サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 戸田奈津子が語る字幕界

――映画字幕翻訳の第一人者として、数多くの洋画に携わり、ハリウッドセレブとの交流も深い戸田奈津子。フランシス・フォード・コッポラ監督の最新作『メガロポリス』の字幕翻訳も担当する氏に、コッポラとの親交や字幕翻訳者の置かれている状況などを語ってもらった。

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フランシス・フォード・コッポラ最新作『メガロポリス』公開記念(写真/淵上裕太)

数々の傑作を生み出してきたフランシス・フォード・コッポラ監督が、最新作『メガロポリス』の着想を得たのは80年代初頭のことだった。

──『メガロポリス』は01年に台本の読み合わせを実施したものの、9・11アメリカ同時多発テロの影響でプロジェクトは中断。その後もコッポラは制作の可能性を探り続けたが、07年に断念することになった。それでもあきらめずに私財を投じて完成させた、まさに執念の作品ですが、戸田さんはいつ頃から本作の構想を聞いていたのでしょうか?

戸田 半世紀近く前に『地獄の黙示録』(79年)に関わった頃から、フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』(27年)のように未来都市を描いた作品で、『メガロポリス』というタイトルも決まっているとコッポラから聞いていました。長年温めてきた構想で、これに懸けているのも知っていました。過去の作品では映画会社が製作に関わり、自分のやりたいように作らせてくれなかった。だから、今度こそはと自身のワイン畑などを売って資金を作り、自分のやりたいように作ったのです。

──初めて『メガロポリス』をご覧になったときの印象はいかがでしたか?

戸田 『地獄の黙示録』がそうであったように、説明の難しい難解な内容で、コッポラらしい一筋縄ではいかない作品だなと思いました。映画誕生から130年目を迎えた2025年、これまで膨大な数の映画が作られてきましたが、まだ誰も観たことのない映画を作るというのは本当にとんでもないことなのです。彼の映画の字幕は何本も手がけてきましたが、ぜひ今回も担当したいと思いました。

──難解なストーリーを字幕にするのは難しかったのではないでしょうか。

戸田 古代ローマと現代アメリカを重ね合わせるという着想自体が難解ですが、多くの人たちはローマ帝国の興隆と衰退を知らないですよね。でも本作に限らず、知らない題材を扱っている映画でも、映画自体の意味はわかるじゃないですか。それに、話している内容は難しいですが、セリフそのものはそれほど難しい英語ではありません。セリフで映画の難解さを説明しようという気持ちはコッポラにもないし、私の仕事はセリフをそのまま日本語にすること。わからない部分であっても監督の意図のままに訳しているんです。そういう意味では翻訳に苦労したということはありません。

──コッポラ監督とは長いお付き合いですが、出会った頃と印象の変化はありますか?

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