは? 超刺激的カルチャー論。

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サイゾー2015年12月号

  紅白歌合戦の出場者が発表されました。発表の少し前あたりから、サイゾーを含めさまざまなメディアでも「誰が紅白に出るのか」という話題が取り上げられました。まあ、日本国民のほとんどが手に汗握ってその発表を受け止める…という時代はとうの昔に過ぎ去りましたが、それでも発表当日は、出場する人、落選した人、それぞれに関する悲喜こもごもの報道がなされました。

 視聴者側からもっとも「?」を突きつけられた出場者といえば、和田アキ子ということになるでしょうか。かく言うあたくしも、もう何年も「和田アキ子を『紅白』で見るのはつらい」という状態が続いています。

和田アキ子の当落が話題になる最大の理由は、たぶん「もう何年もヒット曲がない」なのでしょう。その意見にうなずく部分は確かにあるものの、他の演歌歌手の大部分も同じ理由で「?」マークを出されるはずです。あたくしが「和田アキ子を見るのがつらい」と思っている最大の理由は、「ここまで下手になってしまった歌手は他にいないから」ということに尽きます。

 初めて和田アキ子の歌に悲しみを覚えたのは、調べてみたら2003年のことでした。真っ白な長ラン&ボンタン(死語)にしか見えないロングジャケット&ワイドパンツに身を包んだアッコが「古い日記」を歌ったのですが、リズムについていけないとか、音程がめちゃくちゃあやしいとか、そういった「?」をはるかに超えて「…………」という溜息を誘ったのは、「それはそれでよかったの」の部分の、「それはそれで」と「よかったの」の間に、ガッツリとブレスを入れていたことでした。それを入れたがために「よかったの」の歌い出しのタイミングまでもが台無しになるほどの、大きなブレス。昔ならばやすやすと一息でつなげ、なんならその後に続く「あの頃は」までをもノーブレスで歌えていたはずのアッコの、目を覆わんばかりの劣化。「ああ、もうこの人は単に『大きな声が出るだけ』の歌手になってしまった」と思ったものです。

毀誉褒貶はあるものの、「あの鐘を鳴らすのはあなた」のような壮大な曲から「コーラス・ガール」のようなしみじみした味わいを醸す曲までを歌えていたからこそ、評価もされてきたのではなかったのか。それを自分から捨ててしまったことに気づいてさえいないのはどういうことか。アッコがアップテンポの歌を歌い終わった後によくするドヤ顔を見ながら、怒りに近い残念感を覚えた、と言いますか。

和田アキ子の紅白出場がいったん途切れたのは、1978年と1979年の間だったそうです。78年に歌ったのが、『コーラス・ガール』。緊張のあまり歌い出しがボロボロになってしまったアッコの姿を記憶しています(とは言え、78年当時の和田アキ子の名誉のために言うと、その後のパフォーマンスはよかったのですが)。翌年に落選となったのは、その頃にはヒット曲がなくなってしまっていたこともあるでしょうが、あのパフォーマンスにも幾ばくかの理由があったのでは、とあたくしは推測しているのです。手に書いた歌詞、いわゆるアンチョコを見ながら歌った島倉千代子(故人ですが、好きな歌手のひとりなので敬称略)が翌年に容赦なく落選になったように。

「歌手として人前に出るレベルではない」ということを、本人が自覚できなければそれを進言できる古株のスタッフはいないものなのでしょうか。芸能人とは、もともと「恥ずかしげもないほど自分に酔う」ことができなくては務まらない、ある意味で異常な職業ですから、自分自身のありよう、自分自身の能力を客観的に見られない人がいるのも自然なことです。だからこそ、身近にいる誰かがその首に鈴をつける役を負わなくてはいけない。すでに「裸の王様」呼ばわりされて長い時間が経っているアッコではありますが、それをトーク仕事で見せるならともかく、歌の仕事では見せてほしくない。昔、アッコの歌に感動した身として痛切に思います。

 さて、そんな痛々しい思いばかりで『紅白』を見るのも悲しいものです。当然あたくしも自分なりにすでに観覧ポイントを定めています。もはや「演歌歌手」ではなくGACKTと同じカテゴリーに入れたうえで鑑賞している森進一の、「切っても血が出なさそう」と言うか、すでに生身の人間というよりは妙にリアルなフィギュアのようになっている肌の質感の、貴重な定点観測の場にしているとか。天童よしみの小さな瞳が、歌い終わりに必ずカッと見開いて、「どや、ウチの歌、聴いたか!? ウチが事実上のトリやで!」と言わんばかりの勝利感に酔いしれる様子とか。小林幸子は今年、ただスカート部分がデカいだけの水森かおりの衣装に一泡吹かせようともくろんでいるはずとか。

なんか演歌がらみのネタばかりになってしまいましたが、紅白は本来、なんと言うか、ダサいものです。その意味で、演歌歌手との相性のほうがはるかにいい。力が入りすぎているがゆえにトンチンカンな方向に暴走するのは、だいたいが演歌歌手なのですから。『ミュージックステーション』出演時と区別がつかないような衣装で出てくるのがカッコいいと思っている(ように見える)ポップス歌手はどうしても分が悪いわけです。だからと言うか、ももクロが落選したのは残念でなりません。「力が入りすぎている」ということをエンターテインメントに昇華できる、数少ないポップス畑のグループだったのに。

 あとは、若い歌手たちの「やらされてる感」満載の応援パフォーマンスにも注目せざるを得ません。かつて『紅白』では、アイドル全盛期の郷ひろみだろうが西城秀樹だろうが、情け容赦なくランニング(タンクトップではなく、ランニングとしか呼べないデザインです)とジャージに着替えさせられて、申し訳程度に敷いたマットの上で体操をさせられたもの。あるいは、全盛期の山口百恵だろうとレオタードに網タイツ姿にさせられラインダンスを躍らされたり、デビューしたばかりの松田聖子もフレンチカンカンで下着を見せる踊りをさせられていたものです。ダサいでしょ? でも、それこそが紅白の持ち味なのです。

現在では、NHK側と事務所側の力学が変わってしまったのか、そんな公開羞恥プレイのようなことは行われていません。が、その代わりに、演歌歌手が歌う後ろで、自分たちオンリーの仕事では絶対にしないようなカッコに身を包み、踊ったり楽器弾いたりするという新しいアミューズメントが加わっています。今年、三代目J Soul Brothersにはぜひ、ハッピに超ミニ丈の半股引姿で太鼓とか叩いてほしい。「セクシー」という意味ではなく、「いくら黒メインの洋服でカッコつけてても、実はいちばん血が騒ぐのは地元のお祭り」的な、北関東マイルドヤンキーのセンスと絶対に合うし、面白いから(褒めてます)。それが鳥羽一郎の『兄弟船』だったら完璧なのですが、鳥羽一郎は今回、不出場…。やっぱりここは天童よしみあたりにお祭りソングをチョイスしてもらい、三代目のために一肌脱いでいただかなくてはね…。

高山真(たかやままこと)
エッセイスト。著書に『愛は毒か 毒が愛か』(講談社)など。来年初旬に新刊発売予定。


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