サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 陰謀論を語る異色対談

――反ワクチン・マスク、人工地震、ケムトレイル……。
SNSを見ると、ありとあらゆる陰謀論が「もうひとつの真実」として拡散されている。
かつてこのような怪しげな言説は新宗教団体が主張していたが、それらが衰退した結果、
政治家や政党が代わってめちゃくちゃなことを言っている。そんな、狂気に包まれた日本の現状を、
元・オウム真理教幹部の上祐史浩と元・幸福の科学の宏洋が語り合う。

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(写真/成田英敏)

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大以降、SNSを中心に陰謀論がはびこるようになった。この国ではオカルトや新宗教ブームは存在していたが、そうした時代と今では何が違うのだろうか?

かつて日本をにぎわせた教団の中枢にいた元・オウム真理教幹部の上祐史浩と、元・幸福の科学の宏洋が、陰謀論にまみれた現代について語る。

――近年、世界各地で陰謀論が広がりを見せています。その主張の多くは、ディープ・ステート(DS)といった〝闇の組織〟が世界を支配しているとする内容で、カルト的な要素を含んでいます。こうした現象については「もはや宗教に近い」との指摘も少なくありません。

上祐史浩(以下、上祐) 「カルト」の定義ですが、ここでは「自分たちが絶対で、ほかは悪魔。そして、その悪魔と戦わなければいけない世界観」としましょう。そういったカルトの枠組みとしては、宗教カルト、政治カルト、ブラック企業のような企業・経済カルト、さらには国全体が陰謀論に染まった、かつてのナチス・ドイツや大日本帝国のような国家的カルトと分類すると、わかりやすいかもしれません。

――いまや宗教だけでなく、陰謀論を公然と主張する政治家が台頭する時代となっています。

上祐 アメリカのドナルド・トランプ大統領が、そのフロントランナーといえるでしょう。具体名は差し控えますが、日本にもそういった政党がありますよね。30年前はオウム真理教がそのポジションにいました。そこからさらに30年前は連合赤軍のような、過激で暴力的な共産主義を掲げる政治カルトがいて、そのまた30年前になると、天皇を絶対的な存在として崇拝する大日本帝国という国家カルトがあった。このように、宗教、政治、宗教、政治……という流れが30年周期で訪れていると思っています。

――30年前と現代を比べたとき、大きな違いとしてインターネットの存在が挙げられると思います。宗教から政治へと潮目が変わった背景には、ネットの影響があると考えますか?

上祐 そもそもネットと宗教というのは、基本的に相性がよくないのです。宗教はいわば密室。閉鎖的な集団心理の中で、外部の人が信じないような話を信じます。一方、ネットは開放的で客観性があるため、密室の集団心理の中では有効な〝教化〟が通用しないのです。例えば、幸福の科学の大川隆法さんの霊言も、密室の中では現実味があるかもしれませんが、ネットの動画を通すと、どうしてもコミカルに見えてしまいます。

宏洋 それと、ネットの発達によって、内部告発はしやすくなりましたね。例えば、私がネット上で大川隆法総裁に関するさまざまな証拠を出した結果、幸福の科学の神秘性は失われてしまいました。妖怪のように宗教は得体が知れないからこそ怖いのであって、正体がわかれば怖くありません。

――既存の宗教団体は年々信者が減少しているともいわれていますが、この点について、お2人はどのようにお考えでしょうか?

上祐 平成時代の初期にオウム真理教と幸福の科学が出てきましたが、一世を風靡したのは一瞬で、30年の間で2つの教団はバタバタと衰退していきました。伝統宗教も、それと同じようにどんどん衰退しているわけですから、大きな時代の変化によって、「宗教はいらない」という考えになってきたのだと思います。

宏洋 あと、今は宗教と名乗ることのデメリットのほうが大きそうですよね。宗教法人格取得するのはもう現実的ではなく、税金がかからないといううまみもありません。むしろ、宗教を名乗らないほうがイメージもつかないため、運営側も人を集めやすい。そのため、宗教を名乗った大きな団体が出てくることは、今後はまずないと思います。その代わりに、陰謀論をうたう「ミニカルト」のような団体がポコポコと出てきて、それに引っかかる人が増えるのではないでしょうか。そして、これらを一斉に取り締まることは基本的に難しい。イタチごっこというか、モグラ叩きみたいな状態がしばらく続くと思います。

社会に対する不満が陰謀論を増大させる

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かつては一笑に付されていた陰謀論が、いまやポスト・トゥルースとして人々を動かしている。(写真/Damon Coulter/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

――陰謀論もツッコミどころが多く、SNS上ではたびたび批判されています。それでも一定の支持を得ているのはなぜなのでしょうか?

宏洋 現実生活に鬱屈とした不満を抱えていて、そこから逃避したいという人はいつの時代も一定数います。SNSで陰謀論にハマる人たちも、まさにそういうタイプ。「現実とは違う世界があるんだよ」という人たちに追随して、一緒に盛り上がるのが楽しいのです。SNSでめちゃくちゃなことを書いても、賛同してくれる人がいて、インプレッションが稼げて、承認欲求が満たされる……。そうしているうちに「現実世界の自分は本当の自分ではない」という意識が生まれるんです。幸福の科学にも、構造的には似た部分がありました。同教団にハマる人は主婦層が多く、彼女たちは普段、社会や家庭から冷遇されている。ところが、会合に来てお金を払えば、「あなたは信仰心が高い」と評価してもらえるのです。

上祐 宏洋くんが言うように、社会に対する不満というのがひとつのポイント。特に最近は新型コロナウイルス感染症を経て不安もあります。そんな不満を背景に、不安によって合理的な考え方ができず「自分のうだつが上がらないのは、努力が足りないのではなく、悪い奴がいるからだ。自分は正義の戦士として、そいつらと戦っているんだ!」となってしまうのです。陰謀論の心理学的研究について調べたことがありますが、そう思うことによって強烈な妄想的な自己愛が充足されて、気持ちが楽になるのです。そして、エコーチェンバーではないですが、陰謀論を支持する集団の中でお互いを認め合うことによって、居心地が良くなってしまう。自己愛に関係する問題か、心理的な問題。陰謀論にハマってしまう人たちは、その隙を突かれているのではないかと思いますね。

――陰謀論の主張に共感するというよりは、自分の居場所を求めた結果とも捉えられます。オウム真理教の信者にも、そういった人々が多かったのでしょうか?

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