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丸屋九兵衛の「バンギン・ホモ・サピエンス」【21】

【R.Kelly】R&B王者から犯罪者へ

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――人類とは旅する動物である――あの著名人を生み出したファミリーツリーの紆余曲折、ホモ・サピエンスのクレイジージャーニーを追う!

R.ケリー

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(絵/濱口健)

92年以来、スタジオアルバム17作、シングル72枚をリリース。最大ヒットアルバムは『12 Play』で600万枚以上、次点が『R. Kelly』の500万、『R.』と『TP-2.com』が各400万と続く。100万枚超えシングルも9枚あるというすごさ。

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英語版ウィキペディアで〈R. Kelly〉を引くと、こう書いてある。「ロバート・シルヴェスター・ケリーはアメリカの性犯罪者。かつてはシンガー/ソングライター/プロデューサーだった」……もはや、人としての分類が「犯罪者」なのである。アル・カポネやチャールズ・マンソンのように。

しかし、2019年に始まる今回の疑惑再浮上に際して、トレヴァー・ノアは語っていた。「ニュースでR・ケリーを容疑者として紹介するときに、彼の曲をBGMとして流すのはやめたほうがいい。『けしからん!』と思って報道に接していたはずの視聴者が、ついノリノリになってしまうから」と。実際のところ、チャック・ベリーからDMXまで刑務所でのオツトメ経験があるアーティストを挙げ始めたらキリがないが、「活動期間のほとんどが全盛期である」という意味では、R・ケリーは巨大かつ特別な存在なのだ、と。おそらくは、ジェームス・ブラウン以上に。

ケリーは67年1月8日、イリノイ州シカゴ市生まれ。育ちは同市のサウスサイド、由緒ある黒人地域の公営住宅だ。学校教師の母は当初シングル・ペアレントだったが、ケリーが5歳の頃に結婚し、その夫がケリーのステップファーザーとなる。

8歳で聖歌隊に入り、やがてバスケットボールと音楽を愛する少年に育ったケリー。転機が訪れるのは中学進学後だ。そこで出会った音楽教師レナ・マクリンが才能を見抜いて、より広い音楽ジャンルを教え、バスケットボール部をやめることを推奨する。当初は退部に抵抗したものの、勧められて出場したタレントショウで優勝したケリーは自分の才能を確信、学校からドロップアウトして、シカゴの地下鉄駅で歌い始める。

89年に結成したグループ〈MGM〉は勝ち抜きテレビ番組で注目されたものの、インディ・レーベルからのシングル1枚という短命に終わる。91年にジャイヴ・レコーズと契約した彼は、R・ケリー&パブリック・アナウンスメント名義のアルバム『Born into the 90's』で翌92年に本格デビュー。ヒット曲「She's Got That Vibe」は、ニュー・ジャック・スウィング最終期を飾るダンサブル・ナンバーとして記憶されている……が、ケリーがすごかったのは、その翌93年にR&B界のモードを一変させたことだ。前年の踊りまくりはどこへやら、グッとテンポを落としたミッドテンポとスロウジャムで構成されたアルバム『1 2 Play』をリリースし、90年代のサウンドを定義づけることとなる。今でも多くのリスナーが「黄金時代」と見なす90年代のR&Bは、その特色の多くをケリーの才能に負っている。

そこから先はブラック・ミュージックの歴史に記されていることなので、ここで詳しくは書かない。アルバム単位でいうと、95年に『R. Kelly』、98年には2枚組『R.』、00年に『TP-2.com』、02年にジェイ・Zとのデュエット作『The Best of Both Worlds』、03年に『Chocolate Factory』、04年に2枚組でソウルとゴスペルを追求した『Happy People/U Saved Me』とリリースを続け、以上に挙げたものはデュエット作を除きすべてマルチプラチナム(数百万枚)ステータスとなっている。100万枚や50万枚止まりのセールスが増えた05年以降は緩やかな下降線ともいえるが、音楽業界全体が不況に陥った中でも堅調を維持したという見方も可能。そのキャリアの中で、マイケル・ジョーダン主演映画『スペース・ジャム』から「I Believe I Can Fly」を大ヒットさせ、映画『エディ&マーティンの逃走人生』(99年)のサウンドトラックを手がけ、アイズレー・ブラザーズの復活を支え、マイケル・ジャクソンをプロデュースし、チャーリー・ウィルソンに曲を提供──と大活躍してきた。

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