サイゾーpremium  > 連載  > 田澤健一郎の「体育会系LGBTQ」【7】
連載
田澤健一郎の「体育会系LGBTQ」【7】

男子フィギュアスケーターがゲイを隠すために同調した“誤解”

+お気に入りに追加

「あの選手はゲイじゃない?」誤った視線を乗り越えるために

2202_P128_SCAN_008_520.jpg
(写真/佐藤将希)

男子フィギュアに向けられる世間の目の中には、「あの選手はオカマっぽくない?」といった下卑た視線もあるだろう。競技の特性上なのか、確かに男子の演技でも表面上はわかりやすいマッチョな「男らしさ」は薄く、中性的、あるいはフェミニンな印象を受けることがある。

「フィギュアって実際は、強靱なフィジカルと高度な技術がないとトップレベルにはなれません。ただ、それをいかに隠して、当たり前のように華麗に演技できるかがポイントだから、トップ選手になればなるほど、男性的なたくましさが見えにくい。さらに、普段は一般的な男性と何も変わらないのに、いざ演技となると女性的な雰囲気を出せる、出てしまう選手がいるんです。一種の表現力なんでしょうね。そういった表現力の豊かさ、幅の広さも評価の対象だから、誤解する人もいるのでしょう。だから、例えば野球部やラグビー部のストレートの男子選手たちだって、フィギュアをさせてみたら、何人かはそういう雰囲気が出る子がいると思いますよ」

そんな実情をわかってもらうことが、簡単でないことはわかっている。

「そもそもフィギュア界の中でも、そんな視線はありますからね。男子の選手がちょっと女性っぽい演技をすると『あいつ、やっぱりゲイ?』とか、ふざけ気味に言う関係者もいますから。正直に言えば、過去に僕もそういった発言やノリに同調してしまったこともあります。ゲイであることを隠すために合わせちゃったという言い訳もあるのですが、今、思うと本当に恥ずかしい。僕からすれば、フィギュアだってストレートがマジョリティの体育会の世界。ゲイがやりやすいスポーツと思われるかもしれませんが、そんなことはありません」

冬馬はそんな経験を通して、フィギュアの競技内容や種目の幅が今より広がってもいいのでは、と思っている。事実、現状の男子フィギュアにマッチョイズムを前面に押し出すような演技は少ない。ジャンプなど男子ならではのダイナミックさが出ることはあるが、演技全体では「華麗な美」といった言葉が似合いそうなタイプが多くを占める。

「羽生結弦選手の活躍もあり、男子フィギュアも人気はアップしています。でも、競技人口は増えるどころか減っているんです」

もちろん、ほかのスポーツと同じく少子化の影響はあるだろう。また、経済的な理由も考えられる。ただ、それだけではないかもしれない。

「男子フィギュアに対する一部の誤った見方も関係していると思うんですよ。ストレートの男子が『ゲイじゃないか?』なんて視線を受けるのは気の毒だし、そんなイメージを嫌がる子どももいるでしょうから。だから、個人的には非公式でもいいので、フィギュアに男子ならではのフィジカル、力強さ、身体能力にフォーカスを当てた種目や大会、イベントがあったらいいのに、と思います。そしたら『やってみたい』という男子が増えるかもしれない」


Recommended by logly
サイゾープレミアム

2026年11月号

ドーパミン時代の沼化するエンタメ業界

ドーパミン時代の沼化するエンタメ業界
    • 「沼化」するエンタメ業界
    • 膨らみ続けるグラビア市場
    • SNSがつくる「あなたの好み」
    • 映画界ハラスメントの実態
    • ゲーム実況者の高齢化問題
    • PS、ディスク販売廃止の衝撃
    • 私たちは「ドパガキ」なのか
    • AI時代の「生歌」の価値
    • 「ニコ生ホラー」とは何だったのか
    • テクノロジーが広げる学びの未来
    • AI時代のサイバー攻撃
    • リングを彩る美女たち
    • 〈Cosplay beauty〉もちむぎ

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 滝藤賢一、名バイプレイヤーの境地
    • 唯一無二の音楽家・水槽
    • 小八重葵美が得たもの

連載

    • [マルサの女]高橋凛
    • 神保哲生×宮台真司の「TALK ON DEMAND」
    • 萱野稔人と巡る「超・人間学」
    • ドクター苫米地に聞け!
    • 井川意高の天上夜想曲
    • 韮原祐介の匠たちの育成哲学
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • GROOVE SEQUENCE
    • 笹 公人×江森康之の「念力事報」
    • 町山智浩の「映画でわかるアメリカがわかる」
    • 花くまゆうさく『カストリ漫報』
サイゾーパブリシティ