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友清哲のビールの怪人【33】

現役大学生の営むバーがクラフトビールをリリース!

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――すべてのビール党に捧ぐ、読むほどに酩酊する個性豊かな紳士録。

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初めてのブルワー体験は「とにかく楽しかった」と語る代表の栗原章悟さん(左端)。「願わくばビール造りもまた、これから代々受け継がれていけばうれしいですね」と語る。

JR福島駅から徒歩3分ほどの場所に、福島大学の大学生たちが営むバーがある。その名を「Jam」という。2014年の創業から代々、福大生によって経営が受け継がれ、現在の代表である栗原章悟さんで7代目になる。

「初代の方がやはり在学中に、“福大生が代々受け継ぐバーにしたい”というコンセプトで立ち上げた店だと聞いています。スタッフは僕を含めて全部で6人、全員が現役の福大生です。1日2人体制でシフトを組んでお店を回していて、福大生やOB・OGの皆さんはもちろん、周辺のサラリーマンの方も多く来店されます」(栗原さん)

栗原さん自身は、先輩に誘われて客として出入りするようになったのがジョインのきっかけなのだそうで、今年の4月1日付で正式に7代目を譲り受けた。

単なる学生ノリの店であれば、これほど長続きはしなかっただろう。「もちろん未成年の入店はお断りしています」と、学生ながら気の緩まない運営体制を敷く。メニューもフードこそ提供していないが、ビールやウイスキーだけでなく、カクテルもおよそメジャーなものはひと通り作るというから本格的だ。

そんなJamがこの7月、創業7周年を記念してオリジナルのクラフトビールを開発し、話題を呼んでいる。

「発端は、お客さんの中に、県内のブルワリーで働くブルワーさんがいたことでした。『オリジナルのビールを作ってみない?』と声をかけていただき、だったら7月の周年に合わせるのがいいだろうと、すぐに話がまとまりました」

ビールのスタイルについてはメンバー全員で話し合い、周年が夏場であることから、グレープフルーツを用いたさっぱりとしたフルーツエールにしようと決定した。

なお醸造にあたっては、原料の麦芽を粉砕し、グレープフルーツの皮をむき、その後の発酵、瓶詰めまでスタッフ全員がすべての工程に携わったという。ラベルのデザインひとつをとっても自分たちで下絵を描くなど、隅々までこだわりを詰め込んだ。

「学生の立場ではなかなかできない貴重な体験でした。完成したビールをメンバーと一緒に初めて味わった瞬間はもう、本当にたまらなかったですね。とにかく初めて味わうおいしさでしたし、温度変化とともに少しずつ味が変わっていく様子も、エールビールらしくて最高です」

早速これを目当てに来店する客も多いようで、「僕らが言うのもなんですが、めちゃくちゃご好評いただいています」と栗原さんは反響について胸を張る。初めてのオリジナルビール開発は大成功のようだ。

しかし、何もかもが順調かというと、そうではない。経営者である栗原さんの目下の悩みは、やはりコロナ禍だ。

「通常は深夜1時までの営業ですが、県からの要請でたびたび20時までの時短営業を余儀なくされています。お酒を出す店としては、これはやっぱりしんどいですね」

実は今回の取材を行ったのも、福島市内に営業時間短縮要請が出た当日だった。代表就任以降、通常営業と時短営業を交互に繰り返している状態で、どうにも腰が落ち着かない。しかし、それでも店にやって来る客のために、できる限りの感染対策を講じて営業を続けている。

「消毒と換気を徹底し、席数を減らし、混雑時は入店制限を行っているほか、パーテーションも設置しました。また、手洗い用の水道の蛇口も、非接触のセンサータイプに交換済みです」

とりわけパーテーションについては、バーとしての雰囲気を損なう懸念もあり、メンバーと慎重に議論したというが、それでも安全には代えられないとの判断から、導入に踏み切った経緯がある。それも、こんな思いがあるからこそだ。

「7年続いてきた店ですから、自分の代で潰すようなことは絶対にしたくありません。ちゃんと次の代に引き継げるように、自分にできることを精いっぱいやりながら運営していきたいと思っています」

今こうしてさまざまな対策のノウハウを確立しておくことは、きっと次の代の助けにもなるはずだ。

「苦しい状況なのは間違いありませんが、幸いにして、どうにか踏ん張れています。今回のビールが新たな売りになって、より多くの人に飲んでもらえるようになればいいのですが」

栗原さんは現在、福大の人間発達文化学類に籍を置く4年生。卒業後はマスコミ関連の企業に内定しているという。ブルワー体験、そしてなによりもコロナ禍の真っ只中に飲食店を切り盛りした経験は、必ずや社会人生活にも生かされるに違いない。

友清哲(ともきよ・さとし)
旅・酒・洞窟をこよなく愛するフリーライター。主な著書に『日本クラフトビール紀行』(イースト新書Q)、『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)ほか。

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