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小原真史の「写真時評」

地上最大のショー(上)

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「バーナム・アンド・ベイリーの道化師たち」(1902年頃/著者蔵)

 昨年、アメリカでヒットしたミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』(監督:マイケル・グレイシー)が日本でも公開され、話題となった。本作は19世紀に活躍したショー・ビジネスのパイオニア、フィニアス・テイラー・バーナムをヒュー・ジャックマンが演じた、実話を元にした伝記映画だ。バーナムは、昨年その歴史に幕を閉じた「リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス」の前身となったサーカス(画像参照)の設立者で、「サーカス王」としても知られている。映画は主人公がマイノリティの仲間や家族と共に苦難を乗り越えながら成功への階段を上っていくというヒューマンドラマとなっていたのだが、興行の成功のためには手段を選ばなかったバーナムのペテン師的ないかがわしさが欠けており、いささか口当たりがよすぎた感がある。なぜなら現実のバーナムは、ヒュー・ジャックマンが演じたようなスマートなジェントルマンというよりも、その外見も含めて「たぬき親父」という言葉がしっくりくるような人物だったからだ。

 1810年にコネチカット州で生まれたバーナムは、さまざまな職業を経験した後、20代半ばで興行師としてのキャリアをスタートさせた。35年、ジョイス・ヘスという黒人女性をジョージ・ワシントンの元育児婦としてニューヨークの見世物小屋に展示すると、パートナーの興行師と一緒に数カ月間アメリカ北東部を回った。161歳で体重が46ポンド(約21キログラム)ほどしかないと宣伝されたこのミステリアスな老女に、各地のタブロイド紙や観客たちは惹きつけられ、中には握手を求めたり、時に脈をとったりする観客もいたようだ。盲目で、歯が抜け落ち、爪がぐにゃりと伸びたヘスは、エジプトのミイラのように見えたという。バーナムは、チケットの売り上げが減った際、ボストンの新聞に彼女が古い皮と鯨の骨で作られた偽物だと主張する匿名の手紙を書き、今でいう炎上マーケティングを試みている。そればかりか、36年にヘスが死亡すると、検視解剖をも有料の公開イベントにして多くの観客を集め、彼女の年齢や出自について新聞紙上で議論を巻き起こすなど、あの手この手で話題をさらった。その商魂と大衆を魅了する手腕たるや当時の興行師たちの中でも群を抜いていたといえる。

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