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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第145回

『アイリッシュマン』大統領に次ぐ裏の権力者はなぜ突然失踪したのか?

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『アイリッシュマン』

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全米トラック運転手組合委員長のジミー・ホッファは、裏社会で絶大な権力を持っていた。そんな彼の片腕は、マフィアのボスに見込まれた敏腕のヒットマンのシーランだった。だが、やがてホッファが失踪し、殺人事件が発生する……。
監督:マーティン・スコセッシ、出演:ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノほか。Netflixにて配信中。

 大統領の次に権力を持つ男――。ジミー・ホッファはそう呼ばれていた。ホッファは全米トラック運転手組合の委員長だった。トラックはアメリカの血液だ。トラックが止まれば農業も工業も商業も止まる。その運転手をストライキさせることができるホッファが、1975年、突然、行方不明になった。その後、現在までなんの手がかりも見つからず、アメリカ史最大の謎になっている。

 そのホッファに何があったのかを描くのが、マーティン・スコセッシ監督の新作『アイリッシュマン』である。スコセッシにとっては『グッドフェローズ』『カジノ』に続く実録マフィア映画三部作になる。

 主人公フランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)は、ホッファ(アル・パチーノ)に初めて会ったとき、こう言われる。

「君は家にペンキを塗ってくれるんだって?」

 家にペンキを塗るというのは、マフィアの隠語で「殺人」を意味するという。血が壁に飛び散るからだ。

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