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お騒がせ男の"最初で最後の懺悔録"──高須基仁 の「全摘」No.87

[最終回]【追悼】高須基仁さん「17年間、連載していただき、ありがとうございました」

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──年齢不詳、職業不明、痛風持ち……老獪タカスが、自らの五臓六腑をすする気合で過激に告白&提言

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サイゾーで撮影した、高須さんお気に入りの写真の中の1枚。合掌。

 本誌で2002年5月号から、17年にわたり連載陣としてコラムを執筆してきてくれた高須基仁さんが、9月17日に亡くなった。71歳。肺がんが脳に転移し、体が衰弱している中、誤嚥性肺炎に罹ったことが直接的な死因となったそうだ。

 先月号の当連載、原稿の最後は「ほな、さいなら!!」で締められていた。自身の死期を悟っていたのか。でも、その直前の言葉は「報いを求めずにこれからも書き続ける!」だから、奇跡を信じて生き続ける気は満々だったのか。最後まで本音がわからない人だった。

 高須さんといえば、90年代、藤田朋子や島田陽子、天地真理など、そうそうたる女優たちのヘアヌード写真集を手がけた出版プロデューサーとして、業界内外にその名を轟かせていた。一方で起用した女優たちと衝突することもしばしばで、高須さんと二度、三度と仕事を繰り返す人はあまりいなかったと思う。事前に提示した撮影内容や報酬と実際のそれに乖離があったりしたのではないだろうか。そういうところは、ルーズな人だった。

 私が最初に会った2000年頃、高須さんの興味の対象は野村沙知代だった。世間から総バッシングを受けているサッチーの写真集をプロデュース。その後、「返品率が9割を超えた」と、大コケしたことを笑いのネタにしていた。本気で売れると思っていたとは思えないが、目の前に素材となる女性がいれば、それを口説かない手はないと考えていたのではないか。

 高須さんは、脱がせたいと思った女性をしゃぶしゃぶ屋に誘い、かばんに忍ばせていた現ナマを積み上げ、「あなたは裸で勝負すべき女性だ」と一気に口説きにかかったという。どんな女性も褒め言葉とカネには弱い。気がつけば、女優はカメラの前でヘアを晒している。高須さんのことを人はいつしか「毛の商人」と呼ぶようになった……。

 こんな伝説が囁かれるほど、出版界の寵児だった高須さん。ヘアヌード写真集が出来上がる舞台裏で、どんな人間模様が繰り広げられるのか。そんなことを書いてもらえたら面白いと思い、2002年に連載を依頼した。スタート時のタイトルは「こんな女としゃぶしゃぶ喰いたい!」。

 高須さんが次に狙うオンナについて、この連載でいち早く書いてもらおうという期待があったが、しかしその頃には、ヘアヌード・ブームは過ぎ去っていた。連載開始以降、高須さんが手がけた大物の写真集といえば、ボブ・サップくらいか(これも、コケたらしい)。

 ただ、実際に写真集をつくらなくても、風呂敷を広げ続けてくれた。「次は中森明菜のヌード写真集を出す」だの「清原和博を高校野球の監督にする」など、彼が口にした「ファンタジー」は枚挙にいとまがない。地元の自治体の首長選挙に出ることになったと熱く語る時期もあった。

「またまた、無理なことを」と、こちらは話半分で聞くようになっていくが、高須さんの中では、その時はあくまで事実であり、至って真剣だったのかもしれない。明菜も清原も表舞台では活躍しにくい境遇に置かれていた時期で、高須さんの自己顕示欲や山っ気とは別に、弱者たちに手を差し伸べたいという気持ちは間違いなくあったはずだ。右傾化し、社会的弱者の切り捨てに走る権力への危機感も常に持っていた。政治への参加意識もあったのだろう。連載の中でも、そうしたメッセージは見られた。

 ここ10年くらいは、「最近は何をして食ってるんですか?」と聞くことが増えた。売れるような本を出していなかったからだ。そんな問いを、高須さんは「野暮なことは聞くな」とはぐらかしていた。

「この人の言っていることは、どこまで本気で本当なのか?」「この人は、どうやって生活しているのか?」。20年近い付き合いでも、謎多き紳士であり続けた高須さん。毎月欠かさず、連載の打ち合わせをしてきたが、今年5月から、突如、私と会おうとしなくなった。「今、軽井沢にこもって小説を執筆している。純文学だ」とか「ヤクザに追われてるから身を隠している」とか、この時は明らかに嘘だとわかる言い訳で面会を避けていた。あとから知ることになるが、がん治療のために入院していたのだ。

 高須さんから末期がんであることを告白され、病院を見舞ったのは7月末。「死ぬのは怖くないですか?」と子どものような私の質問に「好きなことをやりきった。不思議なくらい平穏な気持ちだ」と高須さん。

 その言葉が虚栄などではなく、本音だったと信じたい。

(文=高須基仁 担当編集・揖斐 憲)

たかす・もとじ
90年代以降、出版プロデューサーとして、ヘアヌード写真集ブームを仕掛けたり、スキャンダルの渦中の人物に告白本を書かせたりするなど、ギョーカイの裏で暗躍。元学生闘士で、現在は多数の媒体で言論活動を展開している。

【高須さんへの懺悔】
生前、「雑誌が休刊するまでは、連載は続けますよ」と本人と約束したが、今回で最終回にさせてもらいます。高須さんは「それでも続けろ」と無茶を言いそうですが、許してください。17年間、ありがとうございました。

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